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11話 巻き込まれ人生

第2章開幕です。

これより1話ずつの更新となります。

よろしくお願いします。

 惑わせの森遠征から2週間が経った。

 レオナルドを庇った時に負った左肘下から手首にかけての大きな切り傷は、痕こそ残ってしまったもののようやく元の生活に戻れるほどには回復してきた。

 1週間の不在は“帽子のガイドさん”目当てで博物館に来館する市民から驚きと心配の声が寄せられて、スタッフのイーサン始め、受付、果てには艦長のゲルフォルトまで総動員してその対応に追われていたらしい。

 それを聞いたアルバは遠征後すぐに復帰すると意気込んだが、さすがに大量出血で倒れかけた事を知っているゲルフォルトに1週間の休養期間を(強制的に)与えられていたため、今日が復帰1日目となる。

 開館前のブリーフィングに姿を見せると、スタッフ全員から温かい拍手と安堵の声が漏れ聞こえた。

「2週間もみんなに負担をかけてしまってごめんなさい。この腕も軽くは動かせるけど、まだまだ安静が必要みたいで固定したままになるから、もう少しだけみんなにお世話になると思うけどどうかよろしくお願いします」

「なぁに言ってんだよアルバさん!水臭いなぁ」

「そうよ、負担だなんてこれっぽっちも思ってないわ…まぁ、気がついたらアルバの帽子を探してる自分もいたんだけどね」

「そりゃみんな一緒さ!」

 スタッフ全員がいい笑顔で笑っている。

 ゲルフォルトもアルバの肩に手を置いて嬉しそうに微笑んでいる。

「みんな…ありがとう……やだ、涙出てきちゃったじゃない」

「おいおい誰だよアルバさん泣かせたの?」

「お前が筆頭だよイーサン」

「えっ俺ぇ!?」

 理不尽を被ったイーサンの素っ頓狂な声に大笑いする皆の声が博物館いっぱいに響く。


──あぁ、これが私の日常、私の大好きな仕事、私の大事な大好きな家族たち!


 開館後、アルバ復帰の噂を聞きつけた来館者たちが見舞品片手に押し寄せてきた。

 ゲルフォルト曰く「対策済みだよ」とのことで、受付から離れたところに待機していたアルバはこっそりと様子を伺うと、受付横に特別ブースが設置されていた。

「はいはーい!当館大人気“帽子のガイドさん”宛のお届け物はこちらにお願いしまーす!我々スタッフが後ほど渡しますから、本人を探して直接渡すのはやめてくださーい!」

 イーサンの張り切る声とジーンの見事な人捌きに、ゲルフォルトは楽しそうに笑っていた。

「あれ、誰が考えたの?グーフォじゃないでしょ」

「バレてたか…そうだよ、あれを考えたのはスタッフのみんな。アルに休暇をとらせている間にもお届け物がたくさんあって困っちゃったから、ああやってブースを作って流れをスムーズにしようって話し合ったんだって」

 それに、とゲルフォルトはアルバの腕を指差した。

「まだまだ本調子じゃない人に負担をかけちゃダメだろ、だってさ」

「……みんなの観察眼も鍛えられてますねぇ…」

「そうだよ、誰かさんのおかげでね。さぁ出番だよガイドさん、本日もご安全に」

「はい、ご安全に」

 新調した帽子をゲルフォルトに手伝ってもらいながら深く被り直し、アルバの仕事が始まる。

「皆さまおはようございます。“帽子のガイドさん”ことアルバ=ノービレ、ご指名いただきましたので、ガイドさせていただきます」



「……このように、火の森戦役で森はもともとの面積の半分は焼け落ち、生活に使われていたであろう物に関しては燃え残った物を収拾、修繕を加えこちらに展示しております。近くでご覧になられる際はお手に触れませんようお願いします」

 本日云回目のツアーガイド。

 淡々と解説を述べてはいるものの、実際今回の遠征調査で発覚したものは極秘として処理されたため、今までの解説と変わらない内容を繰り返すのみだ。

 ゲルフォルトへ詫びの品を持ってきたレオナルドからも、調査で分かったことは口外禁止だと緘口令を布かれている旨を伝えられている。

 こればかりは仕方がない。

 歴史の根底を揺るがしかねない、ある意味での大発見だったのだから。

 こちらとしてもパニックを起こしたくはないし、国に目をつけられるなんてまっぴら御免被るのだから、何もせずいつも通りに仕事をこなすだけでいい。

 そう、この日常を守りながら穏やかに過ごしていたいだけなのに。

 にわかにざわつき始めた博物館入り口の方を見て嫌な予感が胸を過ぎる。

 あっという間に受付周りには野次馬の如き人だかりが出来上がり、その間を縫ってイーサンが真っ青な顔で走ってきた。

「イーサンどうし」

「しーっ!アルバさんこっち隠れて!早く!」

 右手を掴まれ人が少なくなったジオラマブースまで移動してきた頃に、イーサンはようやく手を離した。

「イーサン説明して、何があったの?」

「アルバさんこそ何したんだよ?帝国騎士団が書状を持ってアルバさん探しにきたって入ってきたんだぜ!?」

「帝国騎士団?開拓騎士団じゃなくて?」

「間違いない、あのビカビカの銀の鎧は帝国騎士団だよ!なぁアルバさん!何か捕まるような事しちゃったのかよ!?」

「してない!してないに決まってるでしょ?だって私昨日まで…」

「失礼」

 低く重厚な声と共にヌッと大きな人影が2人の前に伸びてきた。

 ぎゃああと悲鳴をあげるイーサンを後ろに庇い、アルバは人影の前に立つ。

「アルバ=ノービレ殿とお見受けする」

「…帝国騎士団の方でしょうか。申し訳ございませんが、ご用件は受付に」

「いえ、我々は貴殿に直接この書状をお渡しできればそれでいい」

 スッと差し出されたのは2通の手紙。

 どちらも立派なシーリングで封蝋がされている。

「我が帝国皇帝、ゲラルト=ウィルトアート皇帝陛下からの書状である。貴殿に拒否権はないと心得よ、とのお達しである。では我々の任務は終了した。これにて失礼する」

 人影はくるりと向きを変え颯爽と帰っていった。

 嵐のような出来事に、アルバとイーサンは2人して腰を抜かして床に座り込む。

「………うそでしょ?」

 アルバは手渡された書状に目を落としポツリとつぶやいた。

 ついこの前は開拓騎士団。

 今回は帝国騎士団。

 さらには皇帝まで出てきた。

「…今まで…こんな事……一度もなかったじゃない…」

 明らかに皇帝のものであることがわかる書状とは別に、先ほどの人影が差し出してきたもう1通の書状。

 こっちの封蝋に捺されたシーリングは見たことがあった。

 あの、レオナルドと出会うきっかけになった推薦状が入っていた封筒にもくっきりと捺されていたそれを指でなぞる。

 不気味なほどくっきりと丁寧に捺されたシーリングに、アルバの日常が崩れていく音がどこかで聞こえた気がした。

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