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オタク姫 ~100年の恋~  作者: 菱沼あゆ


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何故、また明日……?

 



 あーっ。


 なんでだっ、と朝の光の中、朝霞はベッドでのたうち回る。


 王子にドレス着たとこ見せてないしっ。


 女王様にもいよいよ会えるってところでっ。


 だが、夢がそこで止まってしまったのは恐らく、あの王子が、着飾った自分を見て、


「綺麗だよ」

とか言うところが想像できないのと。


 まだ先輩のお母さんを見ていないので、女王様の顔も性格もわからず、出演できないからなのだろう。


 



 朝の電車。


 十文字と出会った朝霞は、早口に言った。


「おはようございます。

 いつ、お母様とお会いしましょうか?」


 は? という十文字に、


「実は、早くお顔を拝見しないと、女王様が出てこられないので、夢が進まないんですよ~っ」


 朝目覚めたときの残念な気持ちそのままに訴えてしまい、

「お前、人生の重点、どっちに置いてる……?」

と十文字に言われてしまった。


 いやいやいや。

 夢にどっぷりはまってるわけではないんですよ。


 現実逃避でもないです。


 だって、あの夢、現実と連動してるから――。


 この現実リアルを頑張らねば、きっと夢の世界も進まない。


 



 朝霞は授業中もなんとなく、そのことを考えていた。


 休み時間も、ぼんやりしていると、周りの囁き声が聞こえてきた。


「朝霞様がなにか思索にふけってらっしゃるわ」


「なにかしら?」


「昨日読まれたご本に想いを馳はせてらっしゃるとか?」

と聞こえてきた。


 ……いや、すみません。


 十文字王子に褒めて欲しいとか、煩悩にまみれたことを考えてました……。


 皆様の期待に応えられず、申し訳なくなった朝霞は、コソコソと教室を出る。


 廊下のひんやりした空気が頰に当たったとき、少し頭が冴えた朝霞は思った。


 そうか。


 この現実世界で、先輩になにか褒めてもらえたら、夢の中でも、王子にドレスを褒めてもらえるかもっ。


 などと、

「いやいや、それこそ、本末転倒では」

と仁美たちには言われそうなことを考えながら、廊下を歩いていたら、前から、佐野村が歩いてきた。


 朝霞の前で、ぴたりと足を止めたので、なんとなく朝霞も止まる。


 廊下の中央で、二人、向かい合って立っていた。


 いや、これ、周囲の迷惑だな、と気づいた朝霞が動こうとしたとき、佐野村がひとつ、息を吸い、

「朝霞」

となにか覚悟を決めたように呼びかけてきた。


 なんだろう?

と見たが、佐野村は、そのまま黙り、


「……いや、なんでもない。

 また明日」

と言ってきた。


「うん。

 また明日」


 なんだろうな、また明日。


 何故、今、また明日。


 五時間目の選択授業、確か一緒になると思うが、と思いながら、朝霞は通り過ぎていった佐野村を振り返っていた。







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