第二十四話 銀閣寺よ私は還ってきたー(2)
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舎利寺の戦いの報を受けて管領代六角定頼と、政所執事伊勢貞孝を中心とする交渉はまとまった。
その結果、六角定頼の重臣が公方様をお迎えにあがる事になった。
公方様と大御所様は奉公衆に守られながら、六角軍に迎えられ慈照寺へと向かうことになる。
結局のところ公方様と大御所様の体面を守りつつも、北白川城は無血開城することになり、北白川城は六角軍に接収されることになった。
城を焼いて坂本に落ちることを考えればよっぽどマシではある。
奉公衆も皆好き好んで坂本へ落ちることなど望んではいなかった。
細川晴元も公方様や大御所様が在京することを望んでいる。
六角定頼も幕政の安定を望んでいるし、伊勢貞孝も幕府が京にあることを望んでいる。
公方様も慈照寺に戻れることを素直に喜んでいる。
結局、誰もが望む結果となったのである……へそを曲げている大御所を除けばではあるが。
慈照寺に入った公方様は常御所で、細川晴元と六角定頼との御対面の儀を行った。
細川晴元も正式に足利義藤公を第13代の室町殿と認め、臣下の礼を取ったのである。
一連の儀を差配したのは伊勢貞孝であった。
大御所は晴元と定頼の両者にまだ会おうとはしなかった。
大御所の勘気が収まるにはいま少し時が必要なようである。
それは晴元も定頼も分かっているようであり、貞孝も心得ていたため特に問題とはならなかった。
実態はともかくとして幕府としての儀式に関わる形式的な主は公方様であり、大御所様ではないのだ。
だが実態としてもこの頃から大御所による側近政治から、本来のあるべき形である公方様を立てた政所主体の政務へと徐々に移行していくことになる。
それは政所執事である伊勢貞孝の権勢が強まることに繋がっていく。
これまでは本来政所の管轄である訴訟などの御沙汰にも大御所の側近である内談衆や大御所の後ろ楯であった六角定頼、それに大御所の身内である近衛家の意向などが反映されていたのだ。
だが政所執事の台頭により幕府の行政から、内談衆や六角定頼の影響力は少なくなっていく。
大御所はこれまで以上に伊勢貞孝に政務を任せることが多くなっていった。
やるべきことを終わらせてやっと落ち着いた公方様と俺たちは東求堂に向かった。
北白川城に篭城してからすでに4ヶ月弱が過ぎていた。
久しぶりに帰った東求堂から懐かしき銀閣寺を眺めた俺は思わず叫ぶのである。
「銀閣寺よ私は帰って来たぁぁぁぁ!」
「突然なんだ藤孝、びっくりするではないか」
「相変わらずおかしな奴だろ」
「なぜか帰ってきたらコレをやらなきゃいけないような気がしまして」(安心してください国宝にアトミックバズーカはぶっ放しません)
「それに前にも聞いたがギンカクジとはなんのことだ?」
「すいません、何でもありません。忘れて下さい」そういえば銀閣寺は江戸時代になってからそう呼ばれ出したことをまた忘れていた。
「まあよい。それよりやっと帰ってこれたな」公方様も嬉しそうである。
「はい。まるで我が家のような懐かしさまで感じます」
「そうだな。別にわしはここで生まれ育ったわけではないのだが不思議なものだ。さて落ち着いたところで早速だが、藤孝……美味しい物はまだなのか?」
「そうだろ、早く出すだろ」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい。私も義藤さまと同じく篭城していて、今帰って来たばかりですぞ。青い狸じゃあるまいし、そんなにすぐに美味しいものを用意できるわけがないじゃありませんか」
「青い狸とは何のことじゃ? どうでもよいが、ないなら今すぐ美味しいものを作ってくるがよいぞ」
「そうだ早く作るだろ、俺の筋肉も美味しいものを求めているだろ」
「こいつら鬼だ……誰か俺に四次元ポケットかドコにでもいけるドアをくれ」
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【銀閣寺よ私は還ってきたー(3)に続く】
短めで申し訳なく。でもやっと篭城が終わって
好き勝手できるぞー
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