眠り姫の時間
毎日…毎日…夢を見るの
それはある男の子と会ってお話ししたり、踊ったり、凄く楽しい夢
いつかその人と結婚して、幸せに暮らすという大きな夢ができていた
そんなある日、私はいつもの行く森のような山のような場所にいた
そこの奥には大きな屋敷があって、たまにお邪魔している
前に森で昼寝をしていたら、男の人なのか女の人なのかよく分からない中性的な顔立ちの人に声をかけられて家に寄ったことがきっかけでたまに寄るようになった
「…おかえりなさい」
私の腰より低い辺りの身長に、髪色は茶色に近い色の髪の長い端正なお顔の女の子が出迎えてくれた
「…お邪魔します!」
「…また、あなたですか…あのひとは、なんにんつれてくるんですかね…」
そう女の子は言った
私以外にも家に来る子がいるのだろうか…
そう思った時、ドンドン!と扉を叩く音がした
女の子が扉を開けにいくと、そこには同じクラスの伊藤愛菜がいた
「ハルちゃん!こんにちは!」
と声をかけた彼女は、私を見つけると驚いた顔をしていた
きっと私の顔も驚いていたであろう
「…伊藤さんがなんでここに?」
「…いや…私も同じこと聞きたい…です」
とモゴモゴと話し出した
「そもそも…あなた学校にほとんど来ないじゃん…まさか…ここに来てたの?」
「……うん」
彼女から話を聞いてみると、迷子になっていた自分を保護してくれたのがこの家の主人で、その感謝のために来ているとのこと…
本当かどうかは分からないけれど、実際に来ているのだから…まあ、半分は当たっているだろう
「おふたりとも、おちゃできましたよ」
「ありがとう!」
そう彼女は言った
もうここには何度も来ているといった様子が伺える
「…伊藤さん、私…友達いないから友達になってくれない?」
彼女は驚いた顔をして、小さく頷いた
何故、彼女が学校に来ないのかは分からないけれど、彼女が悪い人には思えなかった
「少し話せる?」
「…うん」
彼女は少し怪奇そうに頷いた
そして、私は夢の話をした
なんとも恥ずかしい夢の話を…その話を外の森の中で話している最中…ある男の子が声をかけてきた
「…君さ…」
学生であろうその人は…私の知らない人だった
伊藤さんは相手のことを変な人だと思ったのか、私の腕を引っ張った
「…俺のこと覚えてない…?」
「…誰ですか?」
本当に誰だろう…見覚えがない…とは言い切れないけれど話したこともない人だ
「さっき夢の話をしてたじゃないか。何度も会ってるだろう…?」
夢…もしかして…この人が夢で会った男の子…?
「……確かに何度も会ってますけど…信用が…」
「そうか…じゃあ、ひとまず連絡先を渡しとくよ!連絡したいと思ったら連絡して!」
と彼は言い、どこかに行ってしまった
そして、伊藤さんと屋敷に戻ると家主が戻っていた
「店長さん!さっき変な人がいたんです!この森おかしいですよ!」
と伊藤さんは言った
「変な人か…そういえば最近奇妙なことが起きてるし、そんな人も現れておかしくないのかもしれない…愛菜さんも気をつけてね」
「…はい!」
伊藤さんは凄く嬉しそうだった
家主に対しての好きな気持ちが溢れている、そんな風に見えた
そして、私はあの人が本当に夢の人物なのかどうか気になっていた
[こんばんは。お話を聞きたいので、今度お会いできませんか?]
とメールをすると
[こんばんは!今度の日曜はどうでしょう?あの森の中で待ち合わせして下のカフェでお茶しませんか?]
と返信がきた
あの下にカフェがあったのかと初めて知った
そういえば…伊藤さんが“店長さん”と言っていたし、その人がカフェをやっているのかも…と思い、了解の返信をした
そして当日、彼は約束通りやって来て、下のカフェまで案内してくれた
「じゃあ…夢の話をしようか」
そう言った彼は、夢の話をしてくれた
それは私の夢とほぼ同じもので、夢の中で同じ体験をすることがあるのかと思うほどだった
「…私も同じ夢を見てる」
とすると…彼は私の夢の中で一緒に過ごした人なのだろう
そんな話をしていると
「あ!こんにちは!ご注文は決まりましたか?」
と声をかけられた
声のほうを見ると森の中の屋敷の主人…見知った顔がいた
「あ!…ここで働いてるんですか!?」
「そうですよ、…もし時間があるのであれば近くに衣服屋ができたようなのでそちらも行ってみてください」
「それはいいですね!いい情報ありがとうございます!」
そして、その情報を頼りに近くを歩いてみると確かに衣服屋はあった
そのお店はこじんまりした衣服屋だった
「いらっしゃいませ」
とお婆さんが私達を出迎えてくれた
そのお店には最近の流行から昔の流行までを揃えてあるといった印象だった
見る人には楽しいお店だなという感想が浮かんだ
「ゆっくりお楽しみください」
とお婆さんは言った
そして、彼は見たいものが見つかったのか「少し見てくるね」と私に言ってどこかに行ってしまった
私は、ゆっくりお店を見て回った
そして、お婆さんがいつも使っているようなミシンを見つけた
そのミシンを見つけた瞬間、なぜか無性にミシン針が気になり近づきに行った
そして何の因果か私の手は針に近づき、針に触った瞬間…私の意識はなくなった
その後の記憶はない…
どうして意識がなくなったのか?
そして、どうして森の中にいるのか全く分からなかった