人形の日常
その人は絵を描くのが好きな人
私はずっとその人を見てきたわけではないけれど、たまに絵を描いている姿を見てそう思う
その人は、毎日部屋の中央に飾ってある絵を見て悲しく笑う
その絵は女の子の絵だ
白いワンピースを着た女の子の絵
その子は実在した人物らしいけれど、私は見たことがない
その子がいない今、その時間を埋めるように様々なことを始めている
その一つが私だ
私は存在はしているけれど、話をすることはできないし、動くこともできない
もし、魔法があるなら私はその人の元へ行きたいと思っているのに…
現実はそう甘くはないようだ
「おはよう…今日はカフェで一日過ごそうかな。カフェの仕事も凄く楽しいしね」
毎日私に話しかける
私は何も答えられない…
“カフェはどんなところ?”“どんなことしてるの?”…って聞きたいのに…
その人は、女の子の絵を描いた後、経営を始めた
ちょうどこの森を抜けた近くにある土地を買って建てたカフェらしい
ここの近くには人があまりいないからお客さんはたまにしか来ないみたいだけれど、あまり売り上げにならなくても特に不満はないらしい
そして、カフェをオープンしてから二年が経った頃、ある女子高生が家にやって来た
一晩泊めてほしいという彼女は、何か事情があるような様子だった
その日は、女の子の絵と部屋に注目した後、彼女を空いている部屋に案内しに行った
その後、何度も彼女は会いに来たみたいだった
「女子高生がね、カフェに毎日来るんだ。私のことを知りたい様子で、毎日何かしら質問をしてくるんだよ」
と少し嬉しそうに話をした
この二年間、灰色の人生を歩んでいた君にやっと色がついたと思った
そして、彼女は友達になる決断をして、たまにこの家にやって来るようになった
「…このお人形、可愛いね」
そう彼女は私のことを褒めてくれた
「ありがとう…あの少女をモチーフに作ったものなんだ」
「え…」
彼女は一瞬悲しそうな顔をした
しかし、君は…
「このお人形は…自分の気持ちを楽にするために作ったんだ。もし…このお人形が動くのであれば自由な人生を送らせたいな」
彼女は少し微笑んで、私に向かって口を開いた
「…ごめんね」
それはどういう意味だったのかは分からないけれど…私はこの家を”守りたい”そう思うようになった
そんなある日
「最近、高校生が来るようになったんだ。だから、高校生でも楽しめるように童話をカフェに置くようにしたんだよ」
「…ど…うわ…って…」
君はとても驚いた
目を大きく広げ、全身で驚いたことを表現していた
「…人形が…話した…」
「…わ…たし…は…な…した…かっ…た」
私でも驚いているのだから、もっと驚くのは当たり前だ
「そうか…最近来るその高校生達が不思議な子たちでね。もしかしたら、何か奇跡が起こったのかもしれないね」
「こ…わく…ないの?」
「…驚きはしたけど、話し相手ができたから嬉しいよ」
君は本当に優しい人だ
「これ…から…た…くさん…おし…え…てね」
「うん!」
そう言って、君は微笑んだ
私はこの奇跡に感謝しなければならない
これから私は君とこの家を守っていこう




