表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/100

第77話 実技2次試験 モナカの場合 サムライタイム編

またまたタイム大暴れです

 1人の女サムライが荒野(板の間)を駆け抜ける。

 目の前に剣士が居ようとも、弓兵が居ようとも歩みを緩める様子はない。

 両の腕を組み、足早に何人(なんびと)が居ようとも、我の道を塞ぐ者無し。

 そんな堂々とした走りだった。

 ゴーレムの攻撃も、彼女にとっては止まって見えるほどだ。

 通り抜ける通行料として、振り下ろされた武器を躱しながらゴーレムの肩をちょいと小突く。

 振り下ろされた攻撃の力が、逆側の肩を小突くことによって回転の力となり、ゴーレムは背中から床に叩き付けられる。

 力を使うことなく、相手の力を利用した投げ技だ。


『はぁ、はぁ、ちょっ、待ってくださいよー』


 チラリと声のする方を見やると、四天王の中でも最弱と呼ばれている者が、倒れたゴーレムを飛び越えていくのが見えた。


 かような者が拙者ら(タイムたち)の中にまだ居たでありんすか……


 そう思いながら視線を戻すと、彼女の怨敵(おんてき)に向け、その足を加速させた。

 相手は召喚術を使うゴーレム。

 杖を折ってしまえば無力化できるだろう。

 腰の獲物に手を掛ける。

 召喚術師の脇を駆け抜けながら、抜刀した。

 鞘走りで加速した大太刀が、杖を一閃する。

 なんの抵抗も無く振り抜いた大太刀の刀身を、懐紙(かいし)(ぬぐ)う。

 そして一払(ひとはら)いすると、鞘に収めた。


『ふっ、つまらぬでありんす』


 駆け抜けた召喚術師の方へ足を向ける。


『む、加減を(たが)えたでありんすか』


 見ると、召喚術師の胴から上の部分が床に落ちていた。

 その断面は、鏡のように綺麗だった。


『いかんでありんす。拙者(タイム)もまだまだ未熟でありんす』


 己の未熟さを反省しながらも、無力化には成功したと解釈する。

 四天王を見やると、1人が弓兵を殴り飛ばしたところだった。


『どうやら一番乗りは拙者(タイム)のようでありんす。ふふっ、これで1等は拙者(タイム)のものでありん……いや、まだ終わりではありらん。拙者の殿(タイムのマスター)の相手は3体でありんしたな』


 気になった彼女は殿(マスター)の方へ意識を向ける。

 すると辺りが急に暗くなった。

 ハッとして飛び退くと、先ほどまで居た場所に足が踏み下ろされていた。

 まだゴーレムが居たのかと思ったが、そうではなかった。

 下半身だけのゴーレムが踏み付けてきたのだ。


『なんと面妖な。しかし、相手の技量を見誤るなど言語道断でありんす。更なる精進をせねばならぬでありんす』


 そして動いているのは下半身だけではない。

 上半身も浮かび上がり、2つに折れた杖を両方とも両手で握りしめている。

 そして両方から魔法陣が生み出されようとしていた。

 しかし産み落とされる前に、粉微塵となり燃え尽きることになった。


 剣戯(けんぎ) 八百万(やおよろず)

 1秒間に800万回斬り捨て、対象を細切れにする。

 その際発生する摩擦熱により、灰すら残らず燃え尽きるという。

 (アプリ説明欄より)


 上半身を失った下半身は、視界を失ったのか、ただ暴れ回っているだけになった。

 目標もなく闇雲に足を振り回し、蹴り上げ、踏み付ける。

 まるで素人のガチャプレイを見ているかのようだ。

 そんな闇雲プレイに惑わされる彼女ではない。

 見切っているのが当たり前と言うが如く、最小の動きで華麗に躱す。

 掠りすらしない。

 まるで前もって定められた動きをする演舞のようである。

 だから動きを合わせるのは、彼女にとって呼吸をするのも同然なのだ。

 指一本軽く触れるだけで、ゴーレムのバランスを崩すことなど造作もなかった。

 倒れてしまえば所詮は下半身。

 起き上がることもできず、ただ藻掻くのみ。

 彼女が大太刀で一刺しすると、1度ビクンと跳ねて痙攣したのを最後に、力なく横たわって静かになった。

 動かなくなったのを確認して大太刀を引き抜く。

 障害を排除した彼女は気を抜くことなく周囲を警戒する。

 敵影が無いことを確認すると、刀身を懐紙(かいし)(ぬぐ)う。

 そして一払(ひとはら)いすると、鞘に収めた。

 因みに別になにかで汚れているから(ぬぐ)っているのではない。

 なんとなく格好いいからやっているだけだ。

 そんないつもの所作(ルーティーン)をし終えると、再び殿(マスター)が気になった。


『『『! 最弱!』』』


 三獣士の叫び声が聞こえてくる。

 殿(マスター)のことは気になるが、聞こえてしまった叫び声も気になる。

 様子を伺うと、どうやら先ほど後れを取っていたものが、敵に捕まってしまったようだ。


『この程度の敵に捕まるなど、同じタイムとして恥ずかしいでありんす。何故かような者が四天王の末席におるのか……不思議でならぬでありんす』


 そもそも三獣士が付いていながらなにをやっているのか。

 気にはなるものの、三獣士の顔を立てて手出しは無用だ。

 三度(みたび)殿(マスター)へと意識を戻す。

 ちょうど最後のゴーレムを切り倒したところのようだ。


『なんと! 殿(マスター)の活躍を見逃してしまったでありんす。至極無念でありんす』


 余程のことなのか、膝を落として嘆いている。

 しかしそれも一時(いっとき)のこと。

 すぐに立ち上がると膝を払い、殿(マスター)の元へと歩み出した。

 だがそれも直ぐに終わる。

 床に固いものが落ちた音がすると同時に、三獣士の悲痛な叫び声が響いたからだ。

 彼女は反射的に、音のした方へと駆け出した。

四天王、サムライと来たら、次は……やっぱりタイムです

そして明らかになる

モナカの衝撃の事実!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ