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オタク姫 ~100年の恋~  作者: 菱沼あゆ


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新しい王子が現れました



 ……注目を浴びているようだ。


 まったく表情に出さないまま、十文字は思っていた。


 気がつけば、周囲の生徒たちが全員こちらを見ている。


 朝霞に近づいてしゃべるのが恥ずかしかったので、かなり遠くから話しかけてしまった。


 そのせいで、どうしても、声が大きくなり、みんなに聞かれるという愚行を犯してしまったのだが。


 だが、ここでやめる方が恥ずかしいな、と思い、そんな感情はまったく表には出さずに一気にしゃべった。


「は、はい。

 ありがとうございます。


 兄と相談してみます」

と可愛らしく朝霞が言うのを聞いて、きびすを返した。


 ……いや、自分のクラスも朝霞側の二階なのだが。


 じゃあ、とか言って、同じ方向に行ったら、なんだかマヌケだなと思い、つい、反対向いて歩き出してしまったのだ。


 朝の廣也たちの目があるときならともかく、二人で歩くのも、ちょっと恥ずかしいし、と思ったとき、横で見ていた女子たちの声が聞こえてきた。


「えーっ。

 やっぱり、王子は朝霞姫なんだー」


「王子にうちへ来いとか言われてみたいー」


「親に紹介するってこと?

 結婚前提?」


「なに言ってんのよ、莫迦ね。

 まだ高校生じゃん」

と周囲は盛り上がっているが。


 ……いや、恐らく、そんないいもんじゃないぞ、と十文字はひとり冷静に思っていた。


 朝霞の奴、殊勝に、ありがとうございます、とか言っていたが。


 あれは単に、これで、ゲームの世界の夢とやらが進むからだろう。


 なんか、現実でアイテムをゲットしないと、攻略できないRPGみたいになってるな、と思いながら、十文字は朝霞とは反対側の階段を上がっていった。


 階段を上がっている途中の朝霞と二階でバッタリ出くわさないよう、早足になりながら。





 その夜、朝霞は息苦しいような沈黙の中、あの謁見の間の扉の前に立っていた。


 そろそろ扉が開きそうな気配を感じたからだ。


 王子も黙って扉を見つめている。


 そのうち、ギギ……と誰も触れていないのに、真っ白で巨大な扉が内側から押し開けられようとした。


 だが、中のまばゆいまでの光が廊下に溢れ出そうとしたとき、誰かの大きな日焼けした手が、ばん、と扉を押さえて閉める。


 えええーっ!?

と王子と二人、叫んだとき、


「朝霞姫っ。

 結婚してくださいっ」

という声が側でした。


 誰っ?

とこれまた二人で振り返ると、隣の国の佐野村王子が大量の宝石類を手に立っていた。


 王子が掘り返そうとしているのては違う、加工された宝石だ。


「ん」

と佐野村王子は朝霞の手にそれを押し付け、そのまま去って行ってしまう。


 次の瞬間、ニワトリが鳴いて、わずかに光がもれていた扉の隙間も閉ざされた。





 あーっ、と思って目を覚ました朝霞は、朝の光の中、そのまま身動きもせずに呟いた。


「……なんで佐野村?」







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