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絵の中の彼女  作者: 茜桜手鞠
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白い姫




僕は死体が好きだ





少し語弊はあるが、綺麗な死体が好きだ

あの体温のない真っ白な姿を見ると体の奥底でじわじわと感じる

これこそが歓喜なのだと

自分が求めていた究極の美しさ

それは死体なのだと知った





それを知ったのは自分の母親が死んだ時

その時、皆は悲しんでいた

涙を流す者もいれば、感情を全て無くしたような表情をしている者もいた

その場面はとても悲しい場面だったのだろう

皆から愛されている母の死はとても大きな穴を作るように悲しい出来事だったのだろう

そんな悲しい出来事なのにも関わらず、僕は何故か感動をしていた




死に際を見て、そして死体を眺めていた

それはとても美しいものだった

自分の母親はこんなにも美しい人だったのかと初めて知るほどに…

それから沢山の死体を見たけれど、自分の理想の死体には会えなかった





そんなある日

僕は見つけた


帰り道に公立高校のそばを通った

そこで学校の掃除をしている女子生徒がいた

彼女は、まるで死体のような美しさがあり、

白い肌に黒い髪、そして生きている証は真っ赤な唇と思わせるほどの美しさだった




これこそ僕が求めていた理想の死体なのではないかと思うほど惹かれた

だから…どうしても近づきたかった

けれど、近づき方を間違えたのかもしれない

あの日以降、彼女に会うことはなかった




彼女以外にもう一人美しいと思った女性がいた

それは森のような山のようなよく分からない場所にいた女性だ

女性とは程遠い見た目の人だったが、僕の理想に近い人だった為、女性と使おう




その女性は絵を描くのが好きなようだった

どうしてかというと、彼女は僕に



「絵を描くのは好き?」



と声をかけてきたからだ

実際、彼女は自分の目の前で絵を描いていたこともあったし、絵画を見せてきたこともあった

それだけで根拠になるかと言われると、はっきりとした根拠では無いとは思う

ただ、純粋無垢に僕に話しかける姿が美しかった



しかし、よく観察してみるとある人にも同じ質問をしていた

その人と彼女は目に見えない何かで繋がっているように惹かれあっているようだった

彼女はこの世のものでないような不思議な力を持っている人だ

だからこそ美しかったのかもしれない

だからこそ惹かれたのかもしれない




しかし、彼女は死んだ

死体を見たわけではないが、ある日突然姿を消した

こんな喪失感…初めて味わった

特に会話もしていないのに、どうしてここまで苦しいのだろうか

あの美しい彼女を失ったことでここまで大きく変化させるのだろうか

分からない




分からない…




そして、二人目

その人はとても自分の理想そのものだった

本当に美しかった

一目惚れとはこのことなのではと思うほどに…




どうしたら接点を持てるのだろうか

そう思いながら足の向かうほうへ歩いていた

すると、こじんまりしたカフェがあった

あまりカフェに寄ることはないのだが、何故か失った彼女の面影を感じて入ってみることにした




「いらっしゃいませ」




そう出迎えてくれたのは、彼女と親しかったあの人だった

僕はこの人に何をしたかったのかは分からない…




「あなたは…美しいものは好きですか?僕は、人間の死体が好きなんです。美しい人が死んだ時、初めて美しさが増す…そんな気がするのです。分かりますか?」




これは僕が周りに言わなかったこと、けれどこの人には告げた

すると…




「美しいもの…私は、絵が好きです。絵には引き込まれるような美しさがあります。それを教えてくれた人がいて…私はずっと気づけなかった…今はその魅力に浸りながら生きています」



浸りながら…?

それは気づいていて甘えているということなのか?

そう心の中で少しの苛立ちを感じた時、その人は言った




「あなたのような人にはこの本を…今朝、読み始めたばかりの本なのですが、あなたにはこの魅力が伝わると思いまして…」




その本は“白雪姫”この本にどんな魅力があるのだと思ったが…読んでみよう

そう思い、本を借りて近くの森のような山のような場所で読み始めた




皆が知ってる通り、白雪姫は美しい姫で林檎を食べて眠ってしまうお話だ…

姫の視点で見ているから気づかなかったが、王子様は何故、姫が良かったのだろう

眠っている姫を見て、どうして姫を選んだのだろう

実際、結婚するのであれば生きている方がいいはず…

もしかして…




そう考え込んでいる時、音がした

それは人が倒れたであろう音だ

その音の元へ行くと、僕が求めていた人がいた

彼女が眠っていた手元付近には林檎があり、その林檎にはひと口食べた形跡がある

彼女の眠っている姿はまるで死体のようだった

これが…王子の求めていたもの…




「やっと…会えたね」




王子は死体愛好家だった

死体の中でも特に美しかったのが“白雪姫”

本当の結末は結婚して幸せになることではなく、美しい死体を集めること

そして、運良く生き返った彼女の姿もまた死体のように美しかった

だからこそ結婚を申し込んだのかもしれない




「…」




彼女の目には恐怖しかないであろう

林檎を食べたはずの場所でどうして僕に会うのか

いや、どうして僕がいるのか

不思議でたまらないはずだ




「僕は君のことが好きなんだ。だから少しずつでも僕のことを知ってほしい」

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