第54話 ティティルVSツルギ3
「ティティルちゃんを守れ!!」
「見習い騎士の実力を見せてやるぞ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「押しつぶせ!数はこっちのほうが多い!」
「ポイントゲットチャンスだぁぁぁ!!」
「これなら1位も夢じゃねえぉ!!!!」
マーシャルコード義勇軍とティティル戦線の合戦が始まる。
正確な数字はわからないが、ぱっと見で人数を比べるとマーシャルコード義勇軍1:ティティル戦線4くらい。
プレイヤー個人のレベルを考慮しなければ、数が多いティティル戦線のほうが優位。
「ん?」
「こいつらなんか固い?」
「というか耐久値が高いっぽい、全然倒れる気配がしない」
「そういえばライアンって商人やってたんだよね?」
「いきなりどうした、今そんなこと言ってる場合じゃ」
「もしかしたらそこで稼いだマネーで高性能の装備やアイテムを集めまくってる?」
「え?、うわまじか、それなら」
「というかこいつらすこししたら後ろのほうに下がって交代してるけどもしかして」
「今確認した、あいつらある程度ダメージ受けたら下がってポーションで体力回復してやがる!!」
「まじか!」
マーシャルコード義勇軍が行っている作戦はシンプル、死なないことを優先すること。
ライアンが商人としてかき集めた回復系アイテムを持たせた回復要因を後方に待機させ、体力が3分の1を切ったプレイヤーはすぐに下がるというように事前に決めていた。
さらに言えばライアンから支給された装備は防御を高めた性能をしており、体力を減らさないようにしている。
ライアンが用意した以上には回復アイテムを持ってきてはなかったティティル戦線はじわじわと削られていく。
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だが、一部ではその作戦がうまくいかない相手と戦うグループもあった。
「早く交代して回復しろ!」
「やばっ、まにあわっ」
「早い!」
「回復急いで!」
「やっぱり強すぎる……」
黒い装備を身にまとう臣下グループは回復が間に合わない猛攻に苦戦を強いられていた。
「推しが同じって知って勝手に同類だと思ってたが、ここまで違うと同類っていうのも憚られるな……」
「いえいえ、私はただゲームがうまいだけど、同じ推しである皆さんとは同志だと思ってますよ」
「はっ、正直うれs…………」
「ふぅ、思ったより強いプレイヤーがいましたね、想定より時間がかかりそうだ」
ツルギがとった行動は一人を確実に倒すまで逃がさないこと。
耐久が長引けばティティルが逃げる隙が増える、逆に回復手段の乏しいティティル戦線の人数がどんどん減っていけば全滅もあり得る。
だがら確実に頭数を減らす方針にした。
「【二刀流】【瞬足】【急所斬撃】」
そしてツルギが一人を確実に倒すのに数秒もかからない。
「また来るぞ!」
「急所を守れ!」
「だめだ隙間から狙われる!」
「っが、早すぎだろ!」
「あんな早く動いて酔わないのかよ!?」
「あの人オトゲーマーだぞ」
「そうだった!」
ツルギは加速系スキル【瞬足】を使用し自身の移動速度を上昇、この上昇に関しては足の速さのみであり、手や目には適用されないため普通の人ならその速さに頭が追い付けずに酔ってしまう。
だが音ゲーマーツルギにはこの程度余裕であり、
逆に自身の視点から相手を音ゲーのノーツに見立て、音ゲーのように的確に相手の急所に二振りの剣を振るう。
周りから放たれる魔法攻撃もジャストガードで弾く、何ならその魔法攻撃を今狙っている相手に向かうように反らし、魔法攻撃の対処で生まれた隙で確実に急所を狙う。
「まあある種のガチ恋勢ですからね、ディシア様に自分のプレイを見てもらえるんなら、今まで以上に張り切りますよ」
「やばいガチだ」
「でもディシア様に見てもらえてるのも俺らも同じ!」
「あぁ!ディシア様に俺らの戦いっぷりを見てもらうんだ!!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!!」」」
ツルギの猛攻に少し怖気づきそうだったが、推しであるディシアに見てもらえるまたとない機会に張り切らない臣下はいない、先ほどもよ苛烈に攻め始める
「さすが同志達、私も久々に熱くなってきましたよ!!」
ツルギも今までの冷静を捨てず、かつ怖気づかない同志に充てられて心を燃やし、迎え撃つ
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そして舞台は変わり、ティティル近くでは別のプレイヤーが戦っていた。
ライアンは盾を構える、先ほどと違うのは大人数に対してではなく一人のプレイヤーに対してであること。
「はぁ、あなたがいたのを完全に忘れてました」
「あぁ女神クリスリーよ、我が武勇をご覧ください」
「ある種尊敬しますよ、ここまで初期設定時に出てくる女神にここまで崇拝できることは、噂ではロールプレイだと聞きましたが」
「あなたも一人の人物に心を動かされ、即座に行動を移されたのは私も存じています」
「そこで門前払いされたんですがね」
相手は掲示板で名前が出たメンバーの一人、狂信者ザーク
このゲームを始める際に自身のステータス設定を決定する際に現れる女神クリスリーに信仰する狂信者。
実際はただのロールプレイだがガチだと思わせるほどの迫力がある。
恰好はよくある神父の格好に手に本来なら片手では持てないような大きさの斧を片手で持つ。
そんな二人は友人のように軽い雑談をしいだすが、状況は苛烈を極める攻防の間に行われていた
「【シールドアップ】【カウンター】【不動の足】【シールドバッシュ】」
「【抜血剛腕】【抜血剛足】【吸血の刃】【死屍奮迅】」
ライアンはカウンターメインの受け盾タイプ。
不動の足は移動を制限する代わりに他ステータスをデメリット分上昇するスキル。
さらにシールドアップで防御力を上げた盾でカウンター、盾持ち用攻撃スキルのシールドバッシュを相手に食らわせる。
ザークは自身の体力を消費してバフを得るタイプ。
抜血剛腕と抜血剛足は一定のHPを消費することで攻撃力や速度などを上昇させ、
吸血の刃というダメージを与えれば一定のダメージ回復を行えるスキルで体力を調整。
体力が4分の1以下で常時発動する死屍奮迅でさらに攻撃力と速度を上昇させる。
「それにしても、あなたは私にとってあまりにも相性が悪い」
「でしょうね、ポーション以外の回復である吸血の刃が意味をなさないから」
「それにあなたが完全カウンタータイプだから速度上昇も意味をなさない、削れるのは盾の耐久だけ、ですがカウンター発生時は耐久の減少量は5分の1」
「こっちは攻撃がくるタイミングでカウンターをすればいいだけ」
「苦しいですねぇ、ですが!」
ザークは雑談をしつつ何度も攻撃を仕掛けるがすべてカウンターで弾かれる。
ただがむしゃらに攻撃してるのか、どうやら違うようだ。
「そろそろですか」
「ん?」
「そろそろ飢餓感に耐えられなくなりましたか、ドグロ」
ザークは強化した足で高く飛び上がり、斧を大きく振りかぶって振り下ろす。
「また同じように、ん?」
ライアンは半ば作業とかしたカウンターからのシールドバッシュをお見舞いしようとしたが、ザークの持つ斧に違和感を覚える。
斧横にある装飾のような眼が開いていたが、そちらよりもカウンターに集中していた。
「シールドばっ!?」
真正面に構えた盾で弾くはずの斧が盾を、そして自身が纏っていた防具をすり抜け、肉体を切り裂かれるようなエフェクトが発生する。
「ぐっ、なんですかそれ、防御無視!?」
「ふふふふふ、これが女神の導きで手に入れたユニークウェポン、飢餓斧ドグロ」
「ユニークウェポン!?もう発見されてたんですか?」
「えぇ、特殊なクエストがあるわけでもなくただ偶然、本当に女神の導きで手に入ったのです、まあドグロの装備したせいで自身の体力を削るスキルを獲得してしまって、信仰者の自分と合わない感じがして少し残念ですが」
ライアンはドグロの性能を予測する。
飢餓と名前についてるから、おそらくファンタジーでよくある血を吸う武器の類、
性能を予想するなら、攻撃でダメージを与えられない状況が続けば飢餓感が増し、防御無視を付与するということ。
ライアンは頭の中で整理してため息をつく、防御無視は今の自分に相性が悪すぎるから。
おそらく防御無視は永続ではないが、持続時間がわからない現状で持続時間が終わるまで耐えるのは難しい。
「はぁ、さすがにカウンターで倒すのは無理そうですね」
「ですが、諦めてるというわけではなさそうですね、何か奥の手でもあるんですか?」
「えぇ、とびっきりのものが」
ライアンは懐から赤黒い液体の入った瓶を取り出す。
「商人をやっていると裏ルートのようなものを見つけましてね、そこで手に入れたアイテムなのですが、飲んだら5分後に確実にLostしてしまう代わりに、時間が進むたびに全ステータスが増強されるって劇薬でして」
「ほう」
ライアンはそう説明すると一気に飲み干す。
空になった瓶を投げ捨てるとライアンの体はぱっと見変わらなかった。
「ん?どこかかwっ!?」
ザークのしゃべりを遮られる、一瞬で分からなかったがよく見てみると
今まで動かたかったライアンが素早く移動してそのまま盾を構えて突進してきたのだ。
「くくっ、ははっ、はははは、今度はこっちも攻めていきますよ!!!あはははは!!」
「ははは、これも女神から与えられし試練ですか、ならば私も全身全霊をもってあなたを5分以内に倒し切るとしましょう!」
勢いが増し、ほかプレイヤーもうかつに近づけない中、5分間の苛烈な戦いが始まる。




