第5話 同席してくれるの?!(*'▽'*)
実家で暮らしている同僚が、夕食の時間帯にファミレスに居るという事は滅多にない。
誰かと待ち合わせだろうか?
その場合でも、事情を話して少し相談に乗ってもらおう。
頭が混乱している時に同僚と話すチャンスが出来たのはラッキーだった。
ヨウイチは、同僚も一緒にと言っていたので都合が良ければ来てもらおう!
と考えながら同僚のテーブルに行く。
「おぅ・・・。」
バツの悪そうな顔で同僚が軽く手を上げた。
やっぱり誰かと約束があるようだ。でもなんでこんなに微妙な顔をしているのだろう?
もしかしたら彼女との待ち合わせだろうか?
それだったら、あまり時間を取らないようにしないと・・・。
「やぁ。誰かと待ち合わせ? まだ時間があるなら少し相談したいんだけど、大丈夫かな・・・?」
遠慮気味に聞いてみた。
同僚は、少し目を見開いて僕を見つめた後
「いや、待ち合わせじゃないよ。
昼間の相手だよな?大丈夫か?」
と優しく見つめながら心配してくれる。
いつもそうだ。
出会った当初は、クールでいつも飄々としていて掴みどころのない感じだったが、いつの頃からか とても親身になってくれる頼れる存在になっていた。
相変わらず飄々としていて考えを読む事は出来ないけれど、気兼ねなく頼み事を出来る相手だ。
「いや、それが・・・。」言いよどむ。
何と説明すればいい?
だいたい、誰なのかと聞いただけで訳がわからず頭が混乱している。
「・・・・・・。」
言いあぐねていたら、
「俺も同席しようか?」
と同僚から言ってくれた。
「え!いいの? 時間大丈夫?」
「ああ。大丈夫だ。ちょっと家に電話してくる。
戻ってきたら、わかってる事だけでいいから聞かせてくれ。
いいか?」
こくりと頷き、なるべく早めに頭の中を整理する。
整理してみると、わかっている事が少ない
ヨウイチという名前と、どうやらゲーム内での知り合い(?)だという事。
それと、ステータス画面が見えている体の不思議の国の住人らしいという事。
戻ってきた同僚に、恐る恐る話す。
確か、同僚はゲーム関係は興味が無かったはずだ。
考え込んでいた同僚が、
「で、ヨウイチと言う人物に心当たりは全く無いんだな?」
コクコクと頷く。
「何か要求されたり脅されたりは?」
フルフルと首を振る。
「あっちが、俺も同席したらどうかと言ったんだな?」
コクリと頷いて、上目遣いで同僚を見つめる。
苦笑いした同僚が
「わかった。じゃあ行こうか。心配でたまらん。」
と立ち上がった。
「ありがとう!」
心強く感じて、これでもう大丈夫だという気持ちになる。(^^)
テーブルに戻ると、顎に手を当てて考え込んでいたヨウイチが気付いて立ち上がった。
ーーヨウイチーー
知り合いと話し始めたケーボーを遠目に眺めていると、知り合いが店から出て行く。
うぉっ!チョッ待て!
と一瞬腰を浮かしかけたが、どうやらまた戻って来る様子だ。
ケーボーが一人テーブルで考え込んでいる。
戻ってきた知り合いと話し込み、頷いたり首を振ったりしている。
しばらくして、二人でこちらに向かってきた。
ーートオルーー
同僚がこちらに向かってくる。
どうする?
偶然を装おうと言い訳を考える。
頭をグルグルといろんな言い訳が駆けめぐるが、
考えがまとまらない内に同僚が目の前に来た。
いつもはしないような事をして何ともバツが悪いが、心配で尾行をして来た事を話すのが一番かと心を決め
「おぅ…。」
と手を上げた。
同僚が何とも複雑な表情を浮かべているのを見て。
そうだよな・・・つけられてたなんて気分悪いよな。
まず謝るべきか。と口を開きかけた俺への同僚の第一声が、
「やぁ。誰かと待ち合わせ? まだ時間があるなら少し相談したいんだけど、大丈夫かな…?」
というもので、驚いた。
でも、まぁ、こういう奴だったな。そう言えば。
遠慮気味に聞いてくる同僚を少し見つめた後。
「いや、待ち合わせじゃないよ。
昼間の相手だよな?大丈夫か?」
と声をかける。
「いや、それが・・・。」と言いよどむ。
「・・・・・・。」
少し待ってみたが、言葉が出てこない。
どうやら難しい状況に陥っているようだ。
同僚一人ではやはり心配だ。
「俺も同席しようか?」
と声をかけたら、即座に
「え!いいの? 時間大丈夫?」
と返事が返ってくる。かなり困っていたようだ。
「ああ。大丈夫だ。ちょっと家に電話してくる。
戻ってきたら、わかってる事だけでいいから聞かせてくれ。
いいか?」
と声をかけて同僚が頷くのを確認して店を出る。
店を出て携帯電話を出しながら、いったい何が起こっているんだか・・・と独り言ちる。
電話を終え戻ると、同僚に話を促した。
僕もよくわかっていないんだけど・・・と前置きをした上で話す内容は、本当によくわからない話だった。
しばらく考えてみたが、相手の話をもう少し詳しく聞かない事には始まらないようだ。
「で、ヨウイチと言う人物に心当たりは全く無いんだな?」
と確認をとると、何度も頷く。
「何か要求されたり脅されたりは?」
に対しては思い切り首を振った。
「あっちが、俺も同席したらどうかと言ったんだな?」
頷いて、少し上目遣いで見上げてくる同僚・・・。
俺の同席を勧めたと言う事は、相手も困ってると言う事なんだろう。
俺の尾行に最初から気づいていた様子の相手にちょっと気恥ずかしさのようなものを感じるが、ここは割り切ろう。よし。
「わかった。じゃあ行こうか。心配でたまらん。」
と立ち上がる。
同僚はホッとしたように笑顔になり
「ありがとう!」
と一緒に席を立つ。
テーブルに近づくと、顎に手を当てて考え込んでいた相手が気付いて立ち上がった。