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第7話 ファンタジーじゃないか!!(・・;)

「まず、ココがどこなのか把握したい。」

そう切り出したヨウイチをじっと見つめて注意深く聞き取ろうと少し前かがみで耳をすませる。

「ゲインダンジョンが共通認識出来ているから、そこを起点にして。

ゲインダンジョンがある地域が、オーロ国の東だよな?

オーロ国の隣は、リーラ国でそれを囲む国が3国ロッサ・ヴェルデ・アッズーロだろ?

この中のどこにココ、リアル?は存在するんだ?

それとももっと離れた国なのか?

そうなると、ケーボーがゲインダンジョンに あれ程頻繁に来れると言うのがわからない。

ケーボーが持ってる移動系の手段では難しいはずだ。

それから、ココではステータス表示の構成が全く違う上に誰一人秘匿モードじゃない。

ケーボーはココではステータス表示を見られないと言っていたが、それは自分のステータス表示も含まれているのか?

それと、所持している武器が出せないのはダンジョン内ではないからと理解できるが、魔法関係は?

ケーボーを待っている間 特に必要ではなかったから試してもいないんだが、実際には使えるのか?

いや、これは試してみればいい話なんだがケーボーが知っていれば教えてほしい。


・・・・・・。ケーボー?

・・・一旦区切った方がいいか?」


魂の抜けたような顔になっていたケーボーが、ハッと気付いたように体を少し震わせてヨウイチに焦点を合わせる。

「え・・・?」

「聞いてなかったのか?」ヨウイチが眉根を寄せて聞いてきた。

「あ・・・いゃ・・・・・・。」

トオルに視線が泳ぐ。

自分に視線を合わせたトオルが、片手だけで”お手上げ”のポーズをとった。

だよね~

ヨウイチの話してる内容自体は理解出来る自分がこの状態なんだから、トオルはチンプンカンプンだろう。

ダンジョンの名前から始まり、出てきた地名は全部ゲーム内のものだ。

ヨウイチが話している地図内容は理解出来る。

ただ、質問の主旨がココが何処かを把握したいと言うものである以上、全く意味不明な内容と言う事になる。

とんでもなく不思議の国の住人なのだろうか?

僕より断然頭良さそうなんだけど・・・イッちゃった人なのかなー・・・?

右人差し指をこめかみに当てて目をつむって考える。

目を開けて上目遣いにヨウイチを見ると、どこか不安そうな雰囲気を漂わせている。

その様子を見て、適当な事を言ってその場しのぎで逃げてはいけない気がした。

考える。

ヨウイチと出会ってからを思い出すと、ゲーム以外の話をしていない事に気付く。

そう言えば、ケータイ番号を聞いた時もまるで通じていない顔をしていた。

・・・・・・。


・・・・・・・・・。

ふと思いついた、この場の状況をスッキリと理解出来る答えを追い払う。

ファンタジーじゃないか!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

だめだ!

この可能性をきっちり否定出来ないと他の考えに切り替えられない。

目を開き、そっと顔を上げる。

自分を見つめるヨウイチとトオルの視線が待っていた。


トオルを見つめ、

「笑っちゃう答えしか思いつかないんだ・・・。

この可能性をきっちり否定しないと先に進めそうにない。

変な事を言うけど、僕の事見捨てないでほしい。」

今、何より恐い事だ。

どうしてもトオルからの確約が欲しかった。

(たぶん少し潤んだ目で)トオルを見つめると、

「わかった。大丈夫。お前の事を見捨てたりしない。出来るだけサポートするから、思った事を思った通りにするといい。大丈夫!」

トオルが自分の目を見据えて、力強く言ってくれた。

更に潤んだ目をしばたかせて、

「ありがとう」と言いヨウイチに向き直る。

眉根を寄せたままのヨウイチが、ジッと見つめていた。



ーー ケーボー ーー

「まず、ココがどこなのか把握したい。」

から始まったヨウイチの話をキチンと理解しようと耳を傾ける。

「ゲインダンジョンが共通認識出来ているから、そこを起点にして。」

??何故ゲインダンジョン?

「ゲインダンジョンがある地域が、オーロ国の東だよな?」

確かにそうだけど・・・軽く頷くとそれを確認して話が続く。

「オーロ国の隣は、リーラ国でそれを囲む国が3国ロッサ・ヴェルデ・アッズーロだろ?


この中のどこにココ、リアル?は存在するんだ?」

最初の質問が終わったと思われる時点で、僕の頭はぶっ飛んだ。

理解不能。理解拒否?

そうなった僕の頭は、ゲーム内の事を勝手に考え始める。

現実逃避・・・。


そうそう。ヴェルデ。あの辺りには、妖精国があるよなー。

男妖精は、大抵人間とそう変わらない大きさや見た目だ。小さめの男妖精も居るには居るが数えるほど。

それに対して、女妖精は多種多様だ。

大きさも見た目も性格も。

ユグドラシルでは、条件をクリアすれば

野生種を身近に置くことが出来る。

女性プレイヤーに多いと聞くのが、森林や草原に生息している動物を連れ帰ってペットのように可愛がる愛好家だ。

リアルではペットを飼えない人が愛好家になる事が多いらしい。

実際、移動中に見かける動物は多種多様で、どういう趣味の人でも満足出来るんじゃないかな。

ただ。

自分も一度、肩にリスを乗せているようなキャラになろうかと、条件クリアを目指した事がある。

成功する気がしない程、超絶ムズい!

リス一匹で、あの手間!しかも失敗。

こりて二度と手を出すまいと誓った。(;一_一)

ちなみに、岩や木を持ち帰るのも条件クリアが必要だ。


そして!

男性に多いのが、妖精愛好家だ。

妖精族の女性種は、とにかくいろんな種類が居る。

ネットにアップされていた愛好家の妖精スクショを見た事があるが、すんごい可愛いんだよ!

ホント!

気持ちはわかる!

自分だって出来れば可愛い妖精を連れて楽しくダンジョン攻略したい。

でも。

リス一匹で断念した自分には無理だとわかっている。


野生種を連れ帰る条件の一つに、対象対プレイヤーのレベルやランクの差が、1対10以上離れていないといけないと言うのがある。

その上で、倒してしまってはいけないのだ。

これがなかなか大変で、一撃で倒してしまう場合が多い。

と言うのも、野生種は大抵一桁レベルで生息しているからだ。

これは、初心者レベルでも何処にでも冒険に出れるようにと言う運営の配慮からの仕様だそうだ。

まぁ、その分 高レベルプレイヤーは遭遇戦を避けて移動したいと思う訳だけど、対策グッズは用意されている。

モンスター避け→低レベルモンスターとは遭遇しない。

モンスター無双→自分のレベルの10分の1以下のモンスターは、少しエフェクトが入るだけでなぎ倒して行く。この場合、経験値やゲーム内通貨、更にはドロップアイテムも自動的にゲット出来る。

高レベルプレイヤーにとっては微々たるものだけど、たまーにホントにたまーにレアアイテムドロップしてる時もあるので、大抵は皆こちらのグッズで対策する。

モンスター避けは、よっぽど急いでいる時やアイテムボックスが満タンの時くらいしか使わない。


ダンジョンは、レベルや属性構成が公表されて自分で挑戦するか選べるので、中には鬼畜仕様のダンジョンもあったりする

鬼畜仕様ダンジョンは、クリアすると勲章が貰えるからそれなりに人気がある。

勲章ダンジョン全クリアで何かが起こるんじゃないかと噂になっているが、クリアしたプレイヤーはたぶんまだ居ないし、公式発表もない。

でも、遊び心のある運営陣だからきっと何かあるだろうと皆思ってる(^^)


冒険エリアは、レベル達成で開放される場所もあるが、そのエリアの野生種レベルは最高で開放条件レベルになる。

レベル100で開放される場所は、野生種レベルは1〜100レベルまでとなる。

開放直後に100レベルの野生種に当たって、ダウンペナルティをくらうプレイヤーは山のように居る!自分もそうだった・・・(TдT)



「・・・・・・。ケーボー?

・・・一旦区切った方がいいか?」


ヨウイチの少し怒気を含んだ視線でハッと意識を現実に引き戻した。



ーーヨウイチーー

「まず、ココがどこなのか把握したい。

ゲインダンジョンが共通認識出来ているから、そこを起点にして。

ゲインダンジョンがある地域が、オーロ国の東だよな?

オーロ国の隣は、リーラ国でそれを囲む国が3国ロッサ・ヴェルデ・アッズーロだろ?

この中のどこにココ、リアル?は存在するんだ?

それとももっと離れた国なのか?

そうなると、ケーボーがゲインダンジョンに あれ程頻繁に来れると言うのがわからない。

ケーボーが持ってる移動系の手段では難しいはずだ。

それから、ココではステータス表示の構成が全く違う上に誰一人秘匿モードじゃない。

ケーボーはココではステータス表示を見られないと言っていたが、それは自分のステータス表示も含まれているのか?

それと、所持している武器が出せないのはダンジョン内ではないからと理解できるが、魔法関係は?

ケーボーを待っている間 特に必要ではなかったから試してもいないんだが、実際には使えるか?

いや、これは試してみればいい話なんだがケーボーが知っていれば教えてほしい。」

一気に質問があふれ出る。

ふとケーボーの様子がおかしい事に気付く。

「??ケーボー?

・・・一旦区切った方がいいか?」

なにボーッとしてるんだ?

「え・・・?」

と答えるケーボーに少し苛立つ。

帰れるかどうかわからない状況にかなりストレスを感じているんだろうと判断しつつ、

「聞いてなかったのか?」

「あ・・・いゃ・・・・・・。」

と煮え切らないケーボーに少し腹が立つ。

トオルを見たケーボーと、

片手で何かのハンドサインを送っているトオルを見る。

指をこめかみに当てて目をつむって考えこんだケーボーを見守る。

真剣な様子に、先ほどの苛立ちは消え、今度は不安が募ってくる。

何かのチョットしたトラブルだと思っていたが、とんでもないトラブルに巻き込まれたのかも知れない。

ケーボーが俺を見つめた後、また考え込む。

しばらく沈黙に耐えて、ケーボーの返事を待っていると

目を開き、トオルを見つめて話し出す。

「笑っちゃう答えしか思いつかないんだ・・・。

この可能性をきっちり否定しないと先に進めそうにない。

変な事を言うけど、僕の事見捨てないでほしい。」

どこかせっぱ詰まったような真剣な様子に、黙って見守る。

「わかった。大丈夫。お前の事を見捨てたりしない。出来るだけサポートするから、思った事を思った通りにするといい。大丈夫!」

とトオルが力強く答えている。

ケーボーより頼りになりそうなんだけどな。

・・・。

「ありがとう」と答えたケーボーが気合いのこもった目でこちらを見た。



ーートオルーー

「まず、ココがどこなのか把握したい。」

そう切り出すヨウイチを観察する。

「ゲインダンジョンが共通認識出来ているから、そこを起点にして。」

何故ゲーム内の話が起点なんだ??

「ゲインダンジョンがある地域が、オーロ国の東だよな?

オーロ国の隣は、リーラ国でそれを囲む国が3国ロッサ・ヴェルデ・アッズーロだろ?

この中のどこにココ、リアル?は存在するんだ?

それとももっと離れた国なのか?」

おぅ!こいつぁ~ヤベェぞ!

ゲーム内とごっちゃになってやがる。

「そうなると、ケーボーがゲインダンジョンに あれ程頻繁に来れると言うのがわからない。

ケーボーが持ってる移動系の手段では難しいはずだ。

それから、ココではステータス表示の構成が全く違う上に誰一人秘匿モードじゃない。

ケーボーはココではステータス表示を見られないと言っていたが、それは自分のステータス表示も含まれているのか?

それと、所持している武器が出せないのはダンジョン内ではないからと理解できるが、魔法関係は?

ケーボーを待っている間 特に必要ではなかったから試してもいないんだが、実際には使えるか?

いや、これは試してみればいい話なんだがケーボーが知っていれば教えてほしい。」

ヤベェ奴かも知れないけど、真剣な上に不安からか、かなり精神的に参ってきているようだ。

最初に見た時より余裕が無くなっているのが見て取れる。

「・・・・・・。ケーボー?

・・・一旦区切った方がいいか?」

同僚を見ると、フリーズしていた。

大丈夫か?おい。

ヨウイチの視線にハッと意識を戻した同僚が

「え・・・?」

と答える。

「聞いてなかったのか?」

ヨウイチが不愉快そうに眉根を寄せて聞いている。

「あ・・・いゃ・・・・・・。」

と言葉を濁した同僚が俺に視線を移した。

助けを求めるような同僚の視線に、片手だけで”お手上げ”のポーズをとる。

同僚が右手人差し指をこめかみに当てて目をつむって考え込む。

横から話しかけて思考を乱さないように黙って見守っていると、途中目を開けてヨウイチを見つめ、また考え込む。

ヨウイチは不安そうだが、俺と同様黙って同僚を見守っている。

同僚の体がビクリと震えて、その後首を振る。

またしばらく考え込むが、情けない顔をしながら俺を見つめてきた。

口を開いた同僚は、緊張しながら

「笑っちゃう答えしか思いつかないんだ・・・。

この可能性をきっちり否定しないと先に進めそうにない。

変な事を言うけど、僕の事見捨てないでほしい。」

と言ってくる。

見捨てる?

よく分からない話だ。

どんな話をするつもりなのかわからないが、話の内容次第で同僚を見捨てるなんて事はあり得ない。

泣きそうな顔の同僚を見つめ力強く答える。

「わかった。大丈夫。お前の事を見捨てたりしない。出来るだけサポートするから、思った事を思った通りにするといい。大丈夫!」

更に瞳をウルウルさせながら

「ありがとう」

と答えた同僚がヨウイチに向き直る。

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