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第79話 最弱よ永遠に

黙祷……

 弱いことは悪いことではない。

 だがそれを許せない者たちも居る。


 四天王。


 それは選ばれし4人の集団。

 時としてラスボスより強い者も居る。

 そんな中でも当然序列というものはある。

 最弱(タイム)は、文字通り四天王最弱だ。

 「何故末席に居るのか分からない」とまで言われることすらある。

 それでも、最弱(タイム)は四天王だ。

 その誇りはある。

 だから……


『そうですよマスター。最弱(タイム)が弱いからいけないんです』

『弱いのは悪いことじゃない!』

『ん?』

『でも、マスターとの約束を守れないのは、悪いことなんです』

『無理なことを言った俺が悪いんだ』

『む?』

『にゃ?』

『無理を通すのがタイムたちなんだから、気にしないでください』

『なに言って……え?』

『わん?』

『それより、そんなに強く抱きしめられたら痛いよ、マスター』

『あ、ごめん』


 抱きしめていた最弱(タイム)を放して見つめる。

 最弱(タイム)を掴んでいるゴーレムの腕をよく見ると、親指が無くなっていて、4本指になっていた。

 もしかして落っこちたのは最弱(タイム)の頭じゃなくて……

 いや、だとしても間違えるような大きさか?!

 最弱(タイム)の頭はおよそ10cmちょっと。

 片やゴーレムの親指はその半分も無い。

 頭は丸いけど親指は棒だ。

 何故見間違える……

 状況的に〝最弱(タイム)だから〟という思いが強すぎたのが、誤認の原因だろうか。

 思い込みとは恐ろしいものだ。

 間近で見ていた三獣士すら(あざむ)くとは……酷すぎる。

 全員の視線を浴びる最弱(タイム)が、照れくさそうに(うつむ)いた。


最弱(タイム)?』

『はい』


 最弱(タイム)の頭をなで回して、首が存在するのを確認する。

 引っ張って首が取れないか確認してみようかと一瞬思ったが、さすがにそれはダメだろうと踏みとどまった。


『な……な、なに、マスター?』

『……首――』

『四天王クビですか?! あー仕方ないですよね。こんな弱っちいのが四天王だなんて、おこがましいですものね、あはは……』

『じゃなくて、首がもげたんじゃないのか?』

『なに言っているんですかマスター。そんな訳ないじゃないですか。落ちたのはゴーレムの親指です。首と親指を見間違えるなんて、マスターはおっちょこちょいさんですね。忘れないでください。タイムたちは怪我なんてしないんですよ。ねえ、みんな』

『え……あーうん、そうだよね』

『そ、その通りにゃあ!』

『全然……心配してないわん』

『不甲斐ないおぬしを……笑いに、来ただけでありんす』


 やっぱり最弱(タイム)は愛されているみたいだ。

 口ではああ言っているが、先ほどまで暗かった顔には笑顔が戻ってきている。

 なにはともあれ、これで全てのゴーレムを倒したようだ。

 つまりは試験終了と思っていいのかな。


「えっと、これで終わりでしょうか」

「そうだな。それまで! 試験終了」


 案内人の合図と共に、前回同様膜が溶けて消えた。

 それを見て、試験をやり遂げた実感が沸いてきた。

 多少の切り傷が付いた程度で乗り切ることができた。

 とはいえ、まだ合格かは分からない。

 ゴーレムの殆どは、タイムが倒したのだから。

 結局、俺の戦力はタイムありきなのだ。

 それでも、これならエイルの護衛として、なんとかやっていけるだろう。

 時間は余り残されていないけど。


『そうだ。タイム、どのくらいバッテリー使ったか分かるか?』


 試験とはいえ、けっこうアプリを使ってしまっていた。

 タイムも6人総出で挑んだのだから、けっこう使ったのではないだろうか。


『んとねー、0.4%くらいだよ』


 思ったより消費が少なかった。

 多分タイムが早急に倒してくれたお陰かも知れない。

 オオネズミを相手にするよりはかなり消費したけど、小鬼乗猪(ゴブリンライダー)と比べたら、かなり省エネで済ませられたといっていい。


『そっか。みんな、ありがとう』


 みんなの頭を順番に撫でてやる。

 それを見てサポートタイムも外に出てきた。

 撫でられるのを待つ行列というものができている。

 そんなに撫でて欲しいのかと思うと、撫でる方も嬉しくなってしまう。

 最後に最弱(タイム)だが……そういえばまだ首を捕まれたままだったな。

 指を1本1本丁寧に壊し、なるべく最弱(タイム)に負担が掛からないよう気をつける。

 そしてゴーレムの腕を投げ捨てると、最弱(タイム)を抱え上げて顔を引き寄せ、ほっぺたに軽くキスをする。


『あー! なんでなんで?!』

『最弱だけ、ズルいにゃ!』

『拙者たちはナデナデだけなのでありんす?!』

『タイムも! タイムにもしてほしいわん!』

『サポート頑張ったのにぃ』

『うきゅ~』


 当然の反応だろう。

 しかしここはきちんと躾けなければならない。

 何故こういう差ができたのか。


最弱(タイム)が1等なんだから、当たり前だろ。他のみんなは、全員参加賞だ』

『『『ええ?!』』』

『にゃんで参加賞にゃのよ!』

『納得できぬでありんす!』

『どゆこと!?』

『それはだな――』

「モナカ様、そろそろ次の試験を始めても宜しいでしょうか」


 あ、しまった。

 試験会場を長々と占拠してしまったか。


「済みません」


 騒ぐタイムたちを横目に、案内人の元に戻る。

 エイルの具合はどうだろうか。

 横になったまま動けないようではあるが、呼吸は落ち着いているようだ。


「アニカ、代わるよ」

「モナカくん。ゴメンよ、応援できなくて」

「いいよ。エイルの様子はどんな感じだ?」

「うん、大分落ち着いたみたい。でも魔力の消費が激しいから、ちゃんと寝かせてあげたいな」

「分かった。今度はアニカの番だ。落ち着いて行ってこい」

「うん、頑張るよ」


 アニカは杖を握りしめると、立ち上がった。

 その表情は、かなり強ばっていた。


「あまり頑張りすぎるなよ」

「ふふっ、ありがとう。行ってくるね」

「おう、行ってこい」


 そして試験を受けるべく、アニカはゆっくりと足を進めた。

茶番はここまでです(ヲィ

明日明後日が第1部の本番です

というか、ここを書く為に今までがあると言っても過言ではない

それが大晦日と正月になったのは、ただの偶然です

刮目して待て!


という訳で、アニカが活躍します

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