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第16話 ランチ

メニュー表を閉じたタイミングで、トオルが時計に目をやり

「ちょっと外で連絡して来る。」

と言って店の外に出ていった。

突然の外泊をさせてしまっている事を改めて申し訳なく思いながらトオルの背中を見送る。

ヨウイチを見ると宙を見るような目でジッとしている。

ステータスを見ているのか、それともマップだろうか?

「ヨウイチ。

今はマップを見てるの?」

と聞いてみた。

宙を見ているような視線を外して、焦点を僕に合わせたヨウイチが

「ん。あぁ・・・そう。

マップ見てた。

ケーボー以外のマスターがマップ上に現れないのが不思議で。

ゲインダンジョンにケーボーと一緒に行っている時も、マップ上には知り合いのマーカーが見れたんだけど・・・。」

そう戸惑った顔で話す。

「ゲインダンジョン付近なら確かにたくさんプレイヤーが集まるから、そうかも・・・。」

そう答えながら、ヨウイチの言葉に疑問が浮かんだので聞いてみる。

「ヨウイチが言ってる知り合いのマーカーってどういう分類になるのかな。

一緒にダンジョンに行った事のある人?

それともヨウイチを呼んだ事のある人?

ヨウイチが言っているマスターって言うのは、ギルドマスターの事?

それとも、ヨウイチを呼んだ人はギルドマスター関係なく、マスターって事?」

ヨウイチはジッと僕を見ながら注意深く聞いていた。

「知り合いのマーカーって言うのは、俺をコールした事がある人だな。

俺をコールした事が無い人は、マップ上に居てもマーカーは付かない。

それと、マスターって俺が言ってるのはコール主の事だ。

ギルドマスターであるかどうかは関係なく、コール主がコール中はマスターって事になる。」

と答えてくれた。

「そうなんだ・・・。

??

あれ?

じゃ、マスターでプンクトゥムペルケプティオ設定してもダメなんじゃ?

あ。いや。

僕がマップ出入りして、マスター設定でヒットしたんだから、いいのか・・・。

?」

ヨウイチの答えに少し混乱して独り言が出る。

それを聞いていたヨウイチが

「あぁ・・・。

と言うことは、“一度マスターになった事がある人“って事でアイコンが付くのかも。」

ヨウイチも少し考え込んだ後

「こういう状態が初めてだから、イマイチわからないけど・・・マスター設定でケーボーに反応したのなら、そう言う事になるんじゃないかな。

たぶん。」

と言った後、二人して ん~~・・・ と考え込む。

「もう一人マーカーがヨウイチのマップ内に点いてくれるとわかるんだろうけどね。」

「そうだな。

今回のコール主が現れてくれるのが一番いいんだが。」

「だね。」

そう話したタイミングでトオルが戻って来た。

「大丈夫だった?

ごめんね、突然巻き込んでしまって。

今日約束とか予定とか有ったんじゃない?」

と聞くと

「いや。今日は予定入ってなかったから大丈夫。

連絡もうまく行って。

着替えは弟が出かけるついでに持って来てくれる事になった。

2時頃駅まで受け取りに行ってくる。」

トオルが気軽な感じで言ってくれる。

本当にありがたい。

「わかった。

じゃ2時頃駅に行こう。」

と一緒に行くつもりで言うと

「着替えは俺一人で大丈夫。

この後どうするかの話をしたいし、しばらくここで話し合おう。」

と言うトオルに

「そうだね。そうする事にするよ。ありがとう。」

と答える。

このお店は、駅に近いから歩いても店と駅の往復はすぐに出来るだろう。

喫茶店マスターの健一さんがいちごを持ってテーブルに来た。

「お待たせ。

いちごを先に持って来たよ。

お昼ご飯はもう少し待ってもらっていいかな。

お腹すいてるのにごめんね。」

と言いながらいちごをテーブルに出してくれる。

「いえ。大丈夫です。」

と言う僕に健一さんが

「ありがとう。」

とふわりと微笑んでくれる。

「健一さんありがとう。」

トオルがお礼を言っている。

「いやいや、こちらこそ。

美味しそうないちごをありがとう。

休憩の時にいただくよ。」

そう言って、後ろからついて来ていた女の人を振り返り手招きする。

ウエイトレスのような服を着た女性が健一さんの横に来てお辞儀をした。

「こちら、看板娘のここあさん。

フロアを担当してもらってる。

こちらがとおる君。

僕の高校からの後輩。」

と紹介を受けて、トオルが立ち上がりお辞儀をする。

とおると言います。

こちらが会社の同僚のさとると、さとるの知り合いのヨウイチです。」

と僕達を紹介してくれる。

僕は立ち上がってお辞儀をする。

一拍遅れてヨウイチも立ち上がりお辞儀をした。

「はじめまして。

ここあです。

マスターには大変お世話になってます。

まだ慣れないので行き届かないかと思います。

何かあれば遠慮なくおっしゃってください。

どうぞよろしくお願いします。」

緊張した面もちで挨拶してくれた。

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」

トオルが挨拶してお辞儀をしたので、一緒にお辞儀をした。

「ゆっくりしていってね。

もうすぐ食事も出せるから、少し待っててね。」

健一さんが声をかけてテーブルを離れた。

「はい」

トオルと僕が返事をして、3人とも椅子に座る。

「まずはいちごを食べようか。」

トオルに声をかけられて、ヨウイチが真っ先にいちごを食べ始めた。

いちごを食べながら、さっきヨウイチと話していた事も含めて話す。

「ヨウイチのマップのマーカーは僕だけなのは変わらず。

僕のマーカー1個しかデータが無いから何とも言えないんだけど・・・。

ヨウイチを呼んだ事がある人はマップ上にマーカーが点くらしくて、今の時点でも僕以外のマーカーが点いていない事を考えると、マップがうまく機能していない可能性もあるみたいなんだ。」

そう説明すると

「ん~・・・データが1個じゃわからないな。

他に何か手がかりと言うか、足掛かりになりそうな事って思い浮かばないか?」

と聞かれた。

朝から相談しようと思いながら保留していたメール問い合わせの件を話してみる。

「僕がしているゲームが関係しているみたいだから、ゲームの運営会社へメール問い合わせをする。って言うのが一つ案としてある。」

そう言うと、先を促すようにトオルが少し頷いて何も言わずに僕を見ている。

「ただ・・・。

僕自身がこの事態を理解出来ていない状況で、うまく伝わるメールが書けるのか疑問で保留のままになってる。」

眉間にしわが寄った状態で言い終わると

「そうだよな。なかなか難しいな。

俺もうまく人に伝えられる自信ないわ。」

とトオルが言って、腕組みをしてうんうんと何度が頷いている。

「ん~・・・。

このままマップを広げていけばいずれ探せるとわかっているなら、午後はレンタカーを借りて走るって手も有るんだが・・・。

どうするかな。」

そう言ってトオルが考え込む。

僕もレンタカー案は少し考えていた。

午前中走った距離で見つかるなら、自転車で丁度良いし、レンタル料も安いしって事で自転車を選択したんだけど。

朝からレンタカーで走っておいた方が良かっただろうか?

僕も考え込んでいると

「お待たせいたしました。」

ここあさんが昼食を運んできた。

少し大きめのお盆に美味しそうな料理が並んでいる。

テーブルに置いてもらったお盆を、奥に座っているヨウイチの前にスライドさせる。

後ろからお盆を二つ持った健一さんが来て、僕とトオルの前に置いてくれる。

「お待たせしました。

とおるお気に入りのランチセットだよ。

口に合わないようだったら、他の作るから遠慮なく言ってね。

ごゆっくりどうぞ。」

健一さんが僕とヨウイチに向けて声をかけてくれる。

「ありがとうございます。いただきます。」

と言うと。

優しく微笑んでカウンターに戻っていった。

「腹が減って頭も回らないし、まずはしっかりと食おう!

いただきます。」

力強く言うトオルに

「そうだね。すごく美味しそう。

いただきます。」

僕も箸を手に持つ。

ヨウイチがキョロキョロとトオルと僕を見た後に箸を握る。

その様子に気付いた僕とトオルが目を見合わせる。

トオルが席を立って健一さんの所に行った。

すぐにフォークとスプーンを持って来たトオルが、

「こっちの方が使いやすいよな。」

とヨウイチに渡す。

「ありがと。」

受け取ったヨウイチがフォークで食べ始める。

それに合わせて僕達も食べ始めた。

美味しい!

トオルが気に入っているメニューをたのんで、今まで一度もハズレた事が無い。

僕も思っていた以上にお腹がすいていたのか、箸が止まらない。

3人とも途中でしゃべる事も無く、ランチセットを食べ終えた。



ーーーヨウイチーーー

トオルが

「ちょっと外で連絡して来る。」

と言って店の外に出ていった。

チラリとトオルの背中を見て、マップに目を戻す。

おかしいんだよな・・・。

いつもコールで呼ばれた先には、コール主以外にもマーカーが有って

久しぶりに見かける名前を見て、お!元気にやってんだな。なんて思ったりしていた。

でも、ココに来てからケーボー以外のマーカーを見ていない。

いつもはコール主はもちろんマップ内に複数マーカーが有るのが普通だったから、こんなに無い状態は落ち着かない。

設定を変えたらなんとかなるとか、他の設定機能は無かったかな・・・。

考えていたら

「ヨウイチ。

今はマップを見てるの?」

ケーボーが聞いてきた。

考え事に集中しすぎて少し反応が遅れる。

「ん。あぁ・・・そう。

マップ見てた。

ケーボー以外のマスターがマップ上に現れないのが不思議で。

ゲインダンジョンにケーボーと一緒に行っている時も、マップ上には知り合いのマーカーが見れたんだけど・・・。」

そうケーボーに言うと

「ゲインダンジョン付近なら確かにたくさんプレイヤーが集まるから、そうかも・・・。

ヨウイチが言ってる知り合いのマーカーってどういう分類になるのかな。

一緒にダンジョンに行った事のある人?

それともヨウイチを呼んだ事のある人?

ヨウイチが言っているマスターって言うのは、ギルドマスターの事?

それとも、ヨウイチを呼んだ人はギルドマスター関係なく、マスターって事?」

と質問してくる。

考えながら聞いて

「知り合いのマーカーって言うのは、俺をコールした事がある人だな。

俺をコールした事が無い人は、マップ上に居てもマーカーは付かない。

それと、マスターって俺が言ってるのはコール主の事だ。

ギルドマスターであるかどうかは関係なく、コール主がコール中はマスターって事になる。」

と答えるとケーボーが首をかしげながら

「そうなんだ・・・。

あれ?

じゃ、マスターでプンクトゥムペルケプティオ設定してもダメなんじゃ?

あ。いや。

僕がマップ出入りして、マスター設定でヒットしたんだから、いいのか・・・。」

ケーボーが独り言のようにつぶやく。

「あぁ・・・。

と言うことは、“一度マスターになった事がある人“って事でプンクトゥムペルケプティオの探知アイコンが付くのかも。」

と言いながら少し考え込む

「こういう状態が初めてだから、イマイチわからないけど・・・マスター設定でケーボーに反応したのなら、そう言う事になるんじゃないかな。

たぶん。」

そうは言ったものの、正しいのか?

自分でも疑問に思って考え込んでしまう。

「もう一人マーカーがヨウイチのマップ内に点いてくれるとわかるんだろうけどね。」

「そうだな。

今回のコール主が現れてくれるのが一番いいんだが。」

「だね。」

そう、もう一人コール主以外でも良いからマーカーが点いてくれるといいんだけど・・・。

もちろん、今回のコール主が現れてくれるのが一番だけど。

トオルが戻って来た。

「大丈夫だった?

ごめんね、突然巻き込んでしまって。

今日約束とか予定とか有ったんじゃない?」

ケーボーが心配そうに聞いている。

「いや。今日は予定入ってなかったから大丈夫。

連絡もうまく行って。

着替えは弟が出かけるついでに持って来てくれる事になった。

2時頃駅まで受け取りに行ってくる。」

「わかった。

じゃ2時頃駅に行こう。」

「着替えは俺一人で大丈夫。

この後どうするかの話をしたいし、しばらくここで話し合おう。」

「そうだね。そうする事にするよ。ありがとう。」

二人の会話を聞いて、この後の事はまた話し合ってからと言う事か・・・きちんと方針を決めて動いた方が良いと思うものの焦る思いも有って、落ち着かない気持ちになる。

店主がいちごを持ってテーブルに来た。

「お待たせ。

いちごを先に持って来たよ。

お昼ご飯はもう少し待ってもらっていいかな。

お腹すいてるのにごめんね。」

と言いながらいちごをテーブルに出してくれる。

目がいちごに釘付けになる。

「いえ。大丈夫です。」

「ありがとう。」

「健一さんありがとう。」

「いやいや、こちらこそ。

美味しそうないちごをありがとう。

休憩の時にいただくよ。」

「こちら、看板娘のここあさん。

フロアを担当してもらってる。

こちらがとおる君。

僕の高校からの後輩。」

いちごを見ながらなんとなく会話を聞いていると、トオルが立ち上がった。

何があったのかと顔を上げると

とおると言います。

こちらが会社の同僚のさとると、さとるの知り合いのヨウイチです。」

と店主と一緒に来た女性に紹介してくれる。

ケーボーが立ち上がってお辞儀をしたので、あわてて立ち上がって同じようにお辞儀をした。

「はじめまして。

ここあです。

マスターには大変お世話になってます。

まだ慣れないので行き届かないかと思います。

何かあれば遠慮なくおっしゃってください。

どうぞよろしくお願いします。」

と女性が挨拶すると

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」

トオルが挨拶してお辞儀をしたので、一緒にお辞儀をした。

「ゆっくりしていってね。

もうすぐ食事も出せるから、少し待っててね。」

店主が声をかけてテーブルを離れ

「はい」

トオルとケーボーが返事をして、3人とも椅子に座る。

「まずはいちごを食べようか。」

トオルの声に、待ってました!と自分の前に置かれたいちごに手を伸ばす。

昨日も思ったけど、この“いちご”は本当に美味しい。

一つ一つ丁寧にヘタを取って食べながら、ケーボーとトオルの会話を聞く。

「ヨウイチのマップのマーカーは僕だけなのは変わらず。

僕のマーカー1個しかデータが無いから何とも言えないんだけど・・・。

ヨウイチを呼んだ事がある人はマップ上にマーカーが点くらしくて、今の時点でも僕以外のマーカーが点いていない事を考えると、マップがうまく機能していない可能性もあるみたいなんだ。」

「ん~・・・データが1個じゃわからないな。

他に何か手がかりと言うか、足掛かりになりそうな事って思い浮かばないか?」

「僕がしているゲームが関係しているみたいだから、ゲームの運営会社へメール問い合わせをする。って言うのが一つ案としてある。

ただ・・・。

僕自身がこの事態を理解出来ていない状況で、うまく伝わるメールが書けるのか疑問で保留のままになってる。」

メール?

またわからない単語が出てきたな。

後で必要そうなら聞いてみよう。

「そうだよな。なかなか難しいな。

俺もうまく人に伝えられる自信ないわ。


ん~・・・。

このままマップを広げていけばいずれ探せるとわかっているなら、午後はレンタカーを借りて走るって手も有るんだが・・・。

どうするかな。」

二人が黙り込む中、一番多く盛られた自分の前の皿のいちごを丁寧に1個ずつ味わっていた。

お盆を持ってこちらに来るここあさんと店主に気付く。

目の前のお皿には、あと5粒のいちごが有る。

少し迷ったが、美味しいとわかっているいちごを一旦食べやめて取って置くことにした。

ご飯が美味しいといいな。

「お待たせいたしました。」

ここあさんが美味しそうな料理をケーボーの前に置く。

ケーボーがそのまま俺の前にスライドさせた。

料理のステータスを見ると、全部大丈夫そうだ。

後は味か・・・美味しいと良いな。

「お待たせしました。

とおるお気に入りのランチセットだよ。

口に合わないようだったら、他の作るから遠慮なく言ってね。

ごゆっくりどうぞ。」

店主が声をかけ

「ありがとうございます。いただきます。」

ケーボーがこたえた後カウンターに戻っていった。

「腹が減って頭も回らないし、まずはしっかりと食おう!

いただきます。」

トオルが言い

「そうだね。すごく美味しそう。

いただきます。」

ケーボーも言う。

二人を見ていると、手前に置いてある棒を手にしている。

コレで食べるのか?

どう使うのかわからないまま手に取ると、ケーボーとトオルが目を合わせてトオルが無言で席を立った。

戻ってきたトオルの手にはスプーンとフォークが有って、ホッとした。

「こっちの方が使いやすいよな。」

スプーンとフォークを手渡される。

「ありがと。」

受け取ってフォークで食べ始める。

うまっ!

あの棒でどうやって食べるのか気になっていたのに見る事もなく次々と口に運んだ。

昨日からあまり食べてなかったから、しゃべる事も無く夢中で食べ終えた。



ーーートオルーーー

ランチメニューの変更が無かったので、家に連絡を入れる事にする。

「ちょっと外で連絡して来る。」

席を立った俺に気付いた健一さんにオーケーサインを出して、頷くのを見てから店を出る。

店の外に出ると、スマホを取り出し家族グループチャットを開く。

[今、健一さんの喫茶店に居るんだけどこっち方面に出かける予定のある人居る?

居たら着替え持って来てほしいんだけど]

[健一さんのお店? 行く行く!]

妹が即レスを返してくるが、

[いや、今日は予定入ってただろ?]

[そうよ。今日の予定は外せないはずよね?]

と母親。

[あーだったね。了解。私は無理]

[私も、今から出かける予定が入ってるから無理ね]

と妹と母親から無理と連絡が入る。

[健一さんトコ?  今日大学行く予定が有るから、駅で渡せるなら俺持って行ってもいいよ。]

と弟から連絡が入った。

[助かる。駅で受け取るから頼む。何時頃になりそう?]

[あー。一本早い電車に乗るから・・・ちょっと待って]

[おぅ。]

[2時5分かな。俺が改札まで行く?]

[いや、俺がホームまで行くよ。後で、乗った車両連絡くれ]

[大学行く時は最後尾の車両に乗るから、最後尾の一番後ろのドアに張り付いとくよ]

[了解。ありがとな。よろしく。]

話がついた所で

[いーなー。健一さんのお店行きたかったな。久しぶりに健一さんのブレンドコーヒー飲みたかったなー。アニキのおごりで]

と送ってくる妹。

[私も健ちゃんに久しぶりに会いたかったわ~。一度お礼にも伺わなきゃいけないと思っていたし、今度伺いますって伝えておいてくれる?]

と母親からもチャットが来る。

[健一さんが、今度ブレンドコーヒーを持って家に来てくれるってさっき言ってくれてたよ。健一さんの都合の良い日を連絡くれる事になってる。]

そう連絡すると

[やった!日にちの連絡来たらすぐ教えてよ!絶対だからね!!]

と妹。

[そうなの?日にちがわかったらすぐに連絡お願いね。こちらから先に伺わなきゃいけないのに・・・。どうしましょうね。]

と言う母親に

[まだまだ忙しいだろうから体調に気をつけてって健一さん言ってくれてたし、察してくれてるだろうから、気にしなくていいと思うよ。母さんがもう少し落ち着いてから改めて健一さんにお礼に来たらいいんじゃないかな。]

そう送ると

[そうね。わかったわ。ありがとう。]

[どういたしまして。じゃ。]


話がついたので、店に戻る。

健一さんは忙しそうなので、そのままテーブルに戻る。

「大丈夫だった?

ごめんね、突然巻き込んでしまって。

今日約束とか予定とか有ったんじゃない?」

心配そうな顔でさとるが聞いてきた。

「いや。今日は予定入ってなかったから大丈夫。

連絡もうまく行って。

着替えは弟が出かけるついでに持って来てくれる事になった。

2時頃駅まで受け取りに行ってくる。」

「わかった。

じゃ2時頃駅に行こう。」

と言うさとる

「着替えは俺一人で大丈夫。

この後どうするかの話をしたいし、しばらくここで話し合おう。」

駅に一緒に行っても、ただ着替え受け取るだけだし3人で動く必要は無い。

駅まで行けばヨウイチのマップがもう1ブロックオープンするかもしれないけど、先に午後の方針をじっくりと話し合った方がいいだろう。

「そうだね。そうする事にするよ。ありがとう。」

さとるが答えたタイミングで

健一さんがいちごを持ってテーブルに来た。

「お待たせ。

いちごを先に持って来たよ。

お昼ご飯はもう少し待ってもらっていいかな。

お腹すいてるのにごめんね。」

そう言いながらいちごをテーブルに出してくれる。

「いえ。大丈夫です。」

さとるが答えると健一さんが

「ありがとう。」

とふわりと微笑んでいる。

「健一さんありがとう。」

お礼を言うと。

「いやいや、こちらこそ。

美味しそうないちごをありがとう。

休憩の時にいただくよ。」

そう言って、後ろからついて来ていた女の人を振り返り手招きする。

ウエイトレスのような服を着た女性が健一さんの横に来てお辞儀をした。

「こちら、看板娘のここあさん。

フロアを担当してもらってる。

こちらがとおる君。

僕の高校からの後輩。」

紹介を受けて、立ち上がりお辞儀をする。

とおると言います。

こちらが会社の同僚のさとると、さとるの知り合いのヨウイチです。」

二人を紹介する。

さとるが立ち上がってお辞儀をする。

一拍遅れてヨウイチも立ち上がりお辞儀をした。

「はじめまして。

ここあです。

マスターには大変お世話になってます。

まだ慣れないので行き届かないかと思います。

何かあれば遠慮なくおっしゃってください。

どうぞよろしくお願いします。」

緊張しながら挨拶してくれた。

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」

挨拶してお辞儀をする。

「ゆっくりしていってね。

もうすぐ食事も出せるから、少し待っててね。」

健一さんが声をかけてテーブルを離れた。

「はい」

さとるも一緒に返事をして、3人とも椅子に座る。

「まずはいちごを食べようか。」

声をかけると、待ちかねたようにヨウイチが真っ先にいちごを食べ始めた。

俺とさとるもいちごを食べる。

食べながら、さとるが話しだした。

「ヨウイチのマップのマーカーは僕だけなのは変わらず。

僕のマーカー1個しかデータが無いから何とも言えないんだけど・・・。

ヨウイチを呼んだ事がある人はマップ上にマーカーが点くらしくて、今の時点でも僕以外のマーカーが点いていない事を考えると、マップがうまく機能していない可能性もあるみたいなんだ。」

そう説明を聞き考えるが

「ん~・・・データが1個じゃわからないな。

他に何か手がかりと言うか、足掛かりになりそうな事って思い浮かばないか?」

他に何かないかと聞いてみる。

少しためらいを見せた後、

「僕がしているゲームが関係しているみたいだから、ゲームの運営会社へメール問い合わせをする。って言うのが一つ案としてある。」

一旦話を区切るさとるに、少し頷いて先を促す。

「ただ・・・。

僕自身がこの事態を理解出来ていない状況で、うまく伝わるメールが書けるのか疑問で保留のままになってる。」

眉間にしわを寄せて思案顔のさとる

「そうだよな。なかなか難しいな。

俺もうまく人に伝えられる自信ないわ。」

腕組みをしてうんうんと何度が頷く。

この状況、ヨウイチのビル登りみたいなファンタジーを直接目にしなければ信じられないもんな・・・。

「ん~・・・。

このままマップを広げていけばいずれ探せるとわかっているなら、午後はレンタカーを借りて走るって手も有るんだが・・・。

どうするかな。」

レンタカーを使えば、一気にマップオープンは進むだろうけど・・・マップが広がれば見つかるものなのか?

そこがわからないんだよな。

でも、他にいい手が思いつかなければレンタカー案で進めるしかないかな。

今オープンになっているマップを広げていく事にこだわらなければ、電車でオープンにしていくって手も有るんだが・・・。

二人とも黙って考え込んでいると

「お待たせいたしました。」

ここあさんが昼食を運んできた。

さとるが、お盆を奥に座っているヨウイチの前にスライドさせる。

後ろからお盆を二つ持った健一さんが来て、さとると俺の前に置いてくれる。

「お待たせしました。

とおるお気に入りのランチセットだよ。

口に合わないようだったら、他の作るから遠慮なく言ってね。

ごゆっくりどうぞ。」

と、さとるとヨウイチに声をかけてくれる。

「ありがとうございます。いただきます。」

さとるが笑顔で言うと。

優しく微笑んでカウンターに戻っていった。

「腹が減って頭も回らないし、まずはしっかりと食おう!

いただきます。」

腹減った!

話は後だ。

美味いとわかっている健一さんの料理を前に我慢なんて出来ない。

「そうだね。すごく美味しそう。

いただきます。」

すぐにさとるも箸を持つ。

ヨウイチがキョロキョロと俺達二人の手元を見た後に箸を握る。

その様子にさとると目を見合わせる。

席を立って健一さんの所に行った。

「健一さん。すみません。フォークとスプーンを1個ずつお願いします。」

と言うと、カウンター内に居たここあさんがすぐに渡してくれた。

健一さんが微笑んでここあさんを見守っている。

なんだろう?ただのアルバイトと考えると違和感が・・・。

まぁ、今はいいか。

今は、さとるとヨウイチの一件で手一杯だ。

「ありがとうございます。」

お礼を言ってテーブルに戻り

「こっちの方が使いやすいよな。」

そう声をかけてヨウイチに渡す。

「ありがと。」

受け取ったヨウイチがフォークで食べ始める。

それを見て安心し、料理に箸をつけた。

いつにも増して美味しい。

3人とも途中でしゃべる事も無く、ランチセットを食べ終えた。

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