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 翌日。

 無事木漏れ日亭に部屋を取り、夕飯は別々に摂った二人は、宿の食堂で朝食を共にしていた。


「ヨシュアは、今日は何するの?」


 相変わらず目一杯に頬張った食事を飲み込み、ララが質問する。


「俺は別の街から依頼を受けて来ているから、情報収集かな」


「そうなんだ?一緒に依頼受けようと思ってたんだけど、なら仕方ないね~」


「ララはどれくらいのランクなんだ?」


「あたし?まだ駆け出しのDランクだよ~。前にいたところで登録して、見習い卒業してすぐに旅に出たんだ」


「そうなのか。昨日見た体術からすると、もう1つくらい上かと思っていたが」


「もう、その話はやめてよ~。反省してるってば」


「いや、褒めてるんだ。ララの身体能力なら、そうかからずにCランクくらいにはなれるだろう」


「え~、そうかな?同じくらいの子に言われても、あんまり調子には乗れないなぁ」


「俺はAランクだ」


「うっそだ~。どう見てもあたしと同じくらいの年じゃん!」


 冒険者ランク。

 冒険者の実力と実績に合わせて、ギルドが付与する。見習いレベルのE、駆け出しのD、一人前のC、ベテランのB、一流のA、特殊な条件を満たさないとなれないSランクとなっている。

 依頼にも同様にランクがあり、受注するには依頼と同レベル以上のランクか、1つ下のランク保持者によるパーティが必要になる。

 冒険者の命を無駄に散らさないための、ギルドのシステムである。


 ヨシュアは無言で自身の冒険者タグを外し、テーブルに乗せて見せた。


「これが証拠だ」


「えっ!?ほんとにAなの!?すごーい!あたしAランク冒険者なんて初めて出会ったよ~」


「俺も、初めてDランク冒険者にたかられたよ」


「もーう!それは言わないおやくそく~」


 ころころと表情が変わるララに、ついからかいたくなってしまうヨシュア。和やかな朝であった。




「じゃ、あたしはギルドで依頼受けてくるね~」


「あぁ、無理しないようにな。良い冒険を」


「ありがと!そっちも良い冒険を~」


 ぶんぶんと手を振って去っていくララを見送り、逆方向へと歩き出すヨシュアだった。




 ところ変わって領主の館。

 ヨシュアは、この街の領主のもとを訪れ、話を聞いていた。


「では、ここ最近で変わったことは特に無いと?」


 ふくよかな身形に人の好さそうな笑みを浮かべ、眉毛だけは困ったようにへの字に曲げながら、アドレア領主オルグ=アドレア男爵は頷いた。


「えぇ。お話にあったような、行方不明者の増加や魔物の行動範囲の変化などは報告されていません」


「そうですか…。これは、追いついたのかもしれない」


「追いついた、ですか?」


「はい。私は王都にて今回の変事の報告を受け、報告のあった街から異変を辿りながらここまで来ました。最初の街では、私が到着した時には既に異変が去った後でしたが、追いかけるうちに異変発生から私の到着までの期間が短くなり、前の街では魔物が押し寄せるタイミングに鉢合わせました。その解決を見てからここへ来ましたが、まだ異変は無いとのこと。これは追いついたか、異変とは違う方向へ来てしまったか。どちらかだと考えます」


「…なるほど。では、これからこの街にも異変が起こるとお考えなのですね?」


「えぇ。ほぼ間違いなく、何かが起こると考えています。どんな些細なことでも構いませんので、いつもと違うことがあれば、教えていただけませんか?」


 そう言われ、オルグ男爵はしばし考え込む。


「そういえば」


「!何か思い出しましたか?」


「いえ、此度の異変とかかわりがあるかは分かりませんが、一昨日の夜、北の空が光るのを見た、という報告が、見張りの兵士から上がっております。雷かなにかだろうとのことで片付けておりましたが、この街近辺では美しい星空であったので、おかしいと言えばおかしいな、と」


「北には何があります?」


「街の北には草原と小さな森がありまして、駆け出し冒険者の狩場になっております。そのそばを通る小さな街道をさらに北へ進めば、山脈の手前でいくつかの辺境の村へと繋がっておる次第です。山脈の合間を抜けて、さらに北へ進めば辺境伯領へと繋がっております。」


「初級狩場と、その先に村と山、それに辺境伯領ですか」


「えぇ。その山には竜が住むと言われ、数年に一度は目撃情報もありますので、雷でないとしても竜が暴れておると考えれば、空が光るくらいはするかと、あまり追及することもせずにおりました」


「…なるほど。わかりました。ひとまず見に行ってみることにします。情報感謝します」


「いえいえ、何かのお役に立てそうならなによりですとも。今後も、何かありましたら連絡をいたしましょう」


「よろしくお願いします。では、私は早速現場へ向かってみますので」


「おぉ、大したもてなしも出来ず申し訳ない。ご武運を祈っておりますぞ」


「ありがとうございます。では」


 そう言って、ヨシュアは領主の館を後にし、北へと向かうのだった。



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