5話 異門
「ん…んむぅ…もう朝か」
私はサコッタ平原の木に囲まれた場所で目を覚ます。
「よく寝たのぉ」
隣を見ると、小さな鴉が私の足に寄り添いながら眠っていた。
「可愛いの…」
私は鴉の頭をそっと撫でた。
「カ、カァ?」
おっと、鴉は起きてしまったようだ。
「ほっほっほ、起こしてしまったかな?」
「カァ!!」
鴉は元気よく鳴いた。
「怪我の具合は…」
私は鴉の足を見ると、火傷の腫れが収まっていた。
「大丈夫そうじゃな!よっこいしょ…」
私は腰を上げて、鴉に手を振りバイサクラへと戻るのであった。
*********
「う、うーむ…」
「カァ!」
どうも、絶賛VRMMOにはまっています。
梅野林蔵、キャラクターネーム「リンカ」です。
今はバイサクラという街に帰ってきたのですが、
「カァ!」
小さな鴉に懐かれてしまいました。
親元に戻らせた方がいいとは分かっているものの、親の居場所は分かるわけが無く。
私は、小さな鴉と共に旅をする事にしました。
いずれ親元に返すと誓って。
道を歩いていると、見知った顔を見かけた。
「やぁサチミチ」
「あ…ハーイ!リンカ!」
サチミチは、笑顔で手を振った。
*********
「へぇ〜、それでこの子を拾ったんだね」
「うむ、いつか親に返してやりたいものだが」
サチミチは小さな鴉を撫でている。
「この子の名前は?」
「ん〜、愛着が湧いてしまいそうで…決めてないのぉ」
すると、サチミチは腕を組み考え始めた。
「それなら!ブラくんなんてどうかな?」
「むぅ、な〜んか違う気がするのぉ」
「む、そうかな。いいと思ったんだけど」
そう言って、また考え込むサチミチ
「リンカは何かいいアイデア無いの?」
私は鴉を見て考えた。
言いやすくて、この子に会った名前…
「ミカヅキなんてどうかな?」
「どういう事?」
「ほら…昨日、三日月だったしこの世界にも合ってるかなと…」
「ミカヅキ…うん!美しい名前だ!」
「カァ!」
小さな鴉も、心なしか嬉しそうに鳴いている。
「よぉし…!」
私は鴉を抱え上げた。
「ミカヅキ…よろしく頼むぞ」
「カァ!」
ミカヅキが元気よく鳴いた時、異変は起こった。
私は急に体が重くなり、地面に手をついた。
ミカヅキも苦しそうに鳴いていて、サチミチが必死に手を伸ばす。
視界が揺らぎ、まるで世界が割れるような感覚に襲われる。
薄れゆく中で私が見たもの、それは…
「異界へと繋がる禍々しいオーラを纏う門だった」
私たちは、この門を後に「異門」と呼ぶ事になる。