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001 執事さんに一目惚れ!

上下志郎(うえしたしろう)は目を疑った。

 目の前に立つその女性の美しさに。

 それはあまりにも上下志郎のタイプに突き刺さったのだろう。


 ***


 上下志郎(うえしたしろう)

 高校一年生。昨日入学したばかりだ。

 今日は登校二日目となるが、志郎はまだ、ぼっちで一人机に座っていた。

 そして、思わずある人を見てしまう。

 その人物に、なんだか見覚えがあるのだった。


 志郎には小学生時代。ライバルであり、親友である存在がいた。

 名は一橋一世(ひとつばしいっせい)

 中学で離れてしまって、もうしばらく会っていなかったのだが、なんと高校で同じクラスになったみたいで、志郎はそれが気になって仕方がない。


 友達出来るかな?

 そんな心配や、

 彼女できるかな?

 そんな期待などであふれていた志郎であったが、志郎は親友(ライバル)のことで頭がいっぱいになってた。


 小学生時代の志郎はなんとも成績優秀運動神経もよしで、常に一番だった。

 いや、一番か二番だった。その一番を争っていたのが一橋一世だ。

 だが、今となってはそれはただの過去の栄光。

 今はただの平凡な高校生。

 確かに志郎に才能はあった。

 でも、志郎はそれを捨ててしまった。

 中学生にありがちな、だるそうにしてるのがかっこいいと思っている人がたまにいるだろう。

 志郎はまさにそれだった。

 その内、志郎は平凡で普通になってしまった。

 親友の一世はどうなったのだろうか。

 志郎みたいに退化していったのか、はたまた更に成長し続けているのか。

 志郎は気になって仕方がなかっただろう。


 一時間目が始まる前の休み時間。

 志郎は思い切って声をかけた。


「一世…だよな?」


 一橋一世は数秒沈黙の末、大声を上げる。


「え!志郎!」


 あまりの驚きように、クラスは一瞬静まる。

 気まずいやつだ。


「ひっさしぶりだなあ。元気だったか?」


「まあまあな。一世も元気そうでよかった。」


話が盛り上がりそう!そんな思いの志郎であったが、このタイミングでチャイムが鳴ってしまう。

それは一時間目の開始を合図する。


「やべ、もう一時間目始まっちゃう。また後で話そう。」


 一世の言う通り、志郎は席に戻った。志郎は一番後ろの一番左の席。志郎から見て右に机を二個、そこから三個前に座っているのが一世。

 こうして、三年ぶりの再会を果たした二人。

 これが上下志郎と一橋一世の再開だった。


 この後志郎は一世を始め、少しづつ友達の輪を広げながら、順調に学校生活を送っていった。

 志郎にとって転機となることが起こったのは、二か月後の六月の中間試験の時のことだった。


***


 中間テストはあと五日後。

 高校初めてのテストであり、少し緊張はしているものの、俺、上下志郎は中学で失われた勉強習慣はいまだ取り戻せていない。

 どうせ真ん中くらいの順位になるんだろうな。


 そう思っている中、俺は小学生時代に親友でありライバルであった一橋一世(ひとつばしいっせい)に勉強会に誘われた。

 勉強会といっても二人だけなのだが。

 早速、放課後俺は一世について行き、一橋家に到着する。


「でっか。!」


 親友といいながらも、実は小学生時代に一橋家を訪れたことは一度もなかった。

 金持ちで豪邸なことは噂にあって、なんとなく知っていたけれど、しっかり豪邸のようだ。


「お邪魔します。」


 しっかりと礼儀作法は身についているつもりだ。

 一礼してから、一橋家に一歩踏みいる。


「お帰りなさいませ~」


 俺は目を疑った。

 目の前に立つその女性の美しさに。

 それはあまりにも俺のタイプに突き刺さったのだろう。

 もう、この時にはすでに恋していたのかもしれない。

 一橋家に仕えている執事さんだろう。

 なんだか大学生くらいの雰囲気を何となく感じた。

 ふわふわしている感じの美人なお姉さん。

 それが率直な感想だった。

「お帰りなさいませ~」という口調もなんだかゆるいというか、ふわふわしているというかなんというか。

 家の内装よりも、俺はその執事さんに目を奪われてしまっていた。

 この時には可愛いな程度に思っていただけ。

 だと思っていた。


 でも、しばらく俺はこの執事さんが頭から離れないのだった。


 そう、この時すでに上下志郎は、このライバルが雇っているゆるふわな執事さんに一目惚れしていたのだった。

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