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第99話 泡立ちがよくない

長いシャワーシーンも今回で終了です

 素数が40匹、素数が41匹、素数が42匹……

 素数を数えて落ち着こうとしていると、アニカが俺の身体に手を滑らせてきた。

 その手が腰の辺りに来たとき、危険性を察知してアニカの手を押さえつけた。。

 何故なら、その滑らせる先にある物は……

 本当にエイルと違って、触ることが目的なのが厄介だ。

 幾ら元男だとはいえ、絵的に完全にヤバい。


「ああ、何年振りだろう。ボクには無くなっちゃったけど、モナカくんにはちゃんとあるんだよね」


 アニカの目がとろんとして、恍惚の表情を浮かべる。

 完全に痴女のソレである。知らんけど。


「アアアアニカさん、そこはタイムには刺激が……きゃわわわわ」

「ちょっ待て! ホントに待て! それは今はヤバいって。タイムも顔を覆う振りして指の隙間から覗くんじゃない!」

「いいじゃないか。エイルさんには洗って貰ってるんでしょ」

「マスター?! その話はホントなの? タイム聞いてないよっ」


 そりゃ言ってませんから。

 言ったら絶対ややこしくなるから。


「ってかなんでアニカは知っているの?」

「そんなの、知ってる人が教えてくれたからだよ」


 ……エイル本人かよっ。

 もしかして全部あいつの入れ知恵か?

 余計なことをしやがって。

 しかしいつの間にそんなこと……!

 そういえば、シャワー室に向かう前に、エイルがアニカになにか耳打ちしてたな。

 あのときかっ。


「アニカさんが洗うくらいなら、タイムがっ」

「お前なに言ってんの!」

「ダメだよ。タイムさんだと泡立たないだろ。それに久しぶりだけど、洗った経験なら豊富だからね」


 そりゃ元男なら経験豊富だろうよ。


「こういうのは素人の辿々(たどたど)しさがいいって聞いたことあるよ」


 それは違う話……ってタイム?

 お前、それ何処で聞いたんだ!


「洗ってあげるんだから、同じところを洗い返してもらわないと。ね、タイムさん」

「ええええ! それは……その、えっと」

「勝手に話を進めるなっ」

「ええ?! モナカくんは恩を受けても返さない人なのかい?」

「そんなことない……がこれは違う!」

「なら、なにを対価にすれば洗わせてくれるんだい?」

「対価って……なんでそんなに洗いたがるんだよ」

「だって、モナカくんにはあるのに、ボクには無いんだよ」

「そりゃ、俺は男で、アニカは――」

「ボクは男だよっ」

「それは中身の話で、外見(そとみ)は……」

「分かってるよ。分かってるけど……」


 アニカはタイムからタオルを取ると、自分の身体を黙々と洗い始めた。


「こんなもの、要らないのに」


 胸を洗いながら、そんなことを呟いた。


「どうして、ボクには付いていないんだろう」


 股を洗いながら、そんなことを呟いた。

 そして自分を洗い終えると、俺にタオルを渡してきた。


「ボクがサポートするから、自分で洗って」


 そう言うと、背中に手を当ててきた。

 試しにタオルを揉んでみると、少しだけど泡立てることができた。


「エイルさんが教えてくれたんだよ」


 魔力さえあれば俺でも泡立てることができる。

 けれど、確か俺の身体は魔力を通さないはずだ。


「俺の身体は魔力を受け付けないはずだぞ」

「そうだね。でも水は魔力が通るんだよ」

「水?」


 俺の身体は濡れている。

 つまり身体を濡らしている水を伝って魔力が供給されているということだ。

 だから泡立てることができる。

 それをアニカはエイルから教わっていた。

 ……そんなこと、俺はエイルから聞いていないぞ。

 あいつ、もしかして俺の身体を調べることが目的だから、それをしなくて済むような情報を教えてくれなかったということか?

 でもアニカには教えた。

 なら最初からそうしてくれればいいものを。

 そうしなかったということは、アニカは余程……


「水だけじゃない。ありとあらゆるものは魔力を通すんだ。ただ、水は……液体は少しだけ魔力を通しやすいんだって」

「そうなのか?」

「うん。詳しくは知らないけどね」


 詳しく知りたければ、エイルに聞けということか。

 泡立ちはよくないけれど、洗えることは洗える。

 泡も消えたりはしない。

 とはいえ、泡が少ないと洗っている感があまりない。

 だから俺はタオルをアニカに突き出した。


「ん」

「え?」

「泡立ちがよくない」

「ゴメンよ。ボクはあんまり魔力の操作が得意じゃないんだ」


 現代人は基本的に魔力操作が苦手だという。

 何故なら、なにも考えず魔法杖(マジックワンド)に魔力を通すだけで使えるからだ。

 細かい気遣いなど不要だ。

 事実、エイルがシャワーを出すときは、自分を中心にしか出てこない。

 だがアニカがシャワーを出すと、天井全体から降り注いでくる。

 そして今回は体表の水にだけ通すようにしなくてはならないほど繊細だ。

 だから泡立てるのに必要な魔力量が圧倒的に足りない。


「だから、アニカが洗ってくれよ」

「え?」

「マスター?!」

「洗うだけだからな! それ以上は無しだぞ」

「モナカくん……その、ボクはいつもあそこは素手で洗ってたんだけど」

「素手?! ……お、男に二言はない!」

「ありがとうっ!」

「わ、こら。抱き付くんじゃないっ」


 アニカに身体を洗ってもらうと、泡がモコモコと出てくる。

 やはりこうでないと洗っている感が出ない。

 気持ちいいものだ。

次回は部屋割りです

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