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決断そして出会い

物語は始まる…




喧騒に包まれる。


鳴り響くインターホン。


蹲る父親。


カメラのフラッシュが、カーテンを閉めてるはずなのに眩しいや。


なんでこうなったのか。大体はお判りいただけるであろう。問題は、父である。

やってもいない罪を被られ、この有様である。冤罪、か。

初めは、言えばいいだろう。全てを、伝えるべきなのではないかと、まだまだ幼い私はそう考えていた。だが、父はそうはしなかった。理由はすぐ分かった。


「咲、お前はどう思う。俺が、殺したと思うのか?世の中に流されてしまうのか?」


「私は、お父さんを信じてるよ。でも、この生活は、もう何日目?いつになったらおわるの?」


「分からない。俺が、俺自身が、人々の記憶から抹消されるまで。俺が、負けを認めるまでかもしれない。」


「……………」



父の辛さというのは、十分に分かっているつもりではある。だが、こんな日々に、正直心底嫌気を感じていた。

世の中の不条理さ。父の惨めな姿。

世の中の目という目が、私達を見る。

軽蔑する目で、汚い目で。

そんな日々が、もう嫌だった。

学校でもそうだ。

友人も、父のこの件で「その娘」であるからと、避けられるようになった。無視、軽蔑の目、汚物を見るような目で、私を見る。

そんなのはもううんざりだ。



こんな所から、逃げだしてしまえたら、

私は自由になれるのではないのか。



いつしか私は、こう考えるようになった。

父は、1人で私を育ててくれた。

感謝しているし、大好きである。

だが、1人置いていく、という決断をしなければ私はこの日々を続けなければいけない。

そんなのはもう嫌だった。

出来れば、逃げ出したかった。


気づけば、思うままに足は動き出し

裏口から人目につかない路地裏を抜けて

裏山の森へと逃げ込んでいた。



森の木々は頑張って生きている。

暗く、月が綺麗な夜だった。

隙間から入り込んだ月の零した光がとても美しい。お父さんにも見せてあげたかった。

これだけ幻想的な世界が、この世に存在するなんて、思わないだろう。カメラの残像が残るようなフラッシュライトや人の目がない。淀んだ穢い空気も漂わない。

歩き回るが聞こえるのは自分の足音と、木の葉と葉が重なり擦れる音のみ。

久しぶりに静かだなぁ…と思いながら、夜も老けてきたのでさすがに眠い。

木が生い茂る足元には、艶やかな草が風に揺られユラユラと靡く。蛍は舞う。

丁度いい切り株に腰をかけ、目を閉じた。


「きっと、これが普通なんだろうなぁ」


なんて思いながら、いつの間にか眠りについた。




ーチュンチュンッッ



鳥の囀りで、目が覚めた。

夜とはまた一段と違い、太陽の零れ日は

森の美しさを際立たせる。

昨日は暗くてよく見えてはいなかったのだけれど、やはり明るい方が美しい。



「ん~…お腹空いた。」


起きて、綺麗さを確認してまず思った。

昨日の夜から何も食べていなく、酷く空腹だった。お腹空いた。だが、食べるものがない。諦めよう。歩いてる途中、知ってる果物でも見つけたら食べよう。と、思い、少し辺りを歩き回ることにした。




………ッッガサッ




どこかで重く、音が鳴る度に草や小枝が軋み潰れる音がする。……妙だ。何だか、怖い。

どこかへ隠れよう。と、瞬時に察した。

草の背丈が高い、叢に逃げ込む。

そして、葉と葉の隙間から音の主を探す。

だんだん、足音が迫る。

こんなことを考えながら、また様子を伺う。

まだ、ここからは何も見えなくて、少々焦っていた。

何がいるんだ…人間か。あの記者の群れの1人が此方へ来たのか。いや、そんな音じゃない。軽々しい音なんかじゃない。不規則に聞こえる足音は、人間が放つものじゃないと何故だかそうとしかとらえられなかった。


その瞬間。

葉と葉の隙間から、何か見えるものがあった。

深黒の影。私の体が、その「何か」に陰り、隠れてしまうほど巨大で、その正体が。



熊さんだった。

読んで頂きありがとうございました。

次回も読んで頂けると、作者は喜びます。

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