第八十三話 勝軍山城の戦い(1)
天文十九年(1550年)11月
細川晴元の敗走の2日後、三好軍が鴨川を渡って勝軍山城に押し寄せた。
三好長慶も楽南の吉祥院城から相国寺に本陣を移しているらしいので結構本気で来たのかもしれない。三好軍の主力は白川村から大手門へ進軍して来ているようだ。
「敵兵は2万以上です。これは本格的に城攻めを行ってくるに違いありません。私は大手門にて迎撃の指揮を執ります」
「藤孝、わしも大手門へ行くぞ。わしが行って兵の士気をあげることも大事であろう」
「危ないからダメです」
「安全な本丸に隠れていてなにが将軍だ。わしは行くぞ。お主が断るというなら指揮権を剥奪するまでのこと。大手門の指揮はわし自らが執るぞ。そなたは本丸で大人しく待っているか搦め手でも守っているがよい」
搦め手も重要であるが、まだ敵は寄せて来ていないのだ。今は大手門こそが大事だ。
「うーん、ではこの鎧を着用ください」
「なんだその変な具足は?」
「三条の釜座に無理を言って作らせた特注の南蛮胴、名付けてコンバットスーツです」
「こんばっとすーつ?」
「これは鉄板を組み合わせた具足で、流線型状を取り入れた最新の防弾鎧なのであります。このコンバットスーツを着てくれるなら安心ですので義藤さまが大手門へ来ることに反対はいたしません」
ちなみに全身シルバーでまるでどこかの宇宙刑事のようにカッコいいぞ。南蛮胴とか流行るのはもう少し後だと思うが気にするな。
「わかった、それを着て来れば文句は無いのだな」
「特殊な鎧なので私が着せないとダメなのです。ではさっそく着替えましょう」
「ま、まて、そなたが着せるとか、は、恥ずかしいではないか……」
「よいではないかー、よいではないかー」
「やーめーれー」
だが問答無用で役得とばかり着替えさせるのである。敵が攻めてきているのだ。恥ずかしいとかそんな場合じゃない。
蒸着! 足利義藤がコンバットスーツを蒸着するタイムは僅か5分にすぎない。では、蒸着プロセス(生着替え)をもう一度見てみよう♪
まずはいやがる義藤さまの帯を悪代官の如くくるくる回して取り去り、直垂と直垂袴を無理やり脱がせて小袖姿にひんむく。恥ずかしがる義藤さまは非常に可愛いくて脱がせ甲斐があるというものだ。
そしておもろに鎧を取り出し、前後から挟み込むようにまずは胴体を装着する。胴の内部は羽毛で作ったキルトジャケットっぽいものが入っているので、義藤さまのおぱーいは痛くないし寒くもないから安心だぞ。
胴体が終わったら次は腕の取り付けだ。胴と腕を付けた状態で義藤さまの美味しそうなおみ脚を1分ほど眺めて堪能するのも忘れない。
しかし残念ながら時間がないので、おみ脚の鑑賞をあきらめて鎧の足をはめ込みお着替えが終わるところでだいたい5分ぐらいである。
「なんじゃこの鎧は、堅くて、重くて、動けないではないかっ!」
実はこの鎧には「関節」という概念が存在しない。繋ぎ目を狙われたら危ないからな。義藤さまはダルマさんのように身動きが取れない状態になってしまうのだ。
ブカブカの鉄の鎧をただ嵌めるだけなので着用時間も短くて済むわけである。
「大丈夫です。新二郎らが担いで義藤さまを運びますので問題ありません」
「問題大ありじゃ、動けないのでは戦えないではないか」
「機動力よりも防御力重視です。それに公方様が戦うとかマジ勘弁してください。大手門には持っていきますが安全な所で見ているだけですぞ」
安全のための防御力に極振りしたいと思ったのだ。それに前線で下手に動かれると邪魔じゃなくて危険だからな。悪いがただの置物になっていてもらおう。
「いやじゃー、わしだって戦いたいのじゃー」
わがまま娘がいくら喚こうがガン無視である。
「時間がありません。では急いで大手門に参りましょう。新二郎、義藤さまを頼んだぞ」
「任せるだろ。義藤さまは俺が必ず守るだろ」
筋肉自慢の新二郎や沼田兄弟たちに担がれて運ばれる義藤さまである。
「この仕打ちはあんまりじゃー、おまえら公方をなんだと思っておるのじゃー」
日本一可愛いと思っているからこの仕打ちなのである。
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一節だけの更新、短くてごめんなさい
肩こりが酷くて頭痛くて気持ち悪くなって
時間が無かった……