開発者1
ピコピコンと着信音が鳴る。
AIからの警報メールだ。
『規約に違反する可能性があります。
ユーザー名の禁止事項に該当する可能性。
ユーザー名 ケ=ツゲボー=ボー
尻毛ぼうぼうに相当すると判断。
報告します。』
ケケッと笑いが出てしまう。
何こいつ?
何でこんなユーザー名にしたんだ?
考えられるのは、規約に目を通さず同意してスタートした。
とか?
まぁ、名前自体は規約の禁止事項違反とまでは言えないからアカウント削除の対象外かな。
そう判断しつつ行動ログを辿ると、どうやらシステム理解を優先しているようだ。
もしかして、こいつアレか。
ある程度理解して初めからやり直して有利にゲームを進めようとするヘタレ。
何かムカつくな~。
苦労してゲーム内にいろんな仕掛けを施している者としては、初めてのワクワクドキドキを楽しんで欲しいんだ。
それを用心に用心を重ねて慎重に無難になんてスタイルのプレイヤー気にくわない。
本当に好き好んでわざわざこの名前にしたゲス野郎という可能性もあるが・・・。
ちょーっとイジワルしちゃおうかなー。
このユーザー名のままプレイするしかないような。
あ!そうだ。
今回の福引きの特賞当ててやろう。
あれ、ちゃんと仕様を確認すれば手放せない賞品だからねー絶対やり直しなんてしないだろう。
よし、ちょっと私の憂さ晴らしも兼ねてるけど。
こいつに当ててやろう。
ケケッ。
福引きバナーを目に付きやすい場所に表示する。
見事に引っかかって福引きバナークリックしてるよ。
ケケッ。
さて、この後コイツはやり直し出来るだろうか?
もしやり直したら、相当意志の強いヘタレか。全く情報を精査しようとしないバカヘタレか。どっちかだろう。
まぁ、福引きの結果は福引き期間終わってからの発表だから、コイツがやり直しをしたら又福引きの賞品にぶち込めばいいさ。
福引き期間終了間近に確認したら、続けてたよ。
ケケケッ。
行動ログと会話ログ追ってみたら、案の定苦労してた。
ケケケケッ。
何かスッと胸がすく思いだ。
楽しいねー。
ギルド移籍先探しの時間稼ぎのつもりか、始まりのダンジョンしか周回してない。
こいつやっぱり冒険しない奴かー。
でも、このままだと初オーナーの称号獲得しそうだな。
ま、いっか。
コイツはこの名前のせいで、このゲーム内では仲間探しに苦労するだろうから。
これ以上イジワルするのはやめておこう。うん。
それに、コイツに福引きの特賞当てた時点では、簡単にAIの目をかいくぐって権限利用して特賞の当て先を操作できたけど。
今じゃAIが成長しすぎて、そんな事しようものなら私のアカウントがヤバイ事になる。
恐ろしや~。
あれだな。
部下が優秀すぎると、不合理で不条理な権力の行使が出来なくなって、ある種の権力者の楽しみが無くなるってヤツ。
はぁ~つまらん。
まぁ、AIには助けられてばかりだから、文句言えないけど。
ちょっとは気晴らしできたし。
気合い入れて新ワールド構築に精を出そう。