4話 鴉
「色々とありがとうございます」
「さらばじゃ、ほっほっほ」
私、リンカは釣りをして仲良くなったご老人に手を振っている。
ご老人も振り向いて笑顔で答えてくれた。
「優しいお爺さんだったなぁ」
心暖まる出会いに感謝だ。
もうすっかり日が沈んでしまった。
私は、地図を見ながら宿泊できる場所を探すことにした。
*********
「うーん、中々だな…」
宿を探し続けて1時間くらい経った気がする。
初心者の私には、宿の代金が高すぎた。
「まぁ、ゲームをやめればいいんだけど」
気付いた時にはサコッタ平原に続く門まで来ていた。
これ以上探しても宿は見つかりそうに無い。
「こうなってしまったらやめるかの…ん?」
サコッタ平原の方から、何かの鳴き声が聞こえた。
一体何だろう。
私は好奇心のままにサコッタ平原へと向かった。
鳴き声のする方向に向かう。
だんだんと鳴き声がはっきり聞こえてくる。
小さな鳥のような、悲鳴のような鳴き声が。
木々がいくらか生えている場所について、草木をかき分けた。すると…
「カァ…」
うつぶせに倒れている小さな鴉を見つけた。
涙を浮かべているゆうにも見える。
「お、おい…大丈夫か?」
私が声をかけても気づいた様子は無い。
「ちょっと見せてくだされ…」
私は小さな鴉を少しだけ動かした。
鴉の足は火傷していた。それも相当に。
鴉は驚くような様子で私を見ていた。
「大丈夫じゃ、私に任せなさい」
私は急いでバイサクラへと向かった。
*********
「すいません…包帯などはありませんか?」
「包帯?ポーションならあるよ。どんな傷も治す優れもので…」
「それをください!」
私は薬屋で「ポーション」なるものを買った。
そして急ぎ小さな鴉の元へと戻る。
「カァ…」
草木をかき分けると、小さな鴉が苦しんでいた。
「安心せい、『ポーション』じゃ」
私はポーションを傷口に塗った。
「カァ!カァ!」
「大丈夫じゃ、次期良くなるはず…」
そう言って小さな鴉の頭をそっと撫でる。
すると、鳴くのをやめて大人しくなってくれた。
ポーションを塗り終えると、火傷で出来た傷が治っていく。
「これは、すごいのぉ」
小さな鴉もだいぶ良くなったようなので
「今日はここで眠るかな…」
私は草木の中、小さな鴉と一緒に、眠りについた。
*********
小さな鴉の物語
僕は鴉、名前はまだない。
僕は最近優しそうな人たちに育てられていた。
そしてその人たちと共に旅をしている。
どうやら、この人たちはとても強いようだ。
たくさんのモンスターから、僕を守ってくれる。
僕は、その中でもリーダーのような男に、憧れていた。
そして1カ月ほど経った時
僕はリーダーの男と、原っぱに向かった。
「今日は皆と一緒じゃないの?」
僕はリーダーに聞いてみた。
すると…
「うるせぇな…!耳障りだ!」
そう言って僕を投げ捨てた。
何が起こっているのか分からない。
「なんで、なんでそんな事言うの!?」
「炎球…」
リーダーは、僕に向かって攻撃をした。
「お前がノロマだからいけねぇんだよ。…チッ!
使えるかと思ったのに」
そう言って、僕に見向きもせず行ってしまった。
それから、随分時間が経った。
夜が何回も来た気がする。
「お腹が空いた、喉が渇いた」
そう言ったところで誰も来てはくれない。
僕は、怒り、悲しい、寂しいという感情に飲まれそうだった。
すると、遠くの方から足音が聞こえた。
足音はだんだんと近くなり、草木の間から、一人の若い男が顔を出した。
「助けて…」
必死にそう言った。
すると男は、なにやらお爺さんみたいな話し方で走り去っていった。
程なくして、先程の男が瓶に入った液体を持って帰ってきた。
男はそれを塗って、僕を撫でてくれた。
「大丈夫じゃ」
その声を聞くだけで、苦しく締め付けられていた心がほぐれるように緩んでいった。
薬を塗り終えた男は、疲れているのか横になって眠ってしまった。
「ありがとう…」
僕は寄り添いながらそう言って、眠りについた。