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「ほんっとーーーにっ!申し訳ありませんでした!!」


 説明を聞き終えた少女が最初に発したのは、意外なことに全力の謝罪であった。


「…まぁ、分かってくれたならいいさ。謝罪は受け入れよう」


「うぅ…、お兄さん優しすぎるよぅ」


 先程までの能天気かつ支離滅裂な言動とは打って変わって、大きな瞳に涙をためて俯く少女。


 向かいに座って唐揚げを完食した青年は、食後の紅茶を飲みながら、すでに自身の怒りも収まり、少女を許す気になっている自分を感じて、自身のお人好しぶりに苦笑しつつ会話を続けた。


「悪いことは悪いと思えるまともな思考能力を持っているのに、さっきはなんであんなに話が通じなかったんだ?」


「うー…、あたしって、昔からおなかが空くと変になるっていうか、食べること以外に対しての問題意識が極端に薄くなるっていうか、そんな感じなの。

 だからお兄さんと出会った時のことも、エピソードとしてはなんとなく覚えてるんだけど、会話の内容とか相手の顔とか、細かいことはほとんど覚えてなくて、ただおなかが空いてて、もうすぐ食事ってところで邪魔が入って排除しようとした、くらいにしか認識してなかったんだよね」


「ふむ…、それは"権能(ギフト)"によるものなのか?」


「それがわかんないの。あたしまだ自分の権能が何なのかはっきりしてなくて。ただ、さすがに普通じゃないのは自覚してるから、力が変な形に暴走してるのかなーとは思ってるけど」




 "権能(ギフト)"


 この世界の人間種には、必ず何らかの超常的な能力が備わっている。


 かつて創造主がこの地に生命を産み落とす際、星の管理者として人間種を設定し、種全体で全知全能たる自身の代行を担わせるため、権能を分け与えたのである。


 原初の少数であった頃の人間ならば、それこそ"大地を創造する権能"であったり、"時の流れを操る権能"といった、まさに神の御業とも言えるような権能を持っていたが、"種全体で"創造主と並ぶように設計されたこともあり、数が増えるにつれその権能は細分化され、原初の民から血が遠のくにつれてその力も弱まっていった。


 現代では、一部の先祖還りとも言える突然変異的に強力な権能が現れる以外は、長く血を守り続けてきた一族ほど強力な権能を宿し、そういった者たちが国を作り、弱き者たちはその庇護のもと、暮らしていた。


 原初の血が薄れてしまった民では、"アリの右前足を操る権能"とか"瞬きの回数が半分でも視力が落ちない権能"など、もはや「そんなんで何を管理するんだ」と言いたくなるような、普通に生活していれば気付かないようなレベルにまで力が落ちている。


 そのため、国もわざわざ平民の権能を細かく調べたりせず、裕福な家の者や冒険者が自身の新たな可能性を求めて調べる程度で、それも安くない金額がかかる。


 こういった背景から、現代では自身の権能を知らずに生きている平民のほうが多い。

 とはいえ、偶発的にでも自身の権能が発揮できる状況に遭遇すれば、なんとなく使い方がわかることもある。

 それこそギフトの名の示す通り、天啓のように突然ふと使い方がわかるようになるのである。


 この桃髪の少女のように、自身の権能は知らないながらも、実生活に何らかの影響が出て、内容を察するということもまた、よくあることではあった。


 だが、


「まるで、権能の裏返りみたいだな」

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