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絵の中の彼女  作者: 茜桜手鞠
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結末には花束を添えて

結末には花束を添えて、その花は薔薇の花にしよう

ある物語に使われる花である

ある少女から始まり、不思議と童話の世界に紛れ込んでしまった人達を元の世界に戻すのだ

今までの登場人物もこれからの登場人物も元の世界に戻すことで自分の人生を歩む筈だ

その為に、花束を添えなければならない





「ハル、行ってくるね」

「いってらっしゃいませ」


私はいつも通りカフェへと向かう

少し前では考えられないほど快活になったと自分でも思う

自分の止まった時間を埋めるように始めたカフェ

そのカフェにお客様が来てくれる喜び

全ての初めてが自分を埋めてくれる

あの止まった時間も動き始めたと自分でも感じる瞬間が何度かあった

しかし、あの少女の絵だけは捨てられない

あの大切な時間はもう戻ってこない

それを分かっているから…自分の感情そのものを閉じ込める為にあの絵を描いた

捨てられない…捨てられないんだ…


「すみません!ここの本って読んでも大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。好きな本をお読み下さい」


このカフェで働き始めた時は、特色といったものが何一つ無いカフェだったが、今は童話で少しのひと時を過ごすという雰囲気を作っている

もう三年が経つのか…

そう思いながらカフェの中を掃除する

帰ったらハルとお話ししようと自分の中でスケジュールを考える


カランカラン


「いらっしゃいませ」

「…ここの近くにある立派な建物を知っていますか?」


質問をしてきたその人は高めの洋服を着ていて、貴族のような印象を受けるほど紳士な印象だった

私は考えながらこう答えた


「…立派ですか…ここの近くにはお店ばかりなので分かりません」

「…そうですか、ありがとうございます」


その人は答えを聞いて、そのままどこかへ行ってしまった

そのまま時間が過ぎ、家に帰った私はハルにお話をした


「最近は高校生の子達が来てくれて嬉しいな」

「よかったね!ごしゅじんがうれしいならわたしもうれしい!」

「ハルはあの男の子と仲良くしてるの?」

「うん!すごくたのしい!」

「それは良かった!」

「ごしゅじん?もうねるじかんじゃない?」

「……私は、絵を描いてから寝ようかな」

「わかった!わたし、まってる!」

「ありがとう」


私はいつも絵を描きたい時に描く部屋に行き、下書きを描き始める

今日は何を描こうかなと考えたとき…


ドン!!


と下の方から大きな音が聞こえた

何かが侵入してきたことだけは分かるのでハルの名前を呼び、ハルを抱きしめ、いつでも逃げられるよう窓を開けておく

二階から飛び降りるのは少し怖いが、運が悪くて骨折くらいだろうと考え、何かを待つ

すると、ある男が私のいる部屋まで来て扉を開けた


「…貴方がここを買った契約者さんね」

「…誰ですか?」

「…契約者さん、直ちにこの家を出てくれないかな?」

「何故ですか?」

「前の契約者さんからこの家を燃やすよう指示をされてね。燃やしたいからさっさと出てくれないかな」

「それで了承する人がいますか。今は私が契約者です。そもそも、燃やすことが犯罪なことを知っていますか?」

「…そんな罪は小さいね。俺は前の契約者から何度も指示をされて大きな罪深いことをしてきてるんだ。それに比べれば全然小せぇよ」

「例えばどんな罪ですか?」

「…人殺しとかな」


まさか…こいつが彼女を殺したんじゃないだろうな

前の契約者は彼女の父親だ

父親がこんな指示を送るくらいなのだから可能性はあるはず


「…貴方にお金を渡すことで時間を稼ぐことはできますか?」

「ほう、何がしたいんだ」

「燃やす理由と逃げなかった場合どうなるのか知りたい」

「…そうだな、燃やす理由は前の契約者がこの家を恐れているからだ」

「…恐れているから彼女を殺したということですか」

「…そうだな、あの女には奇妙な力があるらしく、絵の内容が現実化するとかなんとかで怖いから殺してくれと指示されたことがあってな」


…こいつは…いや、彼女の両親は何を言っているんだ

実の娘が怖いから他人の力を借りて殺すとは親として度が過ぎていないか

異常な力は異常を生むということなのか?


「…おかしいと思うか?まあ、信じられねぇよ。娘が死んだのにまだ恐怖らしく家を燃やせだとよ」

「……」

「本当はもっと早くに燃やしたかったらしいが、お前がこの家を買いたいだとかで契約を迫ってきたから予定が遅れてしまったと言っていたぞ」

「…そうですね。とても、買うことに時間がかかりました」

「だろ?で、お前が逃げなかった場合の話だけど…その場合は俺に殺される」

「言うことを聞いて外に出たら死なない…とは言えませんよね」

「そうだな、ここまで聞いたお前はもうどちらにせよ死ぬな」

「分かりました。では、時間を下さい」

「嫌だと言ったら?」

「…困りますね」

「…まあ、どうせ殺す人間だしな。一日だけ時間やるよ。俺の監視付きでな」

「…ありがとうございます」


さて、監視付きとなってしまったが問題は彼女の描いた絵が現実化してしまうことだ

彼女の描いた絵を見つけ出し、この悲劇を終わらせなくてはならない

そう考え、一つ一つ彼女の絵を集めていく

久しぶりに見る彼女の絵はやはり自分の心を揺らがせた

彼女とまた話がしたい

彼女が目の前にいないことに、心が重くなる

抱きしめていたハルは固まっており、近くに置いてある椅子に座らせ手を繋ぐ


「ハル…こんなことになってしまってごめんね」

「………ずっといっしょ?」

「うん、もうあの子と会えないかもしれないけど…一緒にいてくれるかい?」

「……うん!」


ハルと会話し、少し冷静を取り戻してきた私は彼女の絵に色を塗っていく

彼女の絵に誰かの絵を加えることで彼女の力が消えるはず

彼女自身の絵で無くなってしまうことが悲しいがこれでいいのだと自分に言い聞かせる

“現実の童話”という作品に花を添える

童話なのだから不思議の国のアリスに出てくる赤い薔薇にしよう

赤い薔薇を描き終えると何故か涙が溢れていた

やはり、彼女の世界に自分は居たのだと感じる

これで…これで…童話の世界が終わってしまった


そのまま“人生の絵画”を手に取る

なんて美しい絵なんだと心の底で思う

現実の童話と同様、薔薇を描こう

様々な色の薔薇を束にし、彼女にプレゼントを贈る

こんな優しい世界で私は生きたい

全ての絵を描き終えると部屋が燃えていることに気づいた

男は私を見つめてこう言った


「一日が終わった。すまねぇがここで終わりだ」


そのまま私の心臓を刺し、窓の外へと落ちていった

きっと外から火を足すのだろう

私は息苦しさと共にハルを抱きしめた

もう…話すことのないハル…

ありがとう…

私に時間をくれて…

ありがとう…

そのまま目を瞑ると会いたかった彼女が花束を持ち、笑っていた


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