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ものは魔法で作ります

――失礼します、本日面接に来ました……


 私は少し前に色々あって会社がなくなった。いや、事業撤退による整理解雇だ。その為、前職のノウハウを活かせる製造業をメインにして求人を探している。


 ここは魔法製造場という変な名前の工場だ。この世界に魔法なんてないし魔族もいない。そんなものはアニメやマンガだけの話だ。そりゃあったら楽しそうだけどさ。

 


 面接は進み、自己PRの時間だ。


「はい、私は前職で……」


 一通りの自己PRをした。面接官が魔法製造所のことを話しだした。


「我が社の特色として物は魔法で作り検品作業を人の手でします」

「魔法ですか!?」


 私は魔法という言葉に反応してしまった。


 この世界に存在しないもので作ると聞いて興奮しない男がいたら教えてほしいものだ。


「すみません、取り乱しました」

「ふむ、あなたの思うように魔法という言葉への反応はそれが正しいです」


 面接官は手を前に出すと飴玉を作り出しどんどん袋詰めされていく。


「人間さんにはこの商品を検品してほしいんだ、いかんせん我々には人間の言う()という概念がないのだよ。つい、この間まで雇っていた人間は魔族となり色がわからなくなったんだ」

「こんなことを聞くのも変ではありますが、人間が魔法を習得する代償はありますか?」

「我々のような色盲の魔族の手伝いをすれば色がわからくなる。味の手伝いをすれば味と担当したものがわからくなるのだよ、その()()はあるか?」


 覚悟……。色がわからない代償といえば何だろう?


 春の桜の色がわからない、夏の海のキレイな青がわからない、秋の紅葉と、冬の雪も。


「覚悟はないですが、ここで働かせてください!」

「いつから来れるかね?」


 面接官は手からなんとも言えぬ色のボールペンを生成した。


「私は現在、離職しているのでいつでもかまいません!」

「では制服の採寸後、来週には用意できるだろうからそのタイミングにしよう」


 そのまま面接は終わった。家に帰り求人票や渡された契約書を熟読した。たしかに魔法でものを作るとは書いていた。


「魔法なぁ……」


 そして、時間は経ち今日は初勤務日だ。


「はい、人間さん、これが名札で検品前の商品がこの名札を通じて出てくるから」

「よろしくお願いします、マニュアル等はあるでしょうか?」

「あぁ、マニュアルとかも魔法で商品と一緒に渡すよ」


 早速最初の商品が来た。マニュアルには『緑の色のものをはじいてほしい』と書いていた。


 商品を見れば青や紫などのおはじきがある。緑色の商品をはじいた。数は10個前後だ。


 緑色のおはじきをはじく業務が終わった後、次に来たのはおはじきの赤系統の色の商品だ。


「次は……マニュアルを見れば……」


 ピンクをはじいてほしいとのことだ。ピンクは見た感じない。おはじきをひとつもはじかず袋詰めのレーンに流した。袋詰めは魔族が担当しているらしい。


「人間ってバカだよな」

「あぁ、わかるわかる。ハーフエルフでも魔法使うには修行がかなりいるのに、こんな検品作業だけで習得できるわけないのにな」

「そもそも我ら魔族が人間の通貨などもってないのにな」


 そんな会話が聞こえた。しかし、私は気にしない。なぜなら、魔法の習得など目的ではない。大事なのはお給料だ。


 ここはパートで採用されているが時給2000円と破格だ。ピロンと名札が光った。もちろん、魔族の魔法だろう。


「どうしました? 人間さん、作業の手が止まってますが?」

「ピンクをはじいた後、商品が来ないのですが?」

「おや、申し訳ない」


 どうやらこの名札は魔族との連絡ツールでもあるようだ。そのまま別の商品が現れた。


「………?」


 目の前にはたしかにおはじきがある。この2つ前のように特定の色系統のものではなく……。


――なんだこれ、おはじきと認識しているのに……。


「人間さん?」


 魔族からの連絡だ。


「すみません、疲れてるのかもしれません、目の前にあるのは商品と理解できるのですが……色がわからないです」

「おやおや、では、時間も時間だしお昼休憩にしましょう」


 魔族が部屋の端っこに机とから揚げ弁当を生成したものが名札を通じて出てきた。


 から揚げ。


 それは茶色く嫌いな人間を探すほうが難しい最高峰の料理だ。から揚げ弁当にはから揚げの他にポテトサラダにたくあんにパスタやキャベツと本来ならば色とりどりのメニューだ。


「おかしいな、目の前にあるのはのその料理だとわかるのに色がわからない。いや、色ってなんだっけ?」


「人間さん、調子が悪いのですか? お箸が進んでませんよ?」


 さっきからずっと連絡をとっている魔族からの通話だ。事情を話した。扉から魔族が現れた。魔族が名札を回収すると私の意識はなくなったが、確実に聞こえた言葉がある。


「ありがとう、私達に色を教えてくれて。これで人間のいう美しい季節を楽しめる」

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