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第17話 え?ゲームの人???

「美味しかったぁー。

ごちそうさまでした。」

食べ終わって、軽くお辞儀をしながら手を合わせる。

「ごちそうさま。

やっぱり健一さんのランチは美味しいな。」

トオルも食べ終わりペロリと唇をなめている。

ヨウイチを見ると、最後に取って置いたらしいいちごを引き寄せてウキウキ顔でヘタを取っている所だった。

幸せそうな顔でいちごを食べているヨウイチを眺めて、食べ終わるのを待つ。

ヨウイチが食べ終わったタイミングでトオルが、

「先にお盆を下げてくるよ。」

と立ち上がる。

僕も一緒に立って、お盆を持つ。

少し大きめのお盆なので、健一さんのように一人で二つ持つのはチョット危ない。

お皿をわってしまったら悪いし・・・。

そう思っていたら、ヨウイチも自分のお盆を持って立ち上がった。

そのまま3人でそれぞれお盆を持ってカウンターに持って行った。

「健一さん。

すごく美味しかった。ごちそうさま。」

トオルが、コンロに向かって料理をしているのか背中を向けている健一さんに声をかける。

後ろを振り返った健一さんが

「お盆下げてきてくれたんだ。

助かるよありがとう。」

ちょうど出来上がったらしい料理を皿に移して、僕らの前に来てくれる。

僕も

「とても美味しかったです。おごちそうさまでした。」

お盆をなるべく取りやすいように奥に置きながら言うと

「お口に合ったようで良かった。片づけてくれてありがとう。」

と素敵な笑顔で言ってくれる。

ヨウイチも

「美味しかった。」

と健一さんに言いながらお盆をカウンターに置いていた。

「もうお腹いっぱいかい?

まだ余裕があるなら、頂き物のケーキが有るんだけど食べない?」

健一さんにそう聞かれ、トオルとヨウイチと目を合わせる。

「僕は、今はお腹いっぱいなので遠慮しておきます。」

と頭を下げる。

「はいはーい。二人はどうだい?」

「俺も、お腹いっぱいなのでやめておきます。

ヨウイチはどうする?」

ヨウイチを見ると、少し首をかしげて

「“ケーキ”が何かわからないけど、今はいい・・・です。」

3人ともランチセットに大満足だった。

健一さんは笑顔で

「了解。

ウチは満席になる事は無いから、気兼ねなくゆっくりして行って。

とおる、新しくお冷や用意するから持って行ってもらっていいかい?」

そう言いながら手早くお冷やを用意してくれた。

「ありがとうございます。

少し、長く居座るかもしれません。」

健一さんに頭を下げて、用意してくれたお冷やを持つと、

僕達を促して元の席に戻った。

席に座るとトオルが口を開いた。

「さて、この後の予定なんだけど。

マップの仕組みは俺にはわからないから、そこは置いておいて。

マップの広げ方次第で、2つ提案がある。

一つ、今オープンしているマップを中心に広げていく。

この場合は、レンタカー・・・昨夜ゆうべ乗ったタクシーと同じ“車”をレンタルして広げていく。

二つ、先ずは人が多い場所をオープンにする。

この場合は、電車でオープンエリアを広げて行く。

電車で広げた場合、駅周辺は人の行き来が多いから見つかる可能性が高くなると俺は思う。

ただ、ヨウイチが最初に現れた場所は意味のある場所だろうから、どちらで広げていくかはマップの機能と考え合わせて決めた方が良いだろう。」

うんうんと頷きながら聞いていた僕はヨウイチを見る。

僕をチラリと見たヨウイチがトオルに向いて

「どちらがいいのか正直わからない。

このままココを中心にマップを広げていったとして、その中にコール主が居る あるいは以前コールしたマスターが居るとは限らないけれど・・・。

最初の地点から大きく外れてコール主を見つけられるのか不安が残る。

もう一つの案の“電車”が何かがわからないけど、トオルがどちらかと言うと電車案推しな感じを考えると効率の良いマップの広げ方なんだろうと思う。

それに、人の行き来が多いのならコール主はともかく、ケーボー以外のマスターを見つけられる可能性は上がる気もする・・・。

・・・・・。

コール主の探し方がわからない以上、どちらの方法でもマップが広がることで可能性は上がると思う。

あとは、お金がどの程度かかるかが重要かな・・・。

俺は今お金を持ってなくて、お金を稼ぐ手段も無い。

ここがダンジョン内であればドロップ品を対価に出来ただろうけど、それも無理だ。

あまりお金がかかるようなら俺が走ってマップを広げると言うのも有りかなと思う。」

トオルを見ながら答えた後、ヨウイチが僕を見る。

「・・・・・。」

トオルも僕を見る中、考え込む。

お金、お金かぁ・・・。

確かにレンタカーは自転車より断然お金がかかる。

今日で決着が付けば良いけど、こんなファンタジー・・・予想のつけようがない。

ん~。低コストで済むようにするには・・・そうだなー。

あ、そうだ!

思いついて顔を上げトオルに聞く。

「トオルって電車通勤だから定期持ってるよね?」

「あぁ。持ってる。」

ちょっと驚いた顔で答えるトオルに頷いて。

「じゃぁ、先ずは電車でトオルの定期区間のマップを広げてみない?」

それだと、僕とヨウイチの分しか運賃かからないし

ある程度人の動きのある駅を押さえられる。

自分で自分の考えにうんうんと頷きながら

「うん!そうしよう!

そうすれば、ヨウイチが気にしていたお金も少なくて済む。

トオルの、人の動きが多い“駅“を押さえておきたいと言う提案も通る。

うん!いいんじゃないかな!?」

二人を交互に見ながら聞いてみた。

ハッと気付いて口を押さえる。

一人で盛り上がって声が大きくなっていた。

恥ずかしい・・・。

顔を赤くしつつ少し俯いていると。

「じゃ、それで行こう。

決定だな!」

トオルが僕を見た後ヨウイチを見る。

その視線を受けて

「わかった。じゃぁそれで。」

ヨウイチがためらいがちに答えた。

トオルが時計に目をやり、

「ちょっと着替え受け取りに行ってくる。

すぐ戻ってくるけど、ヨウイチすまん。

健一さんのコーヒー飲んでから午後の活動開始にさせてもらっていいか?」

ヨウイチに片手で拝みながら聞いている。

「あぁ・・・別にかまわない。」

チョット戸惑い気味の顔で答える。

「サンキュー」

笑顔で答えた後、

「健一さんに頼んでから駅に行ってくる。

ヨウイチは飲んだこと無いだろうから、いちごが好きってキーワードで入れてもらうから飲んでみて。」

ヨウイチが頷いている。

さとるは直接健一さんに希望を伝えた方が良いだろう。」

ついてこいと言う風にチョット首を振って立ち上がった。

一緒に立ち上がってカウンターに行く。

「健一さん。コーヒーをお願いします。

俺はブレンドコーヒーで、

ヨウイチはコーヒー飲んだこと無いので、いちご好きのキーワードでチョイスしてもらっていいですか?」

拭いていたコップを置きながら

「OK。」

とにこやかに答えている。

“いちご好き”のキーワードでチョイスって依頼に質問もなく了承するんだ??すごいな・・・。

さとるは希望を直接、健一さんに。な。

じゃ、行ってくる。」

そう言って足早に駅に向かった。

残された僕を健一さんが柔らかい笑顔のまま見ている。

「あ。えと。

香りが良くて、苦みと酸味が強くないコーヒーが良いんですけど・・・。」

ふむふむと言うかのように軽く頷きながら

「濃さはどうだい?」

聞かれて少し悩む。

コーヒーショップで頼むときは、決まった中から頼むから大抵アメリカンで頼むけれど

家でインスタントコーヒーをいれる時は、アメリカンより少し濃いめにするのが好きだ。

「アメリカンより少し濃いめが好きです。」

そのまま伝えてみる。

「OK。

テーブルに持って行くから、少々お待ちを。」

健一さんがパチンとウインクをしてお茶目な感じの笑顔を向けてくれる。

なんだろう?

ウキウキのようなワクワクのようなドキドキのような

変な感じだ。

一瞬でこのお店のまるで常連客になったような。

昔からの仲の良い知り合いのお店でコーヒーを頼んだような。

そんな感じ。

ぼっち歴が長い僕にとっては馴染みのない感覚。

でも、とても心地よい感覚。

ふわふわとしたままゆっくりと席に戻る。

席に着くとヨウイチが

「ケーボー」

何か続けて言おうとしている横から

「おい!」

と声をかけられた。

「やっと見つけた。」

その声に顔を上げると、

ものゴッツい男が居た。

!!!?

こっち見てるよね?

明らかにこっち見てるよね??

思わず伏せた顔をそっと上げてみる。

ゴッツい男と目が合った。

ビビってまた顔を伏せる。

「なぁ。」

話しかけられてスルーも出来ず、スルーした方が恐そうで・・・顔を上げる。

「と・・・。う、ぁ~。」

変な声を出した後目を逸らして、

「どうするかな~」

とつぶやいている。

ヨウイチの方に目を移して、

「よぅ。わかるよな?」

と声をかけた。

ヨウイチを見ると、頷きながら

「見た目全然違うけど・・・。」

と答えている。

え?

知り合い?

いやいや、知り合いったらゲームの人???




ーーーヨウイチーーー

「美味しかったぁー。

ごちそうさまでした。」

「ごちそうさま。

やっぱり健一さんのランチは美味しいな。」

二人が食べ終わっている中、俺は取って置いたいちごを引き寄せる。

食事も美味しかったし、最後にまたいちごを食べられて大満足だ。

いちごを食べ終わると

「先にお盆を下げてくるよ。」

トオルがお盆を持って立ち上がる。

一緒にケーボーも立って、お盆を持つ。

それを見て、俺もお盆を持って立った。

トオルについてカウンターに行く。

「健一さん。

すごく美味しかった。ごちそうさま。」

トオルが声をかけると

「お盆下げてきてくれたんだ。

助かるよありがとう。」

振り返ってお礼を言っている

「とても美味しかったです。おごちそうさまでした。」

「お口に合ったようで良かった。片づけてくれてありがとう。」

ケーボーも同じようにしているので、

「美味しかった。」

と店主に感想を言いながらお盆を置く。

「もうお腹いっぱいかい?

まだ余裕があるなら、頂き物のケーキが有るんだけど食べない?」

そう聞かれたが、“ケーキ”が何かわからない。

「僕は、今はお腹いっぱいなので遠慮しておきます。」

ケーボーがお腹をなでながら答える。

「はいはーい。二人はどうだい?」

「俺も、お腹いっぱいなのでやめておきます。

ヨウイチはどうする?」

トオルも断り、俺に聞いてきた。

「“ケーキ”が何かわからないけど、今はいい・・・です。」

最後にいちごを食べて大満足だったし、二人が断る食べ物だしな・・・。

知らない食べ物に興味はあるけど。

「了解。

ウチは満席になる事は無いから、気兼ねなくゆっくりして行って。

とおる、新しくお冷や用意するから持って行ってもらっていいかい?」

「ありがとうございます。

少し、長く居座るかもしれません。」

トオルに促されて元の席に戻る。

席に座るとトオルが口を開いた。

「さて、この後の予定なんだけど。

マップの仕組みは俺にはわからないから、そこは置いておいて。

マップの広げ方次第で、2つ提案がある。

一つ、今オープンしているマップを中心に広げていく。

この場合は、レンタカー・・・昨夜ゆうべ乗ったタクシーと同じ“車”をレンタルして広げていく。

二つ、先ずは人が多い場所をオープンにする。

この場合は、電車でオープンエリアを広げて行く。

電車で広げた場合、駅周辺は人の行き来が多いから見つかる可能性が高くなると俺は思う。

ただ、ヨウイチが最初に現れた場所は意味のある場所だろうから、どちらで広げていくかはマップの機能と考え合わせて決めた方が良いだろう。」

トオルの言葉に頷きながら聞いていたケーボーは、俺を見ている。

なんだろうな・・・この頼りない感じ。

ここはケーボーがリーダーシップを取ってもいい所なんじゃ?

ケーボーを見た後、トオルに答える

「どちらがいいのか正直わからない。

このままココを中心にマップを広げていったとして、その中にコール主が居る あるいは以前コールしたマスターが居るとは限らないけれど・・・。

最初の地点から大きく外れてコール主を見つけられるのか不安が残る。

もう一つの案の“電車”が何かがわからないけど、トオルがどちらかと言うと電車案推しな感じを考えると効率の良いマップの広げ方なんだろうと思う。

それに、人の行き来が多いのならコール主はともかく、ケーボー以外のマスターを見つけられる可能性は上がる気もする・・・。

・・・・・。

コール主の探し方がわからない以上、どちらの方法でもマップが広がることで可能性は上がると思う。

あとは、お金がどの程度かかるかが重要かな・・・。

俺は今お金を持ってなくて、お金を稼ぐ手段も無い。

ここがダンジョン内であればドロップ品を対価に出来ただろうけど、それも無理だ。

あまりお金がかかるようなら俺が走ってマップを広げると言うのも有りかなと思う。」

答えた後、残るはケーボーの意見だと答えを待つ。

「・・・・・。」

しばらく俯いて考え込むケーボーを二人とも黙って待っている。

顔を上げたケーボーが

「トオルって電車通勤だから定期持ってるよね?」

トオルに聞いている。

「あぁ。持ってる。」

答えるトオルに頷いて。

「じゃぁ、先ずは電車でトオルの定期区間のマップを広げてみない?


うん!そうしよう!

そうすれば、ヨウイチが気にしていたお金も少なくて済む。

トオルの、人の動きが多い“駅“を押さえておきたいと言う提案も通る。

うん!いいんじゃないかな!?」

自分の解決策が気に入ったのか、大きな声で聞いてきた。

すぐに口を押さえて顔を赤くして俯いたケーボーに、また頼りなさを感じて少しあきれてしまう。

「じゃ、それで行こう。

決定だな!」

トオルがケーボーに言った後俺を見る。

「わかった。じゃぁそれで。」

ケーボーの提案にわからない言葉が入っているので、トオルの判断を信じて同意する。

一拍置いて、トオルが

「ちょっと着替え受け取りに行ってくる。

すぐ戻ってくるけど、ヨウイチすまん。

健一さんのコーヒー飲んでから午後の活動開始にさせてもらっていいか?」

と申し訳なさそうに聞かれた。

「あぁ・・・別にかまわない。」

少し行動開始が遅くなるけど、キリキリしたってしょうがないしな。

「サンキュー」

笑顔で答えた後、

「健一さんに頼んでから駅に行ってくる。

ヨウイチは飲んだこと無いだろうから、いちごが好きってキーワードで入れてもらうから飲んでみて。」

トオルに頷きながら、さっきケーボーが言っていた“コーヒー”か・・・興味有る。

美味しいといいな。と考えていると

さとるは直接健一さんに希望を伝えた方が良いだろう。」

そう声をかけて二人でカウンターに行った。

後ろ姿を見送って、マップを開く。

このお店。

午前中でオープンにしたマップの端にある。

少し歩けば次のマップがオープンしそうな位置。

食事前はお腹すいていたし、トオルも限界っぽかったから先にオープンにしようと言えなかったけど待ち時間の間にチョット行って1ブロックオープンにしてきてもいいかもしれないな・・・。

そう考えながらオープンになったブロックを端から順にチェックしてみる。

マーカーはもちろん無かった。

ちらりとカウンターに目をやるとケーボーが一人で店主と話していた。

コーヒーってどのくらいで出来るんだろう?

トオルと一緒に“駅”まで行けば良かったかな・・・。

考えていたら、

アイコンが点いた!!

どこだ?

急いでオープンになったマップをチェックする。

今まで見つからなかったせいか、一番遠くにマーカーがある気がして遠くからマップをチェックしてしまった。

最後自分が居るエリアを見るとマップにマーカーが点いていた。

!!!

居た!

慌ててアップにする。

少しずつ動いている。

あれ?

こっちに向かってきてないか?

もしかしてコール主?!

俺を見つけて近付いてきてるのか?

店を飛び出してマーカーの場所に行こうかと思ったが、もしこちらに来ているのだったら落ち着けるこの店で会った方がいいかもしれない。

そう思ってマーカーの動きを見ていると、店の前に来た。

やっぱり!

見るとケーボーがどこかふわふわした足取りでこちらに戻ってくる。

カランカラン♪

「いらっしゃいませ。

お好きなお席へどうぞ。」

ココアさんが声をかけている。

マーカー付きで入ってきた人物は大股で足早にこちらに向かってくる。

ケーボーが席に着き

「ケーボー」

マーカーが現れた事を言おうと口を開いた時にはテーブルの横にその人物は来ていた。

「おい!」

声をかけた人物に目をやると

「やっと見つけた。」

と言いながら視線を俺から外し、険のある目をケーボーに向ける。

「なぁ。」

声をかけられて顔を上げたケーボーを見て

「と・・・。う、ぁ~。」

変な声を出して目を逸らし天井を見上げる。

「どうするかな~」

とつぶやいた後視線を俺に戻した。

「よぅ。わかるよな?」

そう言われ頷く。

ステータスは見えてる。

名前も分かってる。

コールされた事が有るから知っている。

ただ

「見た目全然違うけど・・・。」




ーーートオルーーー

「美味しかったぁー。

ごちそうさまでした。」

さとるが軽くお辞儀をしながら手を合わせる。

「ごちそうさま。

やっぱり健一さんのランチは美味しいな。」

俺も食べ終わり、大満足だ。

昨日の夜からほとんど食べていなかったから、やっと落ち着いた。

ヨウイチを見ると、うれしそうに残して置いたいちごを食べている。

食べ終わるのを待って

「先にお盆を下げてくるよ。」

声をかけて立ち上がる。

さとるもヨウイチもお盆を持って立ち上がったので、一緒にカウンターに下げに行った。

「健一さん。

すごく美味しかった。ごちそうさま。」

健一さんに声をかけると振り返って

「お盆下げてきてくれたんだ。

助かるよありがとう。」

フライパンの料理を皿に移している。

健一さんのご飯かな?

あれはたまに食べさせてもらう炒めし(いためし)だ。

チャーハンじゃないんだ?と聞くと、チャーハンほど美味しくは作れないからね。“いためし”なんだよ。と健一さんはお茶目に笑うけれど、美味しいんだ。

また今度食べに来よう。

「とても美味しかったです。おごちそうさまでした。」

「お口に合ったようで良かった。片づけてくれてありがとう。」

「美味しかった。」

さとるもヨウイチもお盆をカウンターに置く。

「もうお腹いっぱいかい?

まだ余裕があるなら、頂き物のケーキが有るんだけど食べない?」

健一さんが声をかけてくれるが、お腹いっぱいだ。

俺をチラリと見た後

「僕は、今はお腹いっぱいなので遠慮しておきます。」

さとるは答えて頭を下げている。

「はいはーい。二人はどうだい?」

ヨウイチを見るが少し迷っている様子。

「俺も、お腹いっぱいなのでやめておきます。

ヨウイチはどうする?」

声をかけると

「“ケーキ”が何かわからないけど、今はいい・・・です。」

と答えた。

興味津々の顔をしているので、後でチャンスが有ればケーキをごちそうしよう。

「了解。

ウチは満席になる事は無いから、気兼ねなくゆっくりして行って。

とおる、新しくお冷や用意するから持って行ってもらっていいかい?」

そう言いながら手早くお冷やを用意してくれた。

「ありがとうございます。

少し、長く居座るかもしれません。」

健一さんに頭を下げて、用意してくれたお冷やを持つと、

二人を促して元の席に戻った。

お冷やをそれぞれの前に置いて、午後の提案をする。

「さて、この後の予定なんだけど。

マップの仕組みは俺にはわからないから、そこは置いておいて。

マップの広げ方次第で、2つ提案がある。

一つ、今オープンしているマップを中心に広げていく。

この場合は、レンタカー・・・昨夜ゆうべ乗ったタクシーと同じ“車”をレンタルして広げていく。

二つ、先ずは人が多い場所をオープンにする。

この場合は、電車でオープンエリアを広げて行く。

電車で広げた場合、駅周辺は人の行き来が多いから見つかる可能性が高くなると俺は思う。

ただ、ヨウイチが最初に現れた場所は意味のある場所だろうから、どちらで広げていくかはマップの機能と考え合わせて決めた方が良いだろう。」

さとるは俺の提案をうんうんと頷きながら聞き、次の発言を譲るようにヨウイチを見る。

ヨウイチはチラとさとるを見てこちらを向くが、どことなくさとるを頼りなく思っている雰囲気がある。

確かに、いつでもどこでも何でも他に先を譲るさとるの姿勢がマイナスに働く事が有るのは否めないが・・・決して頼りない訳ではないんだよな。

まぁ、ヨウイチもいずれ分かるか・・・。

「どちらがいいのか正直わからない。

このままココを中心にマップを広げていったとして、その中にコール主が居る あるいは以前コールしたマスターが居るとは限らないけれど・・・。

最初の地点から大きく外れてコール主を見つけられるのか不安が残る。

もう一つの案の“電車”が何かがわからないけど、トオルがどちらかと言うと電車案推しな感じを考えると効率の良いマップの広げ方なんだろうと思う。

それに、人の行き来が多いのならコール主はともかく、ケーボー以外のマスターを見つけられる可能性は上がる気もする・・・。

・・・・・。

コール主の探し方がわからない以上、どちらの方法でもマップが広がることで可能性は上がると思う。

あとは、お金がどの程度かかるかが重要かな・・・。

俺は今お金を持ってなくて、お金を稼ぐ手段も無い。

ここがダンジョン内であればドロップ品を対価に出来ただろうけど、それも無理だ。

あまりお金がかかるようなら俺が走ってマップを広げると言うのも有りかなと思う。」

答えた後、次はお前の番だとばかりにさとるを見るヨウイチ。

少し苦笑しながら、俺もさとるの発言を待つ。

「・・・・・。」

少し考え込んだ後

「トオルって電車通勤だから定期持ってるよね?」

さとるに聞かれ、唐突な質問に少し驚く。

「あぁ。持ってる。」

その答えを聞いたさとるが先を続ける。

「じゃぁ、先ずは電車でトオルの定期区間のマップを広げてみない?」

そう言った後、自分の中の考えに自分で頷いて

「うん!そうしよう!

そうすれば、ヨウイチが気にしていたお金も少なくて済む。

トオルの、人の動きが多い“駅“を押さえておきたいと言う提案も通る。

うん!いいんじゃないかな!?」

目をキラキラさせて大きめの声で言った直後に口を押さえて俯く。

耳が赤くなっている。

思った以上に大きな声を出していて恥ずかしくなったんだろう。

昨日から、会社でのさとるとは違う面をいろいろと見れるなー。

面白く思いながら

「じゃ、それで行こう。

決定だな!」

ヨウイチを見る。

「わかった。じゃぁそれで。」

ためらいがちに答える所を見ると、さとるの提案に少し不安が有るのかもしれない。

まぁ、3人とも手探りの状況だからな。

これ以上話し合ったところで最適な答えを出せるとは思えない。

やれる事を先ずやって、その後また話し合えばいい。

時計を見ると、そろそろ駅に行かないといけない時間だ。

「ちょっと着替え受け取りに行ってくる。

すぐ戻ってくるけど、ヨウイチすまん。

健一さんのコーヒー飲んでから午後の活動開始にさせてもらっていいか?」

ヨウイチに片手で拝みながら聞く。

健一さんのコーヒーを飲んでおきたいけど、その分午後の活動開始の時間が遅れるからヨウイチに聞いてみる。

「あぁ・・・別にかまわない。」

少しためらいがちの返事だが

「サンキュー」

と答え

「健一さんに頼んでから駅に行ってくる。

ヨウイチは飲んだこと無いだろうから、いちごが好きってキーワードで入れてもらうから飲んでみて。」

新しいものへの興味は大いに有りそうなので、ヨウイチにコーヒーを飲んでもらおうと声をかけると頷いた。

さとるは直接健一さんに希望を伝えた方が良いだろう。」

声をかけてカウンターに行く。

「健一さん。コーヒーをお願いします。

俺はブレンドコーヒーで、

ヨウイチはコーヒー飲んだこと無いので、いちご好きのキーワードでチョイスしてもらっていいですか?」

拭いていたコップを置きながら

「OK。」

と答えてくれる。

さとるは希望を直接、健一さんに。な。

じゃ、行ってくる。」

そう言って足早に駅に向かった。

もうすぐ駅に着く辺りで目を引く男とすれ違った。

携帯で

「あぁ。先に俺だけ行っておくからすぐ来てくれ。

どのくらいかかりそうだ?

わかった。じゃ、後で。」

と言って電話を切って歩き出す。

すごい身体だ。

土建業関係の人物に見えるけど、仕事以外にもガッツリ筋トレしてる身体だよな。

強そうだ。

そう思いながら駅前に行くと、弟が待っていた。

「早い電車で来たのか?」

時計を見ながら聞く。

「そう。あの後母さんが出かける車で駅まで乗せてもらったから1本早く着いた。

次の電車に乗るから。

はい。」

と言ってリュックを差し出してきた。

「ありがとう。助かったよ。

状況次第だけど今日も泊まるから。」

弟に言うと

「了解。

予定はまた家族チャットにでも投下しといてよ。」

そう言って改札に向かって歩き出す。

「わかった。ありがとな。」

と声をかけて喫茶店に向かう。

一つ角を曲がると喫茶店までは見通しの良い道だ。

先を行くさっき見た男性が目に入る。

立ち止まって見上げた後、ドアを開けて入っていくのは

あれ?健一さんの喫茶店かな?

行き先が同じとは。

特に理由は無いが少し驚いた。

誰かと待ち合わせみたいだし、喫茶店は丁度良いよね。

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