第五十一話 誠の旗を掲げて(2)
【誠の旗を掲げて(1)の続き】
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カワイイ女の子な義藤さまがここ慈照寺に集結している幕府軍に見つかってしまっては面倒なことになるので、懐かしき東求堂に連れ込むことにした。
(別にいかがわしいことをするんじゃないんだからね! 筋肉バカも一緒なんだからね! 連れ込んで変なことしようなんて少ししか思ってないんだからね!)
「すまぬ藤孝……わしのせいでそなたが……」
東求堂に入ってすぐに義藤さまが泣きじゃくりながら謝ってくるので困ってしまった。
とりあえず落ち着かせようと思い、昨晩の宴の残り物で簡単な朝飯を用意した。
3人でのんびりと飯を食うのも久しぶりだ。
しかも東求堂でまた3人でのほほんと出来るとは思わなかった……
「すいません、こんなものしか用意できずに」
「いや、美味しいぞ……」
「全然うまいだろ、冷えた天ぷらもなかなかいけるだろ」
とりあえず食べてくれて泣き止んではくれたのだが義藤さまはちょっと元気がない。
「しかしよく御所を抜け出せたな」
「うむ、義藤さまが突然変装して抜け出すと言い出してな俺はビックリしただろ。だが男の公方様が女子の格好をするだけで、まったくバレずに簡単に御所を抜け出せるとは思いもしなかっただろー」
新二郎はこの期におよんでもまだ義藤さまを男だと思っているのか?
まったくすばらしい節穴の目を持って居るようだ。
「そ、そうだなうまくいったな、はははは――」
義藤さまも乾いた声で笑い、呆れた目で新二郎を見ている。
「その格好もよくお似合いですよ」
「そ、そんなに見るでない……」
顔を伏してテレてしまったが、見るなというのは無理な注文という物だ。
目の前に夢にまで見たカワイイ義藤さまがカワイイ格好でいるのだ。
ガン見する以外にどうしろというのだ?
「そうだ新二郎。常御所に居る米田源三郎(求政)に、俺がここに居ることを伝え、しばし東求堂を人払いするよう頼んではくれまいか?」
「ああ、わかっただろ」
「すまんな」
そろそろ皆も起き出してくるし、戦支度もある。
俺が居ないでもなんとかなるのだろうが、探しに来られても面倒だからな。
それに急ぎ聞かねばならないこともあるのだ。
「して義藤さま。お聞きしたきことがあります」
「ん……じゃが、まずは謝らせてくれ。わしのせいで藤孝を困らすことになってしまった。許すがよい」
「義藤さま……謝罪など不要です。義藤さまが忍んでカワイイ格好をしてまで私に逢いに来てくれたのです。あまりの嬉しさに困ったことなどどこかへすっとんで行きました」
「だ、だから、カワイイとかあまり言うでない……そなたは怒ってはいないのか?」
「怒る理由がありませぬ」
「じゃが……わしはそなたが調べた三好と晴元の兵力の数を記した物などを、伯父上らに取られてしまって、それでそなたが蟄居謹慎になったというにもかかわらず何もできなかったのだ……」
「それは近衛家や大御所の側近どもによる策謀でありましょう。義藤さまが責任を感じる必要はありませぬ。それに過去のことでもあります。それよりもこれからのことを考えるためお力をお貸しください」
「これからのこと?」
「はい。蟄居謹慎は解かれましたが、私は幕府への出仕を止められたままで、自由に義藤さまにお会いすることが出来かねております。まずは私が自由に義藤さまに会うことができるよう何とかしたくあります」
「それは……」
「義藤さま、近衛家は私のことをどのように仰っておいででありますか?」
「う、うん……伯父たちはそなたのことを三好長慶に与して我らが幕府に仇なす謀反者じゃと、そう言っておるのだ」
伯父達とは近衛稙家に大覚寺義俊、聖護院道増、久我晴通のことであろう。
「義藤さまは私が謀反を起こすと思いますか?」
「そ、そんなことは思いもしない! そなたがわしに謀反を起こすことなどありえぬことだ! ……だが、母御前までもがそなたは信用が置けない、どうしてもそなたに会うことはならぬと言ってな……わしの言うことを聞いてはくれぬのだ……」
義藤さまの信頼度が100%で嬉しい。
だがしかし、近衛家からは総スカン状態やねぇ。
「義藤さま、私には近衛家から嫌われる理由が分からないのです。何かご存知ではないでしょうか?」
「うん。伯父も母御前も三好と十河は許せぬと言っておってな、そなたの晴元ではなく三好家と結ぶ策を貶しておったのだが……」
「ん? 十河?」
「ああ、伯父たちは十河家に九条家が娘をやったと憤っておってな――」
「そ、それだぁぁぁ!」
「うひゃあぁぁ。び、びっくりしたぁ」
俺が急に大声を出したものだから、義藤さまはびっくりして何やらすごく可愛らしい声をあげて倒れこんでしまった。
その拍子に売り子の格好をしているので小袖の裾が短いのだが、そこから可愛い『おみ脚』があらわになってしまう。
ギンッ! ――我を忘れてふとももをガン見する俺である。
「急に大声を出すでないわ.……藤孝、起こしてくれ……?? おーい、ふ・じ・た・かー?」
義藤さまが手を差し出して起こせとアピールしてくるが、そんなもったいないことはできない。
――何か重要なことに気づいた気がしないでもないのだが、今の俺にとって義藤さまのふとももより重要なものはこの世に存在などしないのだ。
サイズが少しあっていなくて長めの脚絆と捲くれ上がってしまった小袖の裾との間のふとももは偶然にも『絶対領域』を生み出しているのだ。
まさか戦国時代でこの領域を拝めるとは思わなんだ……眼福眼福……
手を引いてくれない俺に少しムッとしながら、義藤さまが起き上がってしまい、お美しい『おみ脚』が隠れてしまった。
なんてことだ! 残念なり! 無念なり! かむばーっく絶対領域ぃぃぃ。
「それで藤孝、なにか気づいたのか?」
義藤さまが居住まいを正しながら聞いてくる。
「はい、この戦国の世で絶対領域の素晴らしさに改めて気付きました……」
「……何を言っているのだそなたは?」
呆れた顔をされてしまったが、ふとももをガン見していたのはバレてないからよしとしよう。
「ええっと、そういえば何のお話をしていましたかな?」
「だから伯父たちが十河某とやらに九条家の玖山公が娘を嫁にやったことを怒っていたと――」
ああそうだった、義藤さまのふとももに心を奪われすっかり忘れるところだった。
「それは九条稙通殿が三好長慶の弟の十河民部大輔一存に娘を嫁がせ、それに近衛家の方々が怒っており、その三好家と協調しようとした私は敵だと、そういうことでよろしいですかな?」
「そう……だと思うぞ」
そういえば十河一存の子の三好義継って、九条家の血を引いているから何だかんだで三好家の後継者に立てられたとかいう話があったな……
だが、こんな早い時期から三好家と九条家が結びついているとは思わなかった。
三好家は畿内を制圧して天下人になったからこそ、九条家と結びついたものだとばかり思っていたな……
(十河一存の嫡子である三好義継は作中の年である1549年生まれ。三好長慶の跡継ぎであった三好義興が若くして亡くなったため、長慶の甥の中でも年長であり母方で摂関家の九条家の血筋を引く三好義継が後継者に選ばれたとされる)
しかしまあ、そういうことなら話は分かる。
幕府が足利・近衛体制である限りは、九条家と結んだ三好家とは相容れないということだろう。
うんこれは失敗したな……細川晴元との手切れはともかく、三好長慶と結びましょうという俺の提案は、近衛家には完全にNGであり必要以上に警戒させることになってしまったわけだ。
「分かりました義藤さま。この細川藤孝はこれより三好長慶を敵とします。母御前様には、義藤さまが説得して藤孝は三好家を敵とすることに同意したとお伝え下さい。そしてこたびの戦で私は三好家を敵に回して戦うことで、それを証明して見せましょう」
「……分かった。でも無理をせずに無事に帰ってくるのじゃぞ?」
「はい。私の望みは義藤さまと共にあることです。必ず生きて帰って参ります」
「ん――気をつけるのだぞ……」
◆
【誠の旗を掲げて(3)に続く】
私のえっちい話の限界はこんなものです
ラブコメ書いてる方が楽しくてしょうがないな
すいません今回は三分割になりそうです
次に出陣を書いて締めて、次話から戦かなぁ
さて私に架空戦記ものが書けるのだろうか……
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エロイ方向に作者が変異します(謎




