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第二十三話 室町殿とは(2)

 ◆


 その意気消沈する大御所に垂直落下式(すいちょくらっかしき)()()()()()()()()()びせる(やから)忽然(こつぜん)と現れた。

 言うまでもなく愛すべき我が(あるじ)である。


「父上、六郎殿(ろくろうどの)(細川晴元の仮名)に降伏いたしますか?」


「こ、降伏じゃとお! 馬鹿を申すでない! 菊童丸(きくどうまる)! お主は武家の棟梁たる気概(きがい)を忘れたのかぁあ!」大御所が臣下の前であることを忘れ、我が息子? を一喝(いっかつ)した。(菊童丸は義藤の幼名)


「父上。まだ元気はお有りの様ですな。安心しました」公方様は平然として父である大御所に笑顔を返したのである。


 大御所の側近衆はおろおろしている。

 だが、大御所は愛すべき我が子の笑顔を見てその怒りをすぐに収めたのであった。

 父を気遣(きづか)う子の気持ちに気づいたのであろう。

 めちゃくちゃ無茶なやり方ではあったのだが、公方様の思いは大御所様へ届いたようである。


「降伏などはもってのほかである……が、この状況をいかに乗り切るか意見のある者があれば申してみよ。どのような意見でも構わぬ。皆のものの知恵を借りたい」


 大御所が冷静さを取り戻し、かつ臣下の皆に意見具申を求めたのである。


「事ここに至っては()む無しと存じます。捲土重来(けんどちょうらい)を期すため、坂本に落ちることなども検討しては如何(いかが)かと愚考(ぐこう)いたします」穏健派(おんけんは)大館晴光(おおだてはるみつ)殿が殊勝(しゅしょう)にも先陣を切って意見を()べる。


「だが追撃を受けるやもしれぬ。安全に逃げ――、いや坂本まで安全にお移りすることができますかな」


「安全こそが第一でおじゃるぞ」


殿(しんがり)はわたくしめにお任せ下され、一歩も敵は近づけさせぬわ」


「城を焼き払い、その隙に坂本へ落ち延びましょう」


「だが、坂本は六角定頼の影響下にありまするぞ、危険ではありませんかな」


「管領代殿は長年大御所様を支えて参りました、大御所様のお命を奪おうとすることまではいたすまい」


「だが、やはり危険ではありませんかな」


「それでは、我が朽木(くつき)領へと落ち()びるのは如何(いかが)でござりますかな?」


 頭こそ下げてはいないが、大御所の想いはここに集まる臣下に届いたようだ。

 側近の者共(ものども)が意見を活発に()わし始める。

 軍議が正常に回り出したのだ。罵詈雑言(ばりぞうごん)が飛び交うアホみたいな軍議や、皆が黙り込むような無駄な時間を過ごすよりはよっぽど良い。

 まともな軍議になり俺は少し安心していた。

 幕府もまだ捨てたものではないと感心すらもした。

 というかお前らまともにできるなら最初からやれよと心の中で突っ込まずにはいられなかったが。


 だがそんな安心する俺に向かって、またもや愛すべき我が主から()()()()()()()()ばりの()()()()()()()()()()()()が飛んでくる。


「藤孝。そなた何か意見があると申しておったな。遠慮(えんりょ)はいらぬお主の意見を聞かせてもらおう」


 公方様の発言により、議論が一時ストップし、皆の注目が名指しされた俺へと向かう。

 我が主よ俺の胃を破壊するような行為は少し(つつし)んでくれ、と内心では思ったのだが、思うところは大いにあるので(あきら)めて発言をすることにする。


「坂本や朽木に逃げるのは、公方様の威厳(いげん)(そこ)なうものと考えます。ここは管領代や右京兆(うけいちょう)殿に詰問(きつもん)の使者を送るべきかと存じます」


「詰問の使者とはどのようなことであるか?」義藤さまがさらに話を(うなが)す。


「大御所様や公方様は洛中に細川国慶(くによし)の軍が乱入し、()()()()()この北白川の城に自衛の為に篭城したに過ぎませぬ。右京兆殿には洛中を放棄し公方様が避難せざるを得ない危険な状況に追い込んだ責を問いましょう。また管領代には早期に洛中の治安を回復し、公方様の安全を確保するようお命じになれば良いのです」


 皆のものがポカーンとした顔をしている。

 俺の言った意味がもしかしたら分かっていないのかも知れない。

 ようするに俺は、細川氏綱と大御所様が連絡を取り合い、細川晴元に対し挙兵したことなど、『無かったこと』にしろと言っているのである。


 都合の悪いことは忘れて、思いっきり『開き直れ』ということだ。

 大御所様は確かに細川晴元との戦には負けたかもしれない。

 だが、その(いくさ)自体を無かったことにすればよいのである。


 将棋(しょうぎ)盤面(ばんめん)が不利になって勝ち目が無くなったらどうすれば良い? 普通は投了(とうりょう)して降参するのであるが、ちょっと待って欲しい。

 他にも手はあるのだ。かなり強引ではあるのだが将棋盤(しょうぎばん)ごとひっくり返して()()()()()()にすれば良いとは思わないか? 実に簡単なことだろう?

(友達をなくすので実際に将棋でそれをやることはお勧めしません)


 室町幕府の将軍というものは、実は『そういうこと』を平気でやってきた一族なのである。

 何を今更遠慮することがあるのだ? 室町殿(むろまちどの)の必殺技である『ちゃぶ台返(だいがえ)し』をここでも()()()()やればいいのである。


 つまらぬ意地を持たねば、室町殿とはそういうことができるのだ。

 それは歴史が証明している。

 六角定頼の軍勢が上洛してからの数日間、俺は義藤さまに室町幕府の歴史を()()()()と説明し、この状況を打開する策である室町幕府のお家芸「()()()()()()」を伝授していたのである。


 ◆

【室町殿とは(3)へ続く】

皆様ハゲましありがとうゴザイマス。

細かいことはいろいろ考えずに書きなぐってまいります。


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[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 毛が抜けると更新が進むのかな? (・∀・)つバリカン
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