学校帰りのプレゼント
「おねえさん!これあげます!」
そう女の子は言い、私に硝子の靴を渡した
私の足のサイズが分かるものなのかと思ったがあまりにも綺麗だったので、私は硝子の靴を部屋に飾ることにした
次の日、またその女の子は私の目の前に現れて言った
「おねえさん!これあげます!」
それは私には似合わなそうな綺麗なワンピースだった
「どうして私にくれるの?」
「おねえさん…ほしいでしょう?」
と不思議なことを言った
私は怖くなり、足早に帰った
私の家は母子家庭で貧しい
母子手当と児童手当、そして生活保護を受けて初めて家が成り立っている
お母さんの給料では成り立たないことも分かっているし、私のバイトも生活保護を超えない程度に働けと言われていて本当にお金がない
一応、今では私立も親の収入によって月々の学校にかかるお金が変わると言われているけれど、私は公立の学校に行った
特に頭も良くはないけど、公立しか無理だと思ったから公立だった
お金がない…生活するので手一杯…他のみんなとは違う
そんな日々を送っているとお洒落な服も可愛い物も買うことができない
だからこそ、あの女の子に硝子の靴を貰ったのは嬉しかった
だけど…あの女の子は何故あんなことを言ったのだろう
「おねえさん!それはひつぜんだからですよ!」
「必然?」
「そう!これからあうひとへのじゅんびです!」
「これから…私は誰かに会うの?」
「…いつもあなたのことをみまもっているかたがひとりいます。これ…あげます」
その中には女子力という名のお洒落な物が沢山あった
「あしたはおやすみでしょう?だから、これでおでかけするの!」
不思議な子供だな…この子の言う通り、明日出かけようかな
ぶらぶらと家の近くにある静かな道を歩いてみると同い年くらいの男の子がこちらを見ている
「…こんにちは!同じクラスの原 大輔です!」
「…こんにちは?えっと…はじめましてですよね…?」
「はい!そこのカフェおすすめですよ!一緒に行きませんか?」
そこは家の近くのカフェだった
なんだか分からないけれど、流れ流されカフェに行くことになった
カランカランと音を立てカフェに入ると、優しそうな店員さんがいた
「その靴、綺麗ですね」
「…ありがとうございます、貰い物なんです」
「そうなんですね」
店員さんは少し含み笑いをして席まで案内してくれた
「料理ができるまでシンデレラを読んでお待ちください」
待ち時間に本を読みながら過ごすという初めてな体験をして料理を待った
待っている間、原君が私に話しかける
「ここよく来るんだ。この席はシンデレラの本が置いてあるんだね。前までは本棚から勝手に取って読む感じだったんだけど変わったみたい」
「そうなんだ。結構物知りだね」
「俺の友達もここに行ったことがあるらしくて、友達が来た時はそうだったらしい」
「へぇ〜。童話をメインにしてるんだね」
「そうみたいだね。建物も年代物と今を合わせたような雰囲気だし…多分童話に合うようにしてるのかも」
「またここに来てみようかな」
「その時も一緒に行こうよ」
カランカランと扉が開いた
音のする方を見ると同級生の伊藤愛菜が立っていた
「店長さん!ハルちゃんからです!」
伊藤さんは店長さんと親しげでいつもここに来ているような様子だった
「伊藤さん?」
「伊藤さんもここ来るんだね。というよりこのお店の人と仲がいいのかも」
ここ同級生の溜まり場なのかな…
まあいいや、とりあえずシンデレラってどんなストーリーだったっけ?
継母にいじめられているシンデレラって女の子がお城の舞踏会に行って王子に求婚される話だっけ
そんな身分差のある結婚で幸せになんかなれるのかな
シンデレラの本を凝視していると、原君は少し微笑みながら私に言った
「…シンデレラみたいに幸せになりたい?」
「…え?」
「俺さ…友達になりたいんだ!仲良くなりたい!お願いします!」
「……」
告白されてるわけでもないのに告白されてる気分…
でも、友達が増えるのもいいことだよね
「…お願いします」
数年後、彼と結婚したのはまた別のお話