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3話 夕焼け

ブックマークや評価ありがとうございます!

これからもまったり書いていきます(^^)

「よぉーし、今日もやっていくかの」


ごついヘルメットの機械を被りVRMMO、ゲームの世界へとダイブする。

今日は何をして遊ぼうか。私の心は少年に戻ったようにワクワクとしていた。






*********






キャラクター「リンカ」を選択して目を瞑った。

次に目を開けた時、昨日ゲームを終えた時点に私はいた。


「慣れたもんよ…」


格好をつけて歩き出す。

私はこの世界にいる時、心から楽しむために若さを意識して話す。せっかく若い姿だしね。

そこそこ広い道を歩いていると、視界の右上にマークが表示されていた。

私はマークを押してみた。


〜この世界のクエストについて〜


この世界のクエストは普通ありません。

自由に世界を歩き回るもよし、戦いで己の力を磨くのもよし、

ゆったりと釣り、農業、建築、経営を楽しむのもよし。

全ては自由なのです!



と書かれていた。

その中でも私は最後の行が気になった。


「釣り、かぁ」


実を言うと私は釣りをした事がない。

近くに海はあるのだが、釣りをする機会も、教えてくれる人もいないのだ。

しかし、ここはゲーム。

親切な人もたくさんいるし始めるきっかけには最高かもしれない。


「やってみよう!」


私は釣り人になる決心をした。






*********






「はい、2次職業の選択ですね!こちらのシートにご自身の名前と就きたい職業をお書きください!」


ギルドの受付の男性にシートを渡されて、私は「リンカ.釣り人」と書いた。

私は紙を受付に渡すと


「こちらが釣り人の装備になります!」


「ありがとうございます!」


装備を受け取り自動装備をした。

すると、先程の衣装とは変わって肌触りが良く、涼しげな服装になった。前につばのある帽子が特徴的だ。


「では、良い旅を!」


受付の人と別れて、私はギルドを後にした。






*********






この前もらった地図を見ると、この街バイサクラにも釣り場があるそうだった。

ギルドからも近かったので、私は釣り場に向かった。



釣り場に到着すると、まず景色に目を奪われた。

釣り場は巨大な滝壺だったのだ。

バイサクラの街を囲むようにそびえる大きな岩場から水が流れ落ちている。

滝壺の左右に植わっている桜と梅の花ビラが散っていて、とても綺麗だった。


しばらく景色を眺めていた私は、ようやく釣りを開始した。

餌(小麦の団子のようなもの)を釣り針につけ、勢いよく投げ込む。

私は釣竿を持って景色を眺めていた。

時間が経って釣竿を上げると餌が無くなっていた。


「ぐぬぬ…」


景色に目を取られて餌を取られてしまったようだ。


「調子はどうですかな」


横から誰かに話しかけられた。私のそばには白髪でしわしわのお爺さんが腰を下ろそうとしていた。


「いやぁ、全然だめですな」


「ほっほっほ、釣りはそんなもんさ」


お爺さんも笑い、釣りを始めた。

お爺さんの釣竿は決して高そうではないが、使い古されていてまさに仙人の釣竿という感じだった。

私も、餌を付けなおし釣りを再開した。



2人で景色を眺めながらゆっくりと時間が過ぎてゆく。お爺さんは鞄に手を突っ込みごそごそと何かを取り出した。


「これ、食うかの?」


そう言って丸いパンのようなものを差し出した。


「いいのですか?」


私が聞くと、お爺さんはパンを私の手に握らせてくれた。


「ありがとう…お爺さん」


まぁ、私もお爺さんなのだが…。

お爺さんはコクリと頷き、景色を眺め始めた。

それから「まったりでいいの」「本当にのぉ」と話しながら2人は過ごしたのだった。






*********






それから、だいぶ時間が経ったが、2人して1匹も釣れなかった。


「今日はこんなところかの」


お爺さんはそう言った。


「うーむ、釣れなかった…」


「ほっほ、そんな日もある」


私たちは釣りをやめた。


「景色が綺麗だったし、十分楽しめましたよ」


「それは良かった、ふむ今なら…」


お爺さんは顎に手を当てる仕草をして、


「あんた、名前は?」


「リンカと申します」


「そうか…ならリンカさん、私の側に来てくれないか?」


お爺さんはそう言って手招きをした。

私が側に寄ると、


「来い、魚白(うおしろ)!」


とお爺さんが言った。次の瞬間、湖がぶくぶくと泡を立て始めた。


「な、なにごとじゃ!」


「まぁこっちに来なさい」


お爺さんは私を掴み滝壺へと放り投げた。

どこにそんな力があるんだと思いながら私は飛んでいく。


「う、うわあああ!!!」


そしてお爺さんは湖に飛び込んだ。

もう意味が分からない。

怪しげな泡も勢いを増していく。

そしてついに泡から!

巨大な白い魚と、その頭に乗った。お爺さんが飛び出した。


「えええええ!!??」


私は叫びながら魚の背に乗った。

そして魚は、滝を駆け上がっていく。

まさに滝登りだ。


「ほっほっほ、付き合わせてすまんな。上からの景色も見せてやりたくての」


お爺さんはそう言って笑った。






*********






「ありがとうの、魚白」


「ハァ…ハァ…」


滝の上に到着したようだ。


「悪かった悪かった、バイサクラを見てごらんよ」


お爺さんはそう言った。


「死ぬかと思ったわい」


私は振り返ってみた。


するとそこには…


この世と思えないほどの「美しさ」があった。

夕焼けの空、沈んでいく、太陽、池、街、花など、全てが私の心に感動をもたらし気づけば私

は涙を流していた。


「ほっほ、気に入ってもらえたようじゃの」


「こんな景色…見たことが無い…」


私はこれまで景色で感動し、涙を流したことがあっただろうか。

きっと始めての事だろう。

この世界に来て良かった。

私は心からそう思った。











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