第6話 わかった。がんばってみる。
立ち上がって同僚を見つめたヨウイチが、視線を自分に移した。
「あ。・・・。えと。
こちら会社の同僚の・・・・・・。」
この場合、フルネームとか本名で紹介していいんだろうか??
同僚に聞いておけば良かったー(> <)焦っていたら、
「トオルです。」と同僚が名乗った。
自分の焦りに気付いてくれた?
ヨウイチも
「ヨウイチと言います。」と手を差し出す。
同僚がチラリとこちらを見た後、ヨウイチと軽く握手を交わした。
雰囲気を悪くしないためだろう。
ヨウイチの向かいに並んで座る。
ヨウイチが、同僚・・・トオルの方を向いているがどこか目線が合っていない。
自分と話してるときに宙を見ている感じを受けた目線なのかな。
ヨウイチが言う所の”ステータス表示”を見ている時って事?
3人が3人共、それぞれの顔を見てしばらく黙る。
最初に口を開いたのはヨウイチだった。
「トオル。・・・さん?
は、ケーボーから話を聞いたんですよね?」
の問いかけに、自分も一緒にトオルを見る。
トオルはチラリとこちらを見た後、ヨウイチに向き直り
「ええ。コイツが話せる範囲で聞きました。」
少し考える素振りのトオルに、二人共じっと見つめて待つ。
「ヨウイチくん。」
の呼びかけにヨウイチが、ん?と言う顔を向ける。
「敬称や敬語は、ひとまずあまり気にしない事にしないか?
俺の事は、トオルでいいし、俺もヨウイチと呼ばせてもらう。
コイツの事は、君はケーボーと呼んでいるので、この場では俺もケーボーと呼ぶ事にしよう。」
と言った後、ヨウイチと僕の両方を見ながら
「いいか?」
と聞いてきた。
ヨウイチは
「了解。そっちの方が俺も助かる。」
と答えている。
僕も慌ててコクコクとうなずく。
「じゃ、確認なんだが。
ヨウイチはケーボーと以前から知り合いなんだよな?
一緒にダンジョンに行っているという事だけど、それ以外での付き合いは、今回が初めて?
つまり、リアルでの絡みは今まで無かったんだよな?」
と聞くトオルに、
うなずいていたヨウイチが途中から険しい顔になる。
「リアル?・・・と言うのは、ココの名前か?
国名?地名かな・・・?」
その質問に今度はトオルが険しい顔になる。
「ん?何か根本的に通じて無いな。
君はケーボーと呼んでいるが、”ケーボー”はゲーム内でのニックネームだろ?
ゲーム内での絡みでは無く、リアル・・・現実世界での対面が今回初めてだよな?」
トオルの質問に横でコクコクうなずいて、ヨウイチを見る。
ヨウイチがジッと僕の目を覗き込むように見つめてきた。
まるで目から入って、頭の中にある答えを探し出そうとしているかのようだ。
目を逸らすことが出来ず耐えていたら、ヨウイチがトオルの方を見た。
「トオルは、ゲインダンジョンを知っているか?」
「いや、知らない。ゲームにはあまり興味が無くてね。
ゲーム内の話はサッパリだ。」
その答えを聞いてヨウイチが少しうつむいて考え込んだ。
小さな声で何かつぶやいている。
自分の中に入り込んでいるようなヨウイチに、トオルが遠慮がちに質問した。
「ヨウイチ、考えている所悪いんだが、聞いてもいいか?」
「ああ。」
「ヨウイチはいつからユグドラシルをプレイしてるんだ?」
トオルがその質問をした意味はよくわからなかったけれど、ヨウイチの答えを待つ。
「いつから??ユグドラシル??プレイ?
悪いけどトオル。
君が言っている事が全く理解出来ない。」
そこまで言ったヨウイチが、チラリと自身の斜め上を見た。
「うぉっ! すげー超絶混乱中じゃん!マジか。
なるほど。さっきのケーボーはこんな感じだった訳か。」
腕を組んで目を閉じ考え込んでいるヨウイチを前に、トオルと僕は目を見合わせた。
どうする?と言うかのように片眉を少し上げて見つめてきたトオルに、
正直 トオルが来てからは安心して気持ち的に全てを任せきっていた僕は(たぶん情けない顔をして)フルフルと小刻みに首を振りトオルを見つめる。
大きく息を吸い込んだ音で二人共ヨウイチの方を見る。
目を開いて息をフッと吐き出したヨウイチは、こちらを見て
「訳の分からない事ばかりで、判断材料が少なすぎる。
状況を把握したいから、疑問に答えてもらえる?」
と聞いてきた。
僕はトオルを見たが、トオルは僕を見て返答を待っているようだ。
そうだよな・・・トオルに頼りっきりはダメだよな。
「わかった。僕に答えられる事なら答えるよ。」
と、ヨウイチとトオルを交互に見ながら返事をした。
ーーヨウイチーー
立ち上がって一緒に来た人物を見て視線をケーボーに移す。
「あ。・・・・・・。えと。
こちら会社の同僚の・・・・・・・・・。」
紹介の途中で言いよどむケーボーに不信感が生まれる。
何を隠してる?
一緒に来た人物が
「トオルです。」と自ら名乗った。
「ヨウイチと言います。」と手を差し出す。
ケーボーにチラリと視線を送った後握手に応じる。
2対1になったことと、ケーボーへの不信感から警戒心が働く。
自分のステータスにも警戒アイコンが付く。
向かい合って座る。
一緒に来た人物のステータスを見ると、構成が特殊だ。
自分の物ともケーボーの物とも周りの物とも違う。
読み説けないステータスをしばらく眺めたが、直接情報を聞いた方が良さそうだ。
「トオル。・・・さん?
は、ケーボーから話を聞いたんですよね?」
チラッとケーボーを見た後
「ええ。コイツが話せる範囲で聞きました。」
と答える。
何か二人で企んでいる?
警戒心が働いてるから考えすぎている?
自分が欲しい情報は得られるのだろうか?
少し不安になってきた。
「ヨウイチくん。」
トオルさんからの呼びかけに顔を上げる。
「敬称や敬語は、ひとまずあまり気にしない事にしないか?
俺の事は、トオルでいいし、俺もヨウイチと呼ばせてもらう。
コイツの事は、君はケーボーと呼んでいるので、この場では俺もケーボーと呼ぶ事にしよう。」
と言った後、俺とケーボーの両方を見ながら
「いいか?」
と聞いてきた。
その方が気楽だし大賛成だ。
「了解。そっちの方が俺も助かる。」
と答える。
「じゃ、確認なんだが。
ヨウイチはケーボーと以前から知り合いなんだよな?」
頷くと続けて聞いてくる。
「一緒にダンジョンに行っているという事だけど、それ以外での付き合いは、今回が初めて?
つまり、リアルでの絡みは今まで無かったんだよな?」
と聞くトオルに、
急に理解できなくなって眉間にしわが寄る。
「リアル?・・・と言うのは、ココの名前か?
国名?地名かな・・・?」
つぶやくように聞くと、
トオルが怪訝そうな顔をする。
「ん?何か根本的に通じて無いな。
君はケーボーと呼んでいるが、”ケーボー”はゲーム内でのニックネームだろ?
ゲーム内での絡みでは無く、リアル・・・現実世界での対面が今回初めてだよな?」
トオルの全く理解出来ない質問に、トオルの横で頷いているケーボー見る。
ケーボーはトオルの話が解っている上に当然のような顔をしている。
焦りながらケーボーの目をジッと見つめて質問をもう一度考える。
答えは出ない。
自分が理解出来る形にしていくしかない。
「トオルは、ゲインダンジョンを知っているか?」
「いや、知らない。ゲームにはあまり興味が無くてね。
ゲーム内の話はサッパリだ。」
そう即答するトオル。
わからない。
「ゲーム内?ゲーム? 国名や地名、ダンジョン名でもないよな・・・?
確かつい最近、新たなワールドが出現したと話題になってたからそこか?
・・・いや、違う名だったはず。
となると、どうすればこの現状を把握できる?
呼出し解除は、条件クリアか、ダンジョンクリアか、オールダウンだったよな?確か。
大抵ダンジョンクリアで帰ってたから、他は曖昧だな・・・・・・。
そもそも、俺 ケーボーに呼ばれたんだろうか?
別のマスターのコールだった場合どうなるんだ?
んー・・・いつもは俺を呼んだマスターが、矢継ぎ早に指示を出してきてそれをこなして帰るパターンだったからなー。
こんな状況どうすればいいんだか・・・。」
ブツブツつぶやきながら頭を整理していると
トオルが質問してきた
「ヨウイチ、考えている所悪いんだが、聞いてもいいか?」
「ああ。」
「ヨウイチはいつからユグドラシルのゲームをプレイしてるんだ?」
またも理解不能だ。
「いつから??ユグドラシル??ゲーム・・・。プレイ・・・?
悪いけどトオル。
君が言っている事が全く理解出来ない。」
そう言った後、自分のステータスが変化している事に気付く
「うぉっ! すげー超絶混乱中じゃん!マジか。
なるほど。さっきのケーボーはこんな感じだった訳か。」
ケーボーに出ていたのと同様のアイコンがついているのを見て思わず声が出た。
腕を組んで目を閉じる。
と言うことは、さっきのケーボーも今の俺と同じく全く理解不能の事を言われていた状況だった訳だ。
コレはいったい何が起きてるんだ??
だんだん不安になってくるなー。
この状況の打開策は・・・
やはり状況把握だな。
よし!と心を決め深呼吸をして目を開く。
「訳の分からない事ばかりで、判断材料が少なすぎる。
状況を把握したいから、疑問に答えてもらえる?」
とケーボーに質問する。
戸惑ったようにトオルに視線を送った後
「わかった。僕に答えられる事なら答えるよ。」
と、少し気合いの入った返事が返ってきた。
ーートオルーー
立ち上がった相手が、同僚を見る。
同僚がうろたえながら俺の紹介をしようとするが、
「あ。・・・。えと。
こちら会社の同僚の・・・・・・。」
言葉に詰まる。
どう紹介すればいいのかためらっているようだ。
相手が不信そうな顔になる。
「トオルです。」
自ら名乗る。
「ヨウイチと言います。」
と手を差し出す相手に、一瞬同僚に目が行った。
こちらを騙そうとしている相手かもしれないと思っていたせいだろう。
握手を交わしたが、俺が一瞬同僚を見てから握手をした事で相手の警戒感が強まってしまったようだ。
表情が硬い。
失敗したなー。
と思いつつ席に着く。
席に着くと相手が何とも知れない目線をする。
コレがさっき同僚の話に有ったステータス確認の目線なんだろう。
そう思いつつ観察していると相手が口を開いた。
「トオル。・・・さん?
は、ケーボーから話を聞いたんですよね?」
「ええ。コイツが話せる範囲で聞きました。」
ためらいがちに敬称をつける相手に、普段はフレンドリーな話し方をしているのだろうと感じ、ここは一気に警戒心を解いてわかりにくい状況を打開するために提案する。
「ヨウイチくん。敬称や敬語は、ひとまずあまり気にしない事にしないか?
俺の事は、トオルでいいし、俺もヨウイチと呼ばせてもらう。
コイツの事は、君はケーボーと呼んでいるので、この場では俺もケーボーと呼ぶ事にしよう。
いいか?」
二人を見ると、ヨウイチは即答で
「了解。そっちの方が俺も助かる。」
と答え、同僚も頷いている。
これで少しは話が進みやすくなったかな。
言葉遣いの探り合いから始めてたんじゃ一向に話が進まないからな。
「じゃ、確認なんだが。
ヨウイチはケーボーと以前から知り合いなんだよな?
一緒にダンジョンに行っているという事だけど、それ以外での付き合いは、今回が初めて?
つまり、リアルでの絡みは今まで無かったんだよな?」
うなずいていたヨウイチが眉根を寄せる。
「リアル?・・・と言うのは、ココの名前か?
国名?地名かな・・・?」
国名?地名??
「ん?何か根本的に通じて無いな。
君はケーボーと呼んでいるが、”ケーボー”はゲーム内でのニックネームだろ?
ゲーム内での絡みでは無く、リアル・・・現実世界での対面が今回初めてだよな?」
同僚は横で頷いているが、ヨウイチがますますわからないという顔をして同僚を見つめている。
混乱して助けを求めているようにも見える視線だ。
しばらくして俺に向き直ったヨウイチが
「トオルは、ゲインダンジョンを知っているか?」
と聞いてくるが、ゲームはした事が無い。
この年代ではかなり珍しいだろう。
「いや、知らない。ゲームにはあまり興味が無くてね。
ゲーム内の話はサッパリだ。」
そう答えるとヨウイチはうつむいた。
何かつぶやきながら考えているようだ。
少し待ったが、話を進めたい。
「ヨウイチ、考えている所悪いんだが、聞いてもいいか?」
「ああ。」
「ヨウイチはいつからユグドラシルをプレイしてるんだ?」
どのくらい続いているゲームなのかは知らないが、どっぷりとゲーム世界に浸かった人間は常軌を逸した行為をする事があると聞いたことがある。
もしかしたら、丸一日入りっぱなしの状態が何年も続いている人物なのかもしれない。
とにかく可能性がある事を一つずつ潰していこう。
「いつから??ユグドラシル??プレイ?
悪いけどトオル。
君が言っている事が全く理解出来ない。」
そう答えたヨウイチが自身の斜め上を見て
「うぉっ! すげー超絶混乱中じゃん!マジか。
なるほど。さっきのケーボーはこんな感じだった訳か。」
と驚いた顔をして、その後腕を組んで目を閉じ考え込みだした。
いきなり訳の分からないことを言い出すヨウイチに戸惑い、同僚と目を見合わせる。
これどうする?と片眉を少し上げて同僚を見ると、情けない顔をして首を振り俺を見つめてくる。
考え込んでいたヨウイチが大きく息を吸い込んだので、視線をヨウイチに戻す。
こちらを見たヨウイチが
「訳の分からない事ばかりで、判断材料が少なすぎる。
状況を把握したいから、疑問に答えてもらえる?」
と聞いてきた。
確かに。こちらも判断材料が少なすぎて、どう対処していいのやらサッパリだ。
同僚を見る。
同僚は俺を見た後、少し間があって心を決めたような声で
「わかった。僕に答えられる事なら答えるよ。」