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第57話 イノシシ再び

VRっぽいなにかです

でも作品表現的にはARなのです

 今後イノシシクラスを相手にするとなると、今の俺の能力では全く歯が立たないことが理解できた。

 小鬼(ゴブリン)をいくら増やしたところで、これ以上のレベルアップは望めない。

 模擬戦の限界ということだろうか。

 そんなことをタイムに話したら、しばらく待って欲しいと言われた。

 一体なにを……そう思ったのだが、タイムがいつもより早く携帯(スマホ)の中で眠りについていた。

 寝る子は育つとは言うけれど、肉体的な成長をしないタイムが寝て成長するのだろうか。

 そもそも携帯(スマホ)の中で寝るなんていつぶりだろう。

 少し()もることはあっても、寝るときは必ず一緒だったのに、だ。

 その日の夕飯は、久しぶりに静かな食卓となった。

 トレイシーさんは心配していたが、大丈夫だと納得してもらった。

 それでも、少し寂しそうな顔をしていた。

 翌日、エイルは溜まっている仕事に集中している。

 狩りは暫く休むことにするそうだ。

 狩りも大事だが、仕事も(ないがし)ろにできないからと言っていた。

 アニカは今日も精霊と(たわむ)れている。

 本人は精霊を従えようと頑張っているつもりらしいが……

 この半年間、精霊がアニカの言うことにまともに従ってくれたことはない。

 そんなのでよく契約が結べたものだと、逆に感心するくらいだ。

 タイムは未だ寝続けているので、模擬戦ができない。

 訓練においてもタイムにべったりだったことを、改めて認識させられた。

 仕方がないので基礎的な訓練だけに止めることにした。

 アプリ(新しい技)をインストールし、その動きをトレースする。

 きちんとできているかは〝刀修練〟さんが違和感で教えてくれる。

 助言はしてくれないが、間違いは的確に指摘してくれる頼もしい師匠だ。

 多分これが一番コスパのいいアプリだと思います。

 〝刀修練〟はもちろん〝片手剣修練〟の刀版で、アプリ制作者は同じ人だ。

 この人の修練シリーズに即効性はないが、身体に覚え込ませるには最適だと思う。


 タイムが日付をまたいで寝ている間にイノシシの解体が終わったと連絡があったので、エイルが引き取りに行った。

 牙と肉の一部を除き、残りはすべて買い取ってもらえることになった。

 食べられる肉はけっこう残っており、グズグズになった肉も肥料として使えるとのこと。

 毛皮も思っていたほど痛んではおらず、使える部分もあるという。

 無駄にならなくて良かった。

 折れていたとはいえ、あの牙は結構な額で引き取ってもらえたそうだ。

 本当は折れていないものも買い取りたかったらしい。

 しかしそれはエイルが(かたく)なに断った。

 当たり前だ。それが目的で狩ったのだから。

 イノシシ1匹の分け前で、今月の携帯代を払ってもまだ余裕があるくらいだ。

 次回アップグレードに向けて、貯金もできた。

 また狩りたいところだが、まともに狩れないし、なにより狩りすぎはよくない。

 金目的で狩るのは止めよう。


 結局タイムが目を覚ましたのは、その2日後だった。

 ずっと寝ていたはずなのに、もの凄くだるそうな顔をしている。

 まるで何日も貫徹していたかのような顔だ。


「あ、マシュター。おふぁようごじゃりまする……」

「お、おう……おはよう」


 生ける屍のようにベッドから這いつくばって動いている。

 怖いって。


「大丈夫か? 寝過ぎて体調が悪いとかか?」

「う゛ー、逆ですぅー……ぐぅ」


 あ、また寝た。

 何がしたいんだタイムは。

 と思ったらまた起きた。

 忙しい奴だな。


「はっ……寝落ちしちゃった。あ、マスター、おはようございます!」


 先ほどとは打って変わって元気に挨拶をしてくる。

 顔色も良く、とても艶々(つやつや)していた。

 ベッドから跳ね起き、敬礼をしている。

 その寝落ち? した瞬間でなにがあった。


「いや、さっき挨拶したよな」

「うみゅ? あ、マスター、模擬戦やろ、模擬戦(もぎせーん)!」

「模擬戦? 最近はやっていなかったからな。身体も動かしたいし、やろうか」

「うん!」


 ということで、今日は朝っぱらから模擬戦をすることにした。

 初めの頃はご近所さんに(いぶか)しげられることもあったが、今となっては気にもとめられなくなっていた。

 慣れって凄いな。

 俺も好奇の目で見られなくなってホッとしたものだ。

 そして久しぶりに小鬼(ゴブリン)と……ん?


「最初はタイムも加勢するね」


 よく見ると、後ろにサムライタイムが待機していた。

 だがちょっと待て。

 こんな話は聞いていないぞ。


「なあタイム……こいつってもしかして」

「へへ、タイムが頑張って再現したんだよ」


 それで最近携帯(スマホ)の中で寝ていたのか。

 ……寝ていたんだよな?

 ま、[NoImage]みたいに表示は自由なようだから、寝ているアイコンを表示させて、実際にはなにかをしているのかも知れない。

 そしてその成果がこれなのか。

 見た目は中々に忠実なのではなかろうか。

 俺たちの目の前には、先日対峙したゲンコウイノシシが立ち塞がっていた。

 今日からは小鬼(ゴブリン)ではなく、このイノシシが相手になった。


 初めて小鬼(ゴブリン)と戦ったときとは比べものにならないほど苦戦した。

 そもそも攻撃が通らない。

 鎧のような毛皮と皮膚に阻まれ、その内側まで刃が通らないのだ。

 打ち込む腕が痺れる。

 突進に反応が遅れてダメージを食らう。

 牙の一撃は逃れても、攻防一体の毛皮は厄介だ。

 結局、倒すどころか逆にこっちのHPが全損し、倒されてしまった。

 タイムがサポートに徹していたとはいえ、イノシシのHPはほぼノーダメージだった。

 ところが、力の差をかみしめる暇も無く、目の前に[ROUND 2]の文字が現れ、全損したHPが全回復していった。


「いやいやいや、ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「ん? どうしたのマスター?」

「なにこの[ROUND 2]の表示は! 連戦は無理だって」


 小鬼(ゴブリン)戦のときにこんな表示はなかった。

 妙なところに凝り始めたな。


「え、でもHPは全回復させたよ?」

HP(仮想生命力)回復されても、俺の体力が回復してないよ」

「なに言ってるの? 疲れたからって敵は待ってくれないよ」


 ぐ……タイムに正論を言われてしまった。


「それを言うなら、初戦でイノシシのご飯になってるわ! 頼むから死体に鞭打つなよ」

「あ、そっか。あははは」


 結局その日は全戦全敗で終わるのだった。

次回は前に立てたフラグを回収します

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