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オタク姫 ~100年の恋~  作者: 菱沼あゆ


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33/48

やっぱりオタクの人でしたね

 


「行くんじゃなかったです……」


 帰り道、青ざめて朝霞は言う。


「先輩がリトルお母様に見えてきました」


 十文字と母は、出会ってみたら、性格も顔もそっくりだったからだ。


「よく言われる。

 だから嫌なんだ」

と前を歩きながら十文字は言う。


「俺もあんなワンマンな人間になってしまうのかと思って」


「ならないと思いますよ」

と朝霞が言った言葉をただの慰めととったのか、十文字は流して言う。


「兄はいろいろと才能のある人間で、会社を継ぐつもりはないらしいから。


 父親の方は、俺に後を継いで欲しいらしい。


 ま、才能がないから、後を継げと言うのも妙な話なんだがな」

と十文字は渋い顔をする。


「先輩は才能がない人ではないですよ。

 ただ、なんでも出来すぎて、なにか突出してるものがないというか」


「……お前が一番突き刺さるようなことを言っているようだが」


 ああっ、すみませんっ、と朝霞は叫んだ。


「そうじゃないんですよ。

 ほら、なにができると言おうにも、たくさんありすぎて、ひとつに絞れないと言うかっ」

と慌てて言うと、


「確かに、なにが出来るのかと問われると、いろいろとっちらかってる感じで、これと言うものはない」

と言い出す。


「でも先輩。

 家を継ぐのはともかくとして。


 いまどき、会社なんて、世襲にする必要はないと思いますよ」


「……やっぱりお前が一番、バスッと痛いところを突いてくるな」


 それ、親に言ってやれ、と言われて、また、ああっ、すみませんっ、と朝霞は謝った。


 もう沈黙しよう、この先は……、と朝霞が思ったとき、同じように一瞬、沈黙したあとで、十文字が言ってきた。


「ちょっと何処か寄ってくか」

「え?」


「晩飯は?」

「え、は……?」


「なにか食いに行くか?

 奢るぞ」


 とっ、とんでもないですっ、あれしきのことでっ、と朝霞は慌てて断る。


「じゃあ、ゲーム買ってやろうか」


「えっ?」


「安いやつ」

と朝霞が遠慮しないようにか、そう言ったあとで、


「いつもと違う店に行ってみよう。

 俺もたまには他の店、覗いてみたい」

と十文字は少し笑って言ってくる。


 わー、ちょっぴりだけど、笑顔の先輩だーと思いながら、


 はっ、はいっ、と朝霞は慌てて頷き、十文字のあとについて行った。


 




 朝霞は十文字と駅近くのゲームソフトの店に行っていた。


「なにがいい?

 やっぱり、乙女ゲームなのか。


 俺は買うの恥ずかしいから、金やるから買ってこい」


 いや、そこまで言われて買いませんよ。


 っていうか、まだあのゲームやってないので、新しいのはいりませんよ、と朝霞は思っていた。


 それに、下手に違うゲームを始めて、王子の出てくる夢を見なくなったら嫌だ。


 そう思いながらも、近くに乙女ゲームが並んでいたので、なんとなく見てみたのだが、どれもこれもピンと来ない。


 あのゲーム買うときは、これだっ、って思って。


 やるの、すごく楽しみにしてたんだよなー。


 結局、やってないけど。


 あのときパッケージを見ただけで感じたようなワクワク感が今はない。


 ……もしかして、と朝霞はチラと隣にいる十文字を見た。


 単にパッケージの王子が、目の端にしかとらえてなかった先輩に似てたから、嬉しくて買ってしまったのだろうか、と十文字が聞いたら、


「……だから、目の端にしか捉えてなかったんだよな」

と言ってきそそうなことを思う。


「あの、先輩。

 別に買ってくれなくていいんですけど。


 なにかオススメのゲームとかありますか?」

と朝霞が言うと、十文字は少し考え、


「お前は、格ゲーとかシューティングとかはやらないんだろ?


 じゃあ、アドベンチャーゲームとか」

と外国の古いアドベンチャーゲームを薦めてくる。


「やったか? これ」


「いいえ。

 面白そうですね」

と十文字に手渡されたゲームのあらすじを読んで朝霞は言う。


 ちょっと難解なミステリーのようだ。


 先輩、好きそうだな、と笑う朝霞の横で、十文字は何故か朝霞をうらやましがる。


「いいよな。

 お前はこのゲーム、なにも知らずに今から一からできるんだよな」


 マキちゃん、やっぱり、この人、オタクの人でしたよ。

 めちゃめちゃイキイキしてますよ。


 でも、楽しそうな顔、素敵です、王子、と思いながら、朝霞は十文字を見つめていた。






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