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1-3

「…どうしてこうなった」


 目の前では桃髪の少女が幸せそうな顔で目一杯口内に含んだ料理を咀嚼している。


 3人組に逃げられ、少女が空腹で目を回した後、そのまま置いていくこともできずに、とりあえず大通りまで連れてきた。


 目を覚ました少女は、開口一番


「食べそびれた分、何か食べさせて!」


 と宣い、大通りで「おなかすいたー!」だの「ひとでなしー!」だのと叫びながら一歩も動かなくなってしまった。


 世間の目を気にした黒衣の男は、仕方なく近場の飯屋に連れていき、少女は何かを言う前に次々と注文を始めた。


 注文を終え机に突っ伏していたかと思えば、届いた料理を一心不乱に食べ始め、その光景に呆気に取られていた男の口からようやく漏れたのが、先の一言だった。




「ふぅ~~、やっと落ち着いたよ!」


「…そうか」


「で、あなた誰?」


「不埒な輩から救おうと声をかけたら被害者に殴り掛かられ、勝手に気絶したのを心配だからと大通りまで連れてくればひとでなし等と罵られ、仕方なく連れてきた先払いの飯屋で許可もなく大量に注文された料理代を払ってやった人間に対して、最初にかける言葉はそれで間違いないか?」


「へー、世の中には恩知らずな人もいるんだねぇ。お兄さんツイてなかったね!元気出して?からあげ食べる?」


「お前だよ!俺を殴ったのも気絶したのも罵ったのも勝手に料理食ったのも!からあげ食べる!」


「はい、あーん」


「あーん。ん、うまいな。この店はアタリだな。追加で頼むか」


「それおいしいよねー。最後に食べようと思って残しておいたやつだけど、可哀想なお兄さんに幸せのおすそ分けだよ」


「そりゃ悪いことしたな。よし、追加で頼むから一緒に食べよう、ってちがーーーう!そもそも今食ったからあげも俺の金!幸せをおすそ分けどころか不幸にしたのがお前!すいませんからあげ一人前追加で!」


「あ、追加は本当に頼むのね。」


「そりゃうまかったからな!俺まだ何も食ってないし!」


「あはは。お兄さんノリいいねー。でもあんまりカリカリしてるとハゲるよ?からあげだけに」


「誰のせいだと!そもそもカリカリは唐揚げの衣にかかってるけどハゲるはどこにもかかってないだろ!」


「からあげにするためには羽を毟るでしょー?ということはからあげ用のお肉はハゲた鳥なわけで」


「遠いわ!そんな回りくどい想定しないと伝わらない掛け言葉など俺は認めん!」


「今度は細かいねー。いいじゃん気楽にいこうよー」


「だから誰のせいでっ…、もういい、話を元に戻そう」



 注文した唐揚げが届いたことで正気を取り戻し、脱線しすぎた話の軌道修正を図る男。


 もう一度、状況を一から説明したのだった。


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