林檎の結末
「今日掃除当番変わってくれない?」
「だめ!掃除はきちんとやらないと!」
「えー!ケチだな」
彼女の名前は森谷林檎。
ごく普通の女の子だ。
ただ、違うところをあげるとするなら人より掃除が好きなくらい。
頼むとやってくれるというわけではないらしいが、誰もやらない場所を掃除していたりする。
そして、たまに目撃するらしいが彼女は動物と話しているらしい。
学校で飼育しているうさぎと話しているようなのだ。
普通に話しかけることもあるかと思うが一方的に話している感覚ではない。
お互いに通じ合っている。
そういう感じに見えるらしい。
ある日の出来事である。
朝、美化委員の仕事というより自主的に彼女が仕事をしていた時である。
「すみません、この学校の生徒ですか?」
と声をかけてくる男子生徒がいた。
その生徒は彼女と同じ学校の生徒ではなく、近くの私立高校の生徒であった。
整った顔立ちで華やかさがある雰囲気を持ち合わせており、私立の制服がよく似合う人だった。
「はい…そうですが、この学校に何か用が…?」
彼女は知らない学生に声をかけられたことにとても困り、不安そうな顔をして相手に尋ねた。
すると…。
「いえ…掃除をしている人を見かけたので声をかけただけです」
普通、掃除をしている人を見かけて声をかけるなんてことあるのだろうかと思った彼女は、同じ学生でも変人がいるものだと不安に思い、掃除を切り上げ早々に校内に入ろうとした。
その瞬間…。
「…待って!また、君に会いたい…」
そう彼は告げた。
彼の言葉に不安と少しのトキメキを感じながら、いつも通りの生活していたのだが…。
その後、彼に会うことはなかった。
外の掃除をしていても会うことはなかった。
なんだか、ちょっぴり勘違いしてしまった彼女は恥ずかしさを感じたが、ただの気まぐれに言った言葉なのだろうと切り替え、また同じ日々を続けた。
「ねえ!ねえ!これ家庭科の先生がくれたの!一緒に食べない?」
と、同じクラスの同級生に言われた。
同級生が持っていたものは“林檎”だ。
家庭科の授業で使った林檎が余ったらしい。
だから、貰ってきたのだろう。
「…掃除があるから家で食べるね!ありがとう!」
そう答えて、彼女は掃除を始めた。
帰り道。
いつもの帰り道だけれど、寄り道をしたくなった彼女はある場所に足を向かわせた。
それは、森のような山のようなよく分からない場所だ。
高校生になって少し経った頃、帰り道に適当に歩いていたら見つけた場所だ。
彼女にとってそこは落ち着くところらしく、そこで“林檎”を食べようと思った。
そして、真っ赤な誰が見ても美味しそうな林檎を鞄から取り出す。
そのまま、ひと口かぶりついた。
甘い風味が鼻腔をこえ、サクッとした林檎の感触が舌に行き渡る。
そして…。
ああ…美味しい…と思った瞬間。
彼女は眠りについてしまった。
パサ…パサ…。
草を踏む靴音が聞こえ、その人は彼女の姿を見ると嬉しそうに微笑んだ。
「やっと…会えたね」