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第30話 気合い入れないと!!

近付くと、ものゴッツい男が僕たちに気付いた。

ヨウイチを見た後僕を見て、片眉を上げて見つめる。

その視線をヨウイチに戻して、

「ギルド長と一緒じゃなかったのか?」

と聞いている。

「1時に現地集合するって伝えて、別れた。」

ヨウイチが、“用件のみ”と言うような口調で答えている。

「へぇ。で?

どうゆう事だ?」

僕たち3人に視線を巡らせた後ヨウイチに聞いている。

そこへ大股で近付いてきた背の高い男が、

「お前! 何やったんだ!?」

すごい勢いでヨウイチに近付き睨みつけた。

僕は思わずヨウイチと背の高い男の間に入る。

僕に視線を移して睨みつけてきた背の高い男の視線を、目をそらさず見返しながら心臓はドキドキしている。

「おい。

ちょっと待て。

一旦落ち着こうか。」

ものゴッツい男が背の高い男の胸の辺りに腕を伸ばし、後ろに下がらせた。

全員を見渡したものゴッツい男に

「どこか、落ち着いて話せる所に移動しよう。」

提案されて頷く。

「と言っても、何処が良いか・・・。

ちょっと離れるが、この間の喫茶店はどうだ?」

ものゴッツい男の提案に、何か言おうと口を開いた背の高い男に片手をあげて発言を止め、僕たち3人の返事を待つ。

トオルと僕は顔を見合わせる。

健一さんのお店が巻き込まれるのはどうなんだろう?

あんまり良くないんじゃ?

そう思っていると

「そうしましょう。

落ち着いて話した方が良さそうだ。」

トオルが答えると、ものゴッツい男が頷いた。

「あぁ、じゃあそうしよう。」

その返事を聞き、トオルが改札に向かって歩き出したので一緒に移動する。

気になって様子を窺うと、

不満そうにものゴッツい男を見ている背の高い男に

「まぁまぁ・・・。」

なだめるような声をかけた後、何かを話している。

そのまま僕たちは健一さんのお店に向かった。

トオルは電車を待つ間に健一さんに電話をしていた。

トオルも健一さんも巻き込んでしまって、本当に申し訳ない・・・。

この後ちゃんと話し合わないといけないんだから、気合い入れないと!!

そう思って、深呼吸をしてほっぺたをペチペチと叩いた。

電車の中でトオルに

「健一さんのお店を巻き込んでしまって大丈夫なの?」

心配で聞くと

「大丈夫!

かえって、健一さんの店で話せる方が良いと思う。」

「でも、健一さんに迷惑がかかってしまったら・・・。」

心配で言い募ると

「あぁ、んじゃ、この間と同じくただの客として振る舞おう。

健一さんにそう伝えておくよ。

でも、何か困った事態になった時、絶対に健一さんの店で話し合ってて良かったと思うと思うぞ」

自信がある笑顔でそう答えて、短いメールを打って送ったようだ。

どういう事だろう?と疑問に思ったけれど、普通のお客として行くのであれば、ちょっと恐そうなあの二人に健一さんが絡まれる可能性も低くなるのかな・・・?

離れた席で話している二人を見ながら考える。

トオルが大丈夫だと言っているし、大丈夫かな・・・。

健一さんのお店に着くまで、男達二人とは別行動でそれぞれ話をしていた。

ものゴッツい男と背の高い男は、背の高い男をものゴッツい男がなだめているような様子だ。

見た目迫力が凄くて恐そうなのはものゴッツい男なんだけれど、背の高い男の口調や態度の方が恐いかもしれない。

カランカラン♪

「いらっしゃいませ。

お好きなお席へどうぞ。」

の案内を聞きながら、店の奥へ。

今居るお客さんから一番離れる場所に。

前回同様、二つテーブルを付けて飲み物の注文を済ませる。

先に店に入った僕たちが奥の席に着く。

ヨウイチ、僕、トオルの順だ。

向かいにものゴッツい男と背の高い男が少し余裕を取って椅子を配置して座っている。

何となく、飲み物が来るまで“待ち”の時間になる。

サッと僕たち3人に目を走らせたものゴッツい男が

「ちょっと失礼する。」

と声をかけて席を立つ。

トイレのようだ。

少しため息をついて背の高い男も席を立ちトイレに行く。

二人が戻って来たタイミングで丁度良く飲み物をここあさんが持ってきた。

全員の前に飲み物が置かれ

「ごゆっくりおくつろぎください。」

お辞儀をしてここあさんがカウンターに戻り、コーヒーを一口飲む。

ふ、と息を吐き姿勢を正してものゴッツい男を見る。

目が合ったものゴッツい男は、コーヒーのカップを置くと

「さて。

何から話したらいいのか・・・。」

僕とトオルを見ながら口を開いた。




ーーーヨウイチーーー

コール主が俺に気付いた。

マップで確認出来たのだろう。

俺を見た後、ケーボーとトオルに目を移し、いぶかしげな表情をしたまま俺に視線を戻し

「ギルド長と一緒じゃなかったのか?」

と聞いてくる。

「1時に現地集合するって伝えて、別れた。」

背の高い男がすぐそこまで来ているのはマップで分かっているので、短く答える。

「へぇ。で?

どうゆう事だ?」

何故二人を連れてきたのか、と言う質問だろう。

でも、今は答える時間は無さそうだ。

背の高い男が大股で近付いて来て

「お前! 何やったんだ!?」

そう聞く背の高い男と俺の間にケーボーが入って来て俺をかばうように立つ。

え?

驚いてケーボーの後ろ姿を見つめてしまう。

“異世界”でのステータスはイマイチ分かっていないけれど、たぶん背の高い男よりケーボーが弱い。

そして、俺より今のケーボーの方が絶対に弱い。

何故俺をかばうように立っているのか分からない・・・。

ケーボーのステータスに、見た事のないアイコンが点いた。

このアイコン。何だろう?

「おい。

ちょっと待て。

一旦落ち着こうか。」

考えて動けずにいた間にコール主が割って入った。

背の高い男を下がらせ、全員を見回したコール主が

「どこか、落ち着いて話せる所に移動しよう。

と言っても、何処が良いか・・・。

ちょっと離れるが、この間の喫茶店はどうだ?」

何か言おうとした背の高い男を手で制して、ケーボーとトオルを見ている。

「そうしましょう。

落ち着いて話した方が良さそうだ。」

トオルが答えると、コール主が頷いた。

「あぁ、じゃあそうしよう。」

話は決まったとトオルは駅に向かう。

その後を、コール主達を気にしながらケーボーがついて行く。

背の高い男とコール主が二人で話し始めて、俺の事は眼中に無いようなのでケーボー達を小走りで追いかけた。

電車の中でケーボーとトオルが話している。

「健一さんのお店を巻き込んでしまって大丈夫なの?」

「大丈夫!

かえって、健一さんの店で話せる方が良いと思う。」

「でも、健一さんに迷惑がかかってしまったら・・・。」

「あぁ、んじゃ、この間と同じくただの客として振る舞おう。

健一さんにそう伝えておくよ。

でも、何か困った事態になった時、絶対に健一さんの店で話し合ってて良かったと思うと思うぞ」

知り合いだという事が分からない方が良いのか。

俺が気をつけないといけない事は・・・無さそうだな。

普通に振る舞えば大丈夫そうだ。

電車に乗っている時間、“異世界”のステータスが少しでも分からないかといろんな人のステータスを見ていたが、分からないままだった。

カランカラン♪

「いらっしゃいませ。

お好きなお席へどうぞ。」

店に入り、ケーボー達について奥のテーブルに行き席に座る。

飲み物の注文を済ませると

「ちょっと失礼する。」

コール主が席を立ち、背の高い男がそれに続く。

飲み物が来たタイミングで二人が戻って来た。

ここあさんが全員の前に飲み物を置き

「ごゆっくりおくつろぎください。」

お辞儀をしてカウンターに戻る。

今回は、“オレンジジュース”だ。

目の前に置かれただけで、果物の甘いさわやかな香りがしてとても美味しそうだ。

そっと口をつけて飲む。

美味しい!

森の果物もこうやって絞って飲むと、いつもと違う美味しさを楽しめるのかも。

帰ったら試してみよう。

「さて。

何から話したらいいのか・・・。」

コール主が話し始めた。




ーーートオルーーー

ヨウイチに気付いた筋骨隆々の男が、さとると俺にも気付いて探るような目をして見ている。

ヨウイチに目を戻し、

「ギルド長と一緒じゃなかったのか?」

と聞いている。

「1時に現地集合するって伝えて、別れた。」

ヨウイチの答えに

「へぇ。で?

どうゆう事だ?」

さらに質問をしつつ、さとると俺に視線を向ける。

そこへ大股で近付いてきた背の高い男が、

「お前! 何やったんだ!?」

すごい勢いでヨウイチに近付く。

気付くとさとるが、立ちふさがるように、ヨウイチをかばうようにして立っていた。

その姿に、会社での一件が重なり少し笑顔になる。

さとるらしいなと思いつつ、背の高い男が何かした場合に対処できるよう身構える。

「おい。

ちょっと待て。

一旦落ち着こうか。」

筋骨隆々の男が背の高い男の前に腕を伸ばして、背の高い男を止める。

全員を見渡した筋骨隆々の男が

「どこか、落ち着いて話せる所に移動しよう。」

そう提案してくる。

「と言っても、何処が良いか・・・。

ちょっと離れるが、この間の喫茶店はどうだ?」

筋骨隆々の男の提案に、さとるが不安そうな戸惑った顔で俺を見てくる。

さとると目を合わせた後

「そうしましょう。

落ち着いて話した方が良さそうだ。」

筋骨隆々の男に答える。

「あぁ、じゃあそうしよう。」

筋骨隆々の男の言葉で、話は決まった。

そうと決まれば、健一さんに連絡を取っておいた方が良い。

その場を早々に離れ、駅に向かう。

ホームで健一さんに電話をして、この間の男二人と共に行く事を連絡する。

電車に乗ると、

「健一さんのお店を巻き込んでしまって大丈夫なの?」

さとるが心配顔だ。

「大丈夫!

かえって、健一さんの店で話せる方が良いと思う。」

力強く答えるが

「でも、健一さんに迷惑がかかってしまったら・・・。」

迷惑をかけてしまうかもしれないことを心配して不安そうな顔をしている。

「あぁ、んじゃ、この間と同じくただの客として振る舞おう。

健一さんにそう伝えておくよ。

でも、何か困った事態になった時、絶対に健一さんの店で話し合ってて良かったと思うと思うぞ」

さとるの不安も分からなくはないので、ただの客として行こうと提案する。

健一さんの事をよく知らないさとるが、迷惑をかけないか心配するのも分かるが、俺は健一さんの店で話が出来ることになって安心している。

柔和で控え目な印象の健一さんだけれど、とても頼りになる人だ。

学生時代から背中を追いかけているが、いまだに遠く及ばない。

さとるもその内分かるだろう。

カランカラン♪

「いらっしゃいませ。

お好きなお席へどうぞ。」

俺達3人が先に店に入り、奥のテーブルへ進む。

二つテーブルを付けて座り、全員飲み物の注文を済ませる。

「ちょっと失礼する。」

筋骨隆々の男が声をかけて席を立つ。

トイレに向かった背中を見てから背の高い男も席を立ちトイレに行く。

二人が戻り、飲み物も揃った。

「ごゆっくりおくつろぎください。」

お辞儀をしてカウンターに戻っていくここあさんの一言をきっかけに、コーヒーを飲む。。

コーヒーカップを置いた筋骨隆々の男が

「さて。

何から話したらいいのか・・・。」

口を開いた。




ーーーものゴッツい男ーーー

待っている間、マップを見ていた。

ギルド長とレンタルキャラのヨウイチが別の方向から近付いてくるのを見ていぶかしむ。

何で別々に行動してるんだ?

先に着いたレンタルキャラの方を向くと、この間の二人が一緒に来ていた。

しかも、プレイヤーの方はこの間は無かったアイコンが点いている。

・・・。

視線をレンタルキャラに戻し

「ギルド長と一緒じゃなかったのか?」

一番の疑問を聞いてみる。

「1時に現地集合するって伝えて、別れた。」

憮然としたような様子に、この二人にはレンタルキャラの方から会いに行ったと思って良さそうだ。

前回会った時も、名前を尋ねることさえしなかった事を思えば、進んで関わり合いになる気がないと判断できる。

と言う事は、ギルド長と何かトラブったのか?

「へぇ。で?

どうゆう事だ?」

プレイヤーに、俺やギルド長と同じアイコンが点いている。

ダンジョンに行った者に点くのか、行ける条件が整った者に点くのかは分からないが、行けるようになった事は確かだ。

昨日の夜からの約半日で条件クリアしたか、もしくは条件はクリアしていて、ダンジョンに行ったのか。

どちらにしても、上級ダンジョンをソロクリア出来るプレイヤーと言う事だ。

「お前! 何やったんだ!?」

来たか。

ギルド長が、レンタルキャラに掴みかかるかのような勢いで近付き聞いている。

驚いたことに、ひ弱そうなプレイヤーが間に入ってレンタルキャラをかばっている。

「おい。

ちょっと待て。

一旦落ち着こうか。」

ギルド長の前に腕を伸ばし、押しとどめる。

ギルド長は頭に血が上っている、プレイヤーにアイコンが点いている、レンタルキャラは自分の意志で自由に動き回っている。

しっかりと話をしないとダメだな。

「どこか、落ち着いて話せる所に移動しよう。」

提案したものの、何処に行くかな。

この辺りは馴染みがない。

「と言っても、何処が良いか・・・。

ちょっと離れるが、この間の喫茶店はどうだ?」

この辺りで探すことにせず、全員が知っている店を提案した。

何か言いかけたギルド長に片手を上げて発言を控えてもらう。

店に向かう間にギルド長と話が出来るだろうから、今後の方針もある程度決めてから話が出来るだろう。

「そうしましょう。

落ち着いて話した方が良さそうだ。」

「あぁ、じゃあそうしよう。」

代表して、プレイヤーではない第3の男が答えたのに返事をして話が決まった。

改札に向かう二人と一拍置いてついて行くレンタルキャラを横目で見ながら、俺を睨みつけているギルド長に

「まぁまぁ、そう不満そうにするな。

お前、プレイヤーのアイコン見えたか?」

そう言いながら、俺を睨んだままのギルド長に駅に向かおうと手で合図して歩き出す。

「いや、俺には見えないので。」

そう答えながらついてくる。

「プレイヤーに、俺達と同じアイコンが点いてたぞ。

前回は点いてなかったから、レンタルキャラがあの魔法陣に案内したのかもしれない。

それはそうと。

お前、レンタルキャラと何かあったのか?」

「何も。

あの後家に帰って寝て、起きたら居ませんでした。

窓の鍵が開いてたので、そこから出て行ったんでしょう。

朝戻って来たと思ったら“現地集合する”とだけ言ってどこかに行きました。

時間通り現地集合していたが、勝手に動かれるのは困ります。」

「あぁ。まぁそうだな。」

それはそれとして後で考えるが、今話し合わないといけないのは

「それで、あのプレイヤー。

どう思う?

二人では厳しいと思っていた所だし、

あのプレイヤーにダンジョンに入る気があって、実力に問題が無ければ仲間にする方向で話を進めていこうかと思ってるんだが。」

「・・・・・。」

俺との2人からギルド外のプレイヤーを加えて3人へと言う話だし、ギルド長は慎重派だ、少し待つ必要がありそうだ。

考えている間黙って電車に揺られる。

あちらもあちらで話し合っているようだ。

その横で、周りの様子を見ているレンタルキャラ。

あれも不思議な存在だ。

呼べば出て来て、現実世界でも存在している。

・・・未だに返事が無いが、運営は何をしているんだ。

少なくとも、ダンジョンに行けるのは3人になった。

今後も増えるなら、目の前に存在しているレンタルキャラの件も含めて問題が起こる前に早めに動いてほしいが・・・。

また今日か明日にでもメールしてみるかな。

「ギルドマスターはあなただし、ダンジョンの第一発見者もあなただ。

どうするかは任せますよ。」

ギルド長から返事があった。

え?それだけ?考え込んでいた割に・・・。

まぁいい。

話を進めている時に横から反対意見が出てこないならそれで良い。

カランカラン♪

「いらっしゃいませ。

お好きなお席へどうぞ。」

前を行く3人に続き、奥の席へ。

飲み物の注文も終わったので、

「ちょっと失礼する。」

声をかけてトイレに行く。

2拍程置いてギルド長も入って来た。

「おぅ。」

声をかけると、

「で、何です?」

ちょっとあきれたような顔で言うギルド長に

「え?あ、いや。

今回はただ単にトイレに来ただけだ。」

どうやら前回と同じく、トイレで打ち合わせをするのかと思って来たようだ。

用を足して席へ戻る。

いいタイミングで飲み物が来た。

「ごゆっくりおくつろぎください。」

店員がお辞儀をして戻り、コーヒーの香りを吸い込んだ後口に含む。

うん。美味い。

プレイヤーが尋ねるような目で俺を見た。

まぁ俺スタートでいいか。

「さて。

何から話したらいいのか・・・。」

考えながら口を開いた。




ーーー背の高い男ーーー

駅に大股で向かう。

くそっ!

いったい何なんだ!あのレンタルキャラは!

言うだけ言って消えやがるし。

駅に行って来てなかったら、またあいつ探しかよ!?

角を曲がって駅前が見えた。

目立つギルドマスターの姿を捉え、その前に居るレンタルキャラが目に入った。

「あいつ。」

その後ろにいる人物は、この間のヒョロガキ?!

なんであのヒョロガキがいるんだ?!

あいつが連れて来たって事だよな?!

くそがっ!

さらに早足で近付き

「お前! 何やったんだ!?」

レンタルキャラに迫る。

レンタルキャラの前にヒョロガキが立ちふさがる。

あ?!!

なんだこいつ。

レンタルキャラを睨みつけていた視線そのままにヒョロガキを見たが、口を引き結んだ表情で目を逸らさず見返してくる。

この間のウロウロと視線を泳がせたひ弱な感じではなく、しっかりと見返してくるヒョロガキに少し驚く。

「おい。

ちょっと待て。

一旦落ち着こうか。」

ギルドマスターが俺の前に腕を出し、少し後ろに押されて距離を開ける。

「どこか、落ち着いて話せる所に移動しよう。

と言っても、何処が良いか・・・。

ちょっと離れるが、この間の喫茶店はどうだ?」

は?!

今からダンジョンに行く予定だっただろうが!

何でこの間の喫茶店に移動なんだ!

文句を言おうと口を開きかけたが、ギルドマスターに片手を上げて止められた。

「そうしましょう。

落ち着いて話した方が良さそうだ。」

プレイヤーではない男が答え

「あぁ、じゃあそうしよう。」

ギルドマスターが受けて話が決まってしまった。

どういう事だ!?

ギルドマスターに鋭い視線を向けると

「まぁまぁ、そう不満そうにするな。

お前、プレイヤーのアイコン見えたか?」

ギルドマスターが聞いてきた。

歩き出したギルドマスターについて駅に向かいながら

「いや、俺には見えないので。」

俺のマップはポンコツすぎるんだよ。

「プレイヤーに、俺達と同じアイコンが点いてたぞ。

前回は点いてなかったから、レンタルキャラがあの魔法陣に案内したのかもしれない。」

くそ!

やっぱりあいつが何かやったのか!

「それはそうと。

お前、レンタルキャラと何かあったのか?」

聞かれて考えたが何も無い。

「何も。

あの後家に帰って寝て、起きたら居ませんでした。

窓の鍵が開いてたので、そこから出て行ったんでしょう。

朝戻って来たと思ったら“現地集合する”とだけ言ってどこかに行きました。

時間通り現地集合していたが、勝手に動かれるのは困ります。」

少し落ち着いてきた。

「あぁ。まぁそうだな。

それで、あのプレイヤー。

どう思う?

二人では厳しいと思っていた所だし、

あのプレイヤーにダンジョンに入る気があって、実力に問題が無ければ仲間にする方向で話を進めていこうかと思ってるんだが。」

「・・・・・。」

確かに二人では厳しい。

あのモンスター攻略も見えてこない。

ゲームと同じくダウン覚悟で試してみることも出来ないし・・・もし死んだらシャレにならん・・・。

ただ、あのヒョロガキ弱そうじゃないか?

それにギルドが違うし。

どこのギルド所属か知らないが、他ギルドに情報を持って行かれるのはどうなんだ?

でも、人手は必要だ。

・・・・・。

面倒クセー。

ギルドマスターが良いんなら良いんじゃないか。

「ギルドマスターはあなただし、ダンジョンの第一発見者もあなただ。

どうするかは任せますよ。」

そう答えるとギルドマスターは拍子抜けしたような表情を一瞬した。

その表情に思わず笑いそうになったがこらえた。

カランカラン♪

「いらっしゃいませ。

お好きなお席へどうぞ。」

店に着き、最後に入って席に座る。

飲み物はこの間と同じく紅茶にした。

他がコーヒーを頼んでいるので、香りを存分に楽しめないがしかたない。

「ちょっと失礼する。」

ギルドマスターが席を立つ。

見るとトイレに向かっている。

はぁ・・。

少しため息をついて席を立ち、トイレに入る。

方針は決めたのに今更何の打ち合わせだ?

「おぅ。」

と言って俺を見るギルドマスターに

「で、何です?」

腕を組んで聞くと

「え?あ、いや。

今回はただ単にトイレに来ただけだ。」

・・・。

席に戻ると飲み物が来た。

少し気分が上がる。

好みの濃さになるのをじっくり待ちながら他の皆が飲み物を飲むのを見ていた。

3人はコーヒー。

レンタルキャラはオレンジジュースを飲んでいる。

あれって、フレッシュジュースか?

美味しそうな雰囲気が漂ってくるオレンジジュースだ。

長くなりそうだったら、次の注文はオレンジジュースもいいな・・・。

「さて。

何から話したらいいのか・・・。」

ギルドマスターが話し出した。

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