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12話 作戦会議

ゲルフォルトさんが怒りっぽい人に見えてきてますが、ただアルバさんに対して過保護なだけです(笑)

 閉館後、アルバへの届け物の仕分け作業を手伝っていたゲルフォルトに、青ざめたアルバが声をかけた。

 ただ事ではないと察したゲルフォルトは作業をスタッフたちに任せてアルバを館長室に連れていった。

 椅子に座らせ急いで淹れたハーブティのマグカップを渡し、一口飲ませて落ち着いたところでゲルフォルトは口を開いた。

「アル、何があった」

「ごめんグーフォ…私、みんなを巻き込んじゃった…!」

 三角巾の間から取り出した開封済みの2通の書状にゲルフォルトは慌てて目を通した。


“「特命召致状」

聖ウィルトアート帝国皇帝 ゲラルト=ウィルトアートの名において、国立歴史博物館ガイド、アルバ=ノービレに告ぐ。

此の度の『惑わせの森』における貴殿の献身的な働き、並びに卓抜した歴史的知見は、帝国の安寧に資するものとして高く評価する。

ついては、その功績を直接称えるとともに、陛下の御前にて更なる叡智を拝借すべく、貴殿を宮廷へと招待する。

――なお、此れは皇帝陛下の慈悲深き『ご指名』である。

拝受の後は速やかに登城の準備を整えられたし。

万が一にも、この光栄を無下にするような不敬は、帝国への反逆とみなすと心得よ。“


“アルバ=ノービレ殿”

“皇帝陛下からの招聘状にさぞ驚かれたと思う”

“貴殿だけでの入城は何かと不便だと考え、レオナルドと共に入城できるように勝手ながら手配させてもらった”

“式典に際しこちらでドレス等も手配が進んでいるため、一度レオナルドと我がルーラー領にお越しいただきたい”


 書状を持つ手に力が入り、上質な紙がクシャリと音を立てた。

 全くもって頭に来る。

 我々が必死に守ってきた安寧を、相手は意図も容易くぶち壊してきた。

 何が皇帝のご指名だ、冗談じゃない。

 本能が警鐘を鳴らす。

 アルバを絶対に行かせてはダメだと。

「アル、この書状は見なかったことにしよう。行かなくていい」

「でもっいかなきゃ反逆って」

「そんなもの、重傷を負った人に向かって言う言葉じゃない。完全に回復しきっていない怪我人を一切配慮していない相手の話に乗る必要はないよ………?誰だい?」

 唐突に館長室のドアがノックされた。

 恐る恐る開いたドアの向こうから大きな箱を抱えたスタッフが2人とジーンが顔を覗かせた。

「館長、今お時間よろしいですか?」

「大丈夫、もしかして仕分け終わった?ごめんね、全部任せてしまっ」

「ダンダリオ団長がお越しなのですが…」

 ジーンの一言でゲルフォルトの堪忍袋の尾も限界に達した。

 額に青筋を浮かべ、静かに席を立つ。

「どの面下げて来たんだと伝えてやるから、お通ししなさい」

 鬼のゲルフォルト、再びである。



「夜分に申し訳ないベッキオ館ちょ」

「まったくだ!どの面下げて今日ここに来たのか説明してもらおうか!」

 開口一発目からこれである。

 ゲルフォルトの怖さを身を持って知っているレオナルドはキュッと萎縮している。

「今日訪ねたのは、皇帝陛下の招聘の件です……」

 か細い声で萎縮したまま答えたレオナルドにゲルフォルトはどんどん距離を詰めていく。

「この国の皇帝様はいつから配慮そっちのけで無遠慮に一般人を招聘するような奴になったんだ?あ?」

「すみません俺にはわかりませ」

「知っとけや団長だろうがぁ!」

「すみませんんんん」

 一気に詰め寄って襟首を両手でグッと掴み上げた。

 流石にやりすぎなのでアルバが慌てて仲裁に入る。

 解放されて咳き込んだレオナルドを横目で見つつ、やりすぎとゲルフォルトの肩口に手刀を入れていた。

「…で、話ってなんだい」

「モルト…ルーラー選帝侯から俺宛に書状が届いた。この前の遠征の功績を讃える式典を行うから、アルバさんと一緒に屋敷に来いって」

 胸元から取り出した封筒には、アルバ宛に届いた書状の封筒と同じシーリングが捺されていた。

「ダンダリオ団長的には今回の招聘、どう思う」

「…アルバさんの功績は確かに賞賛されるべきものだからいい事のように見えるが、冷静に考えるとよく大臣たちが許したなと」

「一般人への皇帝直々の賞賛になるからかい?」

「そうだ。しかも俺が報告して1週間も経っていないにも関わらず招聘がかかった。こんなに早い招聘は聞いたことがない。誰かが先手を打って準備させていたと考えるのが妥当だと思う」

 レオナルドの考えを聞いてますますゲルフォルトの表情は険しくなった。

 額に手を当て大きくため息を吐く。

「私は…行かせたくないんだよ……私もアルバも、数えきれない年月をこの博物館で過ごしてきた。今まで一切皇帝や貴族の目に留まることはなく、平穏に歴史を紡いできたんだ。それなのにどうしてだ?なぜここにきて急に目に留まった?誰がこの子を見つけたんだ?」

「それは…」

「わかっている。キミではないことぐらいはね。キミもおそらく利用されている駒の1つなんだろうさ」

 ゲルフォルトはルーラー選帝侯のシーリングを睨みつけた。

「ダンダリオ団長、先日の責任を取る方法を1つ提案させてもらうよ」

「…!何なりと」

「ルーラー邸でもウィルト城内でも、何があってもアルバのそばを離れず、今度こそ守ると誓えるかい?」

「…はい。レオナルド=ダンダリオ、開拓騎士団団長の誇りにかけて誓います」

「できればキミの女性の部下を1人、どうしても団長では対処しきれない事案に対応できる方を護衛としてつけて欲しい。そちらに関しては私が礼金を払うよ」

 ゲルフォルトは館長室の本棚の隠し金庫から小さな麻袋を取り出してレオナルドの前に置いた。

 ジャララと大金の音がする。

「前金で金貨100枚(日本円計算で100万円相当)。完遂後はこれの3倍でどうかな」

「グーフォ、さすがにそれは」

「私が大金を持っていても持ち腐れになってしまうし、それだったら誰かのために使おうと思ってとっておいた分だ、気にしなくていいよ。さぁダンダリオ団長殿、これを」

「ベッキオ館長、この大金はいただけないが、護衛は必ずつけよう。あいつらもずっとアルバさんのことを心配しているし、守ってもらったことへの負い目もある…必ず引き受けてくれる」

「そうか…それを聞けて安心したよ」

「今度こそ誰にも手出しはさせない。アルバさん、ルーラー選帝侯には俺から一報を入れて返事が来次第キミを迎えに来る」

「はい…よろしくお願いします、レオナルド団長」

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