表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/100

第37話 男の子? 女の子?

ジェンダーがどうの……という話ではありません

ありませんが、そんな話です

 アニカの線は少し細い。

 もう少し肉付きをよくした方がいいだろう。

 思いっきり抱き寄せたら、折れてしまいそうだ。


「ひやっ!」


 アニカが女の子みたいな声を上げる。

 そんなに驚くようなことか?

 ちょっとしたスキンシップだろ。


「モナカ!?」

「マスター!?」

「どしたアニカ、なに固くなってるんだよ。もっと楽にしようぜ」

「は、はい!」

「ちょっ、マスター! なにやってんの?! はーなーれーてー」


 タイムが俺の腕を掴んで引き剥がそうとする。

 が、タイム程度の力でどうにかなるほど弱くない。

 小鬼(ゴブリン)様々である。

 それでもぐいぐいと腕を引っ張るタイム。

 なんでそんなに向きになるんだ?


「なんだタイム、アニカにヤキモチか? あっははははったい! なにすんだよ!」


 エイルが思いっきり頭をひっぱたいてきた。

 え……なんでタイムもエイルもそんな怖い顔しているの??


「モナカ、いきなり女の子の肩を抱くのよ、なに考えてるのよ」

「なにって、スキン……? なんだって?」


 今なんで言った?

 聞き間違えでなければ〝女の子〟って言ったか?


「……誰が女の子だっ痛っ」


 再び頭をひっぱたかれた。

 え?

 女の子?

 アニカが?

 アニカの顔をじっと見つめる。


「ボク……男の子っぽいでしょうか!」

「え?」


 アニカはすごくいい笑顔で、見つめ返してくる。

 だって自分のことボクって言っているし、着ていた服も男の子っぽかったし。、髪の毛めっちゃ短いし。

 今までだっていつもズボンはいてたし。

 そりゃ女の子だってズボンははくだろうけどさ。

 ズボン=男、スカート=女の子って普通は思うだろ。

 本当に女の子?

 それを確かめたかったわけじゃない。

 あまりのことに気が抜けて、組んでいた腕の力が抜けただけなんだ。

 だから手がぶらんと胸の前に垂れ下がったのは、ただの偶然なんだ。

 だが、端から見たら故意に触ったようにしか見えないだろう。

 だが断言しよう! 触るつもりは断じてなかった。

 なかったが、柔らかい感触が皮膚を伝って脳を刺激してくる。

 これは……男の胸にしては柔らかい。

 太っているというわけではないから、そういう膨らみではないのは確かだ。

 ということは、だ。

 ……そういうことか?!


「すまん! 別に触るつもりがあったわけじゃない」


 アニカからぱっと離れて床に飛び降り、土下座をする。


「マスター、なにやってんですかっ! タイムだってまだ触らせてないのに、なんでアニカさんのを先に触ってるんですかっ」


 タイムはタイムで意味不明なことを言いながら、頭をポカポカと叩いてくる。


「いっぺん、死んでみるのよ?」


 エイルが頭をぐりぐりと踏みつけてくる。

 悪いが俺にそういう趣味はないぞ。

 そして鼻が痛い。


「いえ、その。別に気にしていませんから。大丈夫です」

「大丈夫じゃないのよ。女の子の胸を許可なく触るのよ、大罪なのよ」

「女の子の方から押しつけてくるのは大罪じゃないんですか?! エイル、いつもシャワーの時押しつけてきますよね!」


 シャワーのお湯がかかる範囲はとても狭い。

 エイルの周りよりちょっと広い程度だ。

 だから体をお湯で流すときは、ピタリと体を寄せないと流せない。

 相合い傘で体を寄せ合う……というよりは、もう完全に抱きついていると言った方が的確だ。


「寄らなきゃ流せないのよ。不可抗力なのよ。男なら泣いて喜ぶのよ」


 それは否定できない。

 できないが、泣くほどのことか?

 とは口に出しては言えなかった。


「今のも不可抗力です!」

「言い訳は受け付けてないのよ」


 こういうとき、どうして男は立場が弱いのだろう。

 男のモノを女の子が触った場合も、男が悪者にされている。

 常に女性上位だ。

 男尊女卑? そんなモノ、過去の遺物でしかない。

 今や女尊男卑の時代なのだ。


「モナカさんとエイルさんは、一緒にシャワーを浴びているのですか?」


 ついに来た、その質問。

 はいその通りで御座います。


「モナカは魔力がないのよ」

「それは何度も聞きましたが……」

「アニカは世間知らずなのよ?」

「いえ、お風呂にすれば一緒に入る必要がないのでは?」


 そう! その通りだ!

 しかしエイルの家はシャワーしかない。

 だからその提案は無理なのだ。

 湯船を増設してください、なんて言えない。


「うちに湯船なんて無いのよ」

「そうですか……エイルさんとモナカさんはそういう関係なのですか?」


 不意に頭を押さえつけている圧力がなくなる。

 頭を上げると、エイルは椅子に座り直していた。


「そんなわけないのよ」


 そっぽを向いて答える。

 この手の話も甥っ子は訓練してくれなかったようだ。

 普段見られないようなエイルが顔を覗かせている。


「モナカのよ……えっと……のよ……ただの検体なのよ」

「検体……ですか?」

「そうなのよただの異世界人サンプルなのよだから毎日の健康状態のよ身体変化のよ直接確認するのよモナカは陣測定できないのよ」


 一気に捲し立てるエイル。

 普段のような余裕があまり感じられない。

 やはり甥っ子学習塾も完璧ではなかったようだ。

 ちょっと安心した。


「ならボクが代わりにやりましょうか?」

「……はあ?!」

「アニカさん?!」

「な、なにを言ってるのよ?」


 なんなんだ。

 ここには痴女しかいないのか?


「おまっ、なんでそういう話になる」

「モナカさん……いえ、モナカくん。ボクは男の子なんだよね。なら、女の子のエイルさんより、適任だと思うんだけど……違うのかい?」


 確かにアニカが本当に男ならそうなんだけど。

 と言うか、なんかキャラ変わってない?


「いや、アニカは女の子だろ!」

「へー、モナカくんは女の子の胸を触ってただで済むと思っているのかい?」


 ぐっ、痛いところを突きやがる。


「それは……ホント、すみませんでした」


 再び土下座をする。


「謝らなくていいよ。ボクは気にしていないから。それに、ボクは一度でも自分が女の子だなんて言ったこと、あったかい?」

「……言ってなかったと思います」

「そうだね、ボクも記憶にないや。2人がそう言ってるだけだよね」


 え?

 じゃあ、アニカは女の子じゃなくて男……なのか?

 それに兄を差し置いて家督を継がせようなんて話もしてたし。

 それを聞いたら普通女の子じゃなくて男って思っても、不思議はないよね。


「アニカはどう見ても女の子なのよ!」

「そうです。アニカさんは可愛い女の子です!」


 アニカはそう言われると、ちょっと寂しそうな顔になった。

 そしてベッドから立ち上がると、俺の前に座り込む。

 それから俺の手を取ると、自分の胸にそっと押し当てた。


「なにをしてるのよ!」

「アニカさん?!」


 柔らかい胸の感触が手のひら全体に広がっている。

 反射的に手を引っ込めるも、その柔らかな感触はいつまでも脳裏に残っていた。


「あん、ボクとモナカくんは友達なんだから、気にしなくてもいいのに」

「友達でも気にします! アニカさん、もう勘弁してください」

「酷い! 〝アニカさん〟だなんて、他人行儀じゃないで……他人行儀じゃないか。今まで通り、〝アニカ〟って呼んでよ」

「う……その、アニカ……は女の子なんだよな」


 そう聞くと、再び寂しそうな顔をした。


「一応そういうことになってるね。こんな身体……」


 なんだその曖昧な返事は。

 アニカは自分の身体に不満があるのだろうか。

 女の子じゃなくて男に生まれたかったとか?


「うん、でもこれ以上友達を困らせるのはよくないね。だからこの話はこれでお終い。ボクもモナカくんも、今まで通りでいこうよ」


 アニカは女の子じゃなくて男として扱われたいのかな。

 女装男子って訳じゃないし、かといって男装女子というわけでもなさそうだ。


「……わかったよ」


 アニカが締めくくろうとするも、エイルとタイムが納得していないようだ。

 それでも、本人が気にしていないと言う以上、これ以上は話を混ぜっ返すだけなので、押し黙っているといった感じだ。

どっちだと思いますか?

正解は……越後製菓です

次回はお金の稼ぎ方です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ