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増えないお菓子とその理由

ていっ

 異国情緒溢れる街並みも、慣れてしまえば日常の風景。

 手馴れた手つきで、店先を掃除し店がオープンする準備を進める。

 迷うことはなく、昔と変わらず、でも働かざるもの…とはいえアルバイトな気軽さで。


「あらあ、今日も変わらずなのね。元気〜?」


 ふわっと暖かな風と共に、神々しい美女女神様が現れる。

 私も慣れたもので、最初こそ夢以外でいきなり現れて驚いたものの、今ではこれも日常と受け入れている。


「元気ですよー。いつもと変わらず?」


 手元は動かしてるものの、会話は楽しく弾む。


 女神様の定期訪問は色んな意味でアフターケアのひとつ。

 あと女神様の好奇心らしい。

 新しいことこの世界がより良く発展するために、異界から人を招くのだからこれは必要な訪問なのだと。

(ちなみに、普通は女神の使者らしい人が見に来るらしい。私は特別対応なのだと、女神様がどうしても来れない時に初めて見た使者の人が愚痴のようにこぼしていた。曰く仕事放置しないで、と笑)


「そういえば、雑貨屋さんや服屋さんって、あんまり品ぞろえが変わりませんね。ピアス欲しいんですけどあーいうのはどこで買えますか?。イヤリングでもまあ、いいんですけど。あと甘い洋菓子が食べたい欲求が出てきました。シュークリームとかタルトとかショートケーキとか」


「それってどんなのかしら?」


 ついでとばかりに、ここ最近気になってることを報告しておく。そうすることでより良い生活ができることを学んだ。


 △△△



  今日はお休み、好きなことをしていい日。

 あの日女神様に伝え、新しくなった雑貨のお店には女の子がたくさん、服屋さんにも女の子が入れ替わり立ち替わりの大盛況。


 なのに、


「お菓子のお店は増えてない…」


 女神様に伝えてこの数日、雑貨や服のお店はあちこちどこも、お客様がとても多いというのに。


「甘い甘い洋菓子のお店はいずこ…???」



 右へ左へ一本路地を入ってみたり、あっちへうろちょろこっちへうろちょろ、辺りが薄暗く魔法の街灯にポツポツと灯りがつきだしようやく、諦めていつものお店に行って初めて、お菓子のお店が増えるどころか一軒も開いていないことに気づいた。


「お菓子が絶滅した…!」


 なんていうことなのっ

 数少ないお菓子のお店には軒並み、無期限臨時休業の張り紙。

 小窓から見えた店内は真っ暗で、今までならこの時間にも漂っていたお菓子の甘い香りもまったく無い。


 ガックリと項垂れ、その次にむくむく沸いてくるのは甘いものが食べたい欲求。

 気付いたら普段あり得ないスピードで、店を目指していた。



「なんか、甘い匂いがするっ」

 いつもなら美味しそうな料理の匂いが漂ってくるのに、今日は店に近づくほど焼き菓子が焼き上がった時のような甘い香りが漂ってくる。それも懐かしい、かぎ慣れた匂い。


 バタンッと勢いよく開けられた扉にビックリしたオーナーの顔と慣れない人が作ったであろう不格好で小さなホールケーキ。




「おかえり??どした?」


「甘い香りがっ。ケーキ!今すぐ!いーまーすーぐー!!そのケーキちょーだいー!!!」


 目に付いたケーキに半狂乱に近い状態で騒いでいても、オーナーはまだまだ試作中なんだが?と苦笑いで言いつつも、でも、その懐かしいこの世界ではまったく見かけない生クリームたっぷりのケーキを差し出してくれた。



「…なんか……お菓子のお店がどこも長期休みで…」


 もぐもぐと、忙しなくその懐かしい味を頬張る。

 多少が生地がパサパサしていても、生クリームがボソボソになっていても、久しぶりの洋菓子の味と、今日1日求めていた甘さに手が止まらない。


「食べるか、話すかどっちかにしろ…」


 呆れつつもコーヒーを入れてくれるオーナー優しい。

 あ、ブラックで。ミルクたっぷりめでお願いします。


「なんで、お菓子のお店閉まっちゃったんだろう…」


 一息ついてこぼした言葉にオーナーは迷いなく答えてくれた。


「神託で伝えられた新しいお菓子を作るため、だ。俺も作ってみたものの、材料やレシピ簡単な手順をなぞっただけでは再現不可能だった」


 むつかしい顔で悔しそうな声色で、伝えられた事実にようやく私は自分がここにいる理由に気づけたのかもしれない。



 この世界はたまに来る私のような誰かに刺激を貰いながら成長させているらしい。それは知識であったり、技術であったり、その人の経験であったり…


 だから、コーヒーや緑茶、紅茶はあるけどハーブティ的なものは少ない。料理の水準は高い、和菓子のようなお菓子や中華菓子のようなお菓子はあるけど洋菓子のようなお菓子は無い。



 たぶん、過去に居ないんだろう。

 私の中の当たり前、私が今欲しいと思う足りてない部分を伝える人が…。

 私はパティシエールだった。洋菓子を作る職人。

 そして私の職場柄お茶やカフェにも詳しい。



「…そか、ここにはまだ洋菓子を作れる人がいなかったんだ」



 だから洋菓子が少ないんだ。当たり前のことになぜ気づかなかったのか…

 

あざますっ

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