第45話 戦力増強
2では無いのだよ
2は次回です
家に戻り、アニカを休ませる。
俺とエイルはアニカの回復を待つことにした。
夕飯の頃には起き上がれるようになったので、食べてから話をすることにした。
「兄さんの雇った者で間違いがないでしょう」
「オオネズミも奴らの仕業なのか?」
「多分……」
「やっぱりアニカに精霊と契約させないことが目的なのか?」
「そうだね。ボクの邪魔をするのが兄の目的だろうから」
「だからアニカは狙われなかったってことか」
「え、そうなの?」
「ああ、狙われたのは俺とエイルとフブキだ」
「術者を直接狙えば早いけど、周りの魔力の流れを阻害することでも可能だからかもね」
対策としては、相手を無力化するか、アニカの魔力制御能力を上げるしかない。
後者は一朝一夕でできることではない。
となると前者なのだが。
「エイルはなんで反撃しなかったんだ?」
「うちの詠唱銃は殺傷力が高いのよ。人に撃てないのよ」
「正当防衛だからいいんじゃないか? 盾も持っているみたいだし」
「あんなの紙切れなのよ。簡単に貫通するのよ」
「フブキの体当たりを耐えたのにか」
「フブキも手加減してるのよ。どんな理由でのよ、人を殺したら殺処分対象になるのよ」
「なんだよそれ。自己防衛も許されないのか?!」
「そういう決まりなのよ」
つまり対人戦に限れば、フブキは戦力外ということになる。
エイルはエイルで反撃もできない。
こうなると打つ手無しか。
「媒体は辛うじて無事だったのですが、陣形成用の魔石は砕けてしまいました。そちらももう一度用意しないといけません。それに、同じことをやられたら、今度は媒体が無事とは限りません」
実質、次が最後のチャンスという訳か。
陣形成用の太陽石はエイルが出してくれることになった。
問題はどう対処するか。
奴らの攻撃を耐えるのでは意味がない。
そもそも攻撃されてはダメなのだ。
「仲間を増やすしかないよ」
突然タイムが意見を言い出した。
普段は定位置でのんびりしているのに、だ。
手数を増やす。それは援軍を求めるということか。
「増やすといっても、どうやって? 俺たちに傭兵を雇うような金はないぞ」
「タイムがなんとかする」
「なんとかって……タイムじゃ足止めすらできないだろ」
「マスター、携帯のアップグレードをして欲しいの」
「携帯の? 傭兵を雇うよりは安く済むだろうけど、それだって無理だろ」
「うにゅー……そうだよね」
「第一、それでどうするつもりなんだよ」
「タイムが4人に分かれれば、相手を押さえ込めると思うの」
「いやいや、タイムの軽さじゃ弾かれて終わりだろ」
「えっと、〝体重の重み〟ってアプリを使えば、重くできるって」
「それ、女の子としてどうなっ痛いから!」
エイルに頭を叩かれてしまった。
「デリカシーがないのよ」
「ぷぅー。マスターは後でお仕置きです」
「3日間フブキの散歩禁止なのよ」
「それはマジ勘弁してください! お願いします……お願い。それだけは……」
「でも痛いことには変わりないのよ。大丈夫なのよ?」
あ、ダメだこれ。
フブキ……フォーエバー。
「それも大丈夫。〝ペイン油蕎麦〟ってのを食べれば痛くなくなるって」
「タイムちゃん、ご飯食べられるのよ?!」
「本当のご飯じゃないから、ごめんなさい」
「あ……うちのよ、ごめんなのよ」
なにその〝ペイン油蕎麦〟って。
痛みがなくなる。麻酔?
いや、もしかして〝痛覚吸収〟のことか?
そういうアプリがあるってことかな。
「具体的にはどうするのよ」
「タイムは警戒されてないから、単純に上から落ちれば無防備なあいつらに一撃を食らわせられると思うの。運が良ければそれで無力化できるし、できなくてもそのままのし掛かれば、身動き取れないようにできるはずだよ」
「その大きさで大人1人抑えられるのよ?」
「大丈夫だと思うよ。ブラックホールは小さくても重いから」
物騒なことを言うな。
押さえるどころか、星を巻き込んで全てが終わるぞ。
「……分かったのよ」
分かるな!
とりあえず話は纏まったようである。
しかし一番の問題が残っていた。
「それなら、今日から暫くは狩って狩りまくって金稼ぎしないとな」
「お金でなんとかなるなら、ボクが出すよ」
「アニカが?」
「兄さんが先に手を出してきたんだ。慰謝料として兄さんの手切れ金から出せばいいよ」
「おいおい。手をつけないんじゃなかったのかよ」
「兄さんからの慰謝料だから、かまわないよ」
臨機応変というよりは、屁理屈ではなかろうか。
「多分結構な額になると思うぞ」
「どのくらいなんだい?」
どのくらい掛かるのか。
タイムの要求次第だが、前回が2万9000円だったのを考えると、それ以上ということだろう。
タイムに聞こうと思ったが、既にネットショップの買い物かごには必要な物が入っていて、合計金額も表示されていた。
その額は、倍どころか桁が違っていた。
4倍……いや、5倍いかないくらいか?
って、携帯買い換えた方が安くない?
できないけどさ。
「おいおい、これはいくらなんでも……」
「構わないよ。ボクのことで迷惑を掛けるんだし。幾らでも大丈夫だよ」
頼もしいことを言ってくれる。
とはいえ、エイルにまだ返せていないのに、アニカにまでというのはどうなんだろう。
借金が増える一方だ。
以前エイルにやったのと同じように、アニカの身分証に携帯をタッチさせる。
アニカはその金額を見て、「思ったより安いね」と呟いた。
あれで安いのか。
一体幾らお兄さんに渡されたんだろう。
「それじゃあ、ちょっとアップデートするか」
前回の失敗から、同じ轍を踏まないようにベッドに横になり、[確定]を押した。
そして前回同様、ここで意識が途絶えた。
次回タイムがまたでかくなります






