7話 村の人たち
「あ!見えた!」
黒い髪に羽が生えた少女、ミカヅキがそう話す。
「おぉ〜!村で〜す!」
テンションの高いサチミチは、どこか浮足だっていた。
「見ればわかるよ…」
そして。80歳のゲームプレイヤーの私は、先も分からない不安な旅に、テンションが下がっていた。
「ようこそ!僕たちの村へ!」
私たちが辿り着いたのは、決して裕福とは言えない、寂れた村だった。
*********
「ただ今!みんな!」
ミカヅキがそう言った。
しかし、言葉は返ってこない。
「あれ?ただ今ー!!」
ミカヅキが不思議そうに叫んでも、固く閉ざされた扉が開くことは無かった。
「おっかしいなぁ」
「ここは本当にミカヅキの村なのか?」
「あぁ!絶対そうだよ!」
「皆、忘れちゃったんじゃないですか〜?」
「そんな訳ないだろ!つい最近までこの村にいたんだ!」
ミカヅキがサチミチを、ぽかぽか叩く。
ギィ…
すると、1つの扉が開いた。
「○<+*$#…!」
聞きなれない言葉を発しながら、若い男が出てきた。
ミカヅキと同じように背中から羽が生えている。
「あれ?知らない顔だね!この村で暮らしてたミカヅキだよ!」
「……¥÷=^」
男が何かを言うと、ミカヅキは目を見開き
「何言ってるんだよ!覚えてないのか!?」
と怒った。しかし男は首を横に振った。
「そ、そんな……」
ミカヅキはその場で崩れ落ち、地面に手をついた。
「い、一体どうしたんだ?ミカヅキ」
私が声をかけるとミカヅキは
「僕のこと、覚えてないって…」
張り詰めた顔でそう言った。
次第に扉が次々と開かれ、老若男女さまざまな人たちが出てきた。
「$×<|*!!」「○*!」「#$×<*!!!」
彼らは口々にそう叫び始めた。
「……!逃げて!」
「どうしてですか?」
「僕たちのことを、捕まえる…!殺すって!」
「なんですって!?」
彼らはみな、くわや包丁などを持ちじりじりと近づいてきた。
ミカヅキは顔を下に向いたまま
「ここは、僕が囮になる…!」
と言い出した。
「…!そんなことを言うんじゃない!」
「そうですよー!絶対にできません!」
「いいから!僕は絶対にこの村の出身だ…!
だから大丈夫!それに…」
ミカヅキは顔を上げた。
「今度は僕が…リンカを助ける番だ!」
そう言って私を見た。
私は、小さな少女の覚悟の決まった姿を見て心を揺さぶられた。
「ミカヅキ、わしらのためにありがとう」
そう言ってミカヅキを優しく撫でた。
「じゃが…わしはこれでも年寄りじゃ」
「ここで逃げても、後が少ないんでな」
私は前を向く。
「お前の気持ちを胸に、最後まで歩こうじゃないか」
「リンカ…」
冷や汗をかきながら、ミカヅキの体を優しく起こす。
「燃えてきました〜!リンカの言葉で私も震えています…。絶対に…生き残りましょう!」
サチミチは、そう言ってミカヅキに笑った。
「サチミチまで…」
ミカヅキは、上を向いて溢れでる水をこぼさないように
「ありがとう…!」
と言った。
「僕たちだって殺されるわけには行かないんだ!」
ミカヅキは前を向いた。
「あなたたちが攻撃するなら、僕たちは争うよ!」
「→$€*!」「・×=:!」「$×<!!」
村の人たちは目が血走り、今にも襲いかかってくるようだ。
「/$=×+!!!」
一人のかけ声で、村人たちが走り出した。
「待て…」
その時、一番奥の建物があるから低い女の声が響いた。
その一言で、村人たちは足を止めた。
ゆっくりと建物から出てきたのは羽の生えたおばあさんだった。
「懐かしい声が聞こえた…と、思ったら…」
震える声でおばあさんは話す。
「あなたなのよね…?ツキちゃん…!」
おばあさんは目に涙を浮かべ、ミカヅキを抱きしめた。
「………!」
ミカヅキは戸惑っていたが、思い出したかのように呟いた。
「…ユキ…ちゃん…?」
ミカヅキの言葉におばあさんは優しく頷いた。
遅くなっております!