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第12話 今日はもう寝よう。

タクシーがウインカーの音と共に止まる。

その音と体の揺れで目が覚めた。

目を瞑るだけのつもりが寝てしまっていたようだ。

すぐにお財布を取り出して支払う。

ここはトオルが何と言おうと払わせるつもりはない。

タクシーを降りて3人で部屋に向かう。

1棟借り上げの社宅なので、余計に気を使う部分がある。

隣の住人は、”見知らぬ誰か”ではなく”何課の何々さん”で

家族用の社宅だから、ほぼ自分より年上で役職が上の人ばかりだ。

特に気を使うのが音問題。

しっかりした造りだから普通の時間帯に普通に生活していればそこまで気にする必要は無いが、深夜0時を過ぎてのお風呂等は気を使う。

たまに連絡会と言う集まりがある。

各戸1名以上の参加で住人への注意事項や通達等が行われるのだが、そこで何度か音への注意がなされていた。

そう言う問題が起きにくいような配慮(低学年の子供が居る家族は1階の部屋、デリケートな家族は最上階の部屋へ配置)はされているのだがそれでも、音に敏感な奥さんや子供さんが居たり本人が敏感で、しかもそれが役職が上の人の家だと注意事項として上がってくるようだ。

僕自身は、本当に静かな生活をしているから注意を受けた事は無い。

最初の頃は、僕だけ独身でこの社宅に入っている事で目立ってしまってかなりこまごまと指導を受けていた。

静かな生活と、ルールを守る性格だと理解してもらえた辺りで何も言われなくなったけど、何かやらかしてしまうとこういった所は大変だから気を使う。

足音も気を使うポイントなのだが、気になってトオルとヨウイチの足音に注意を払ったが

僕以上に静かに歩いていて驚いた。

ヨウイチは・・・まぁ何というか妖精族だから?軽い感じの足音にも納得してしまう。

あれだけ身軽なんだし、ドシドシ歩いたりはしないよね。

トオルが驚きだった。

庭の草刈りが大変だという話をしていたし、一軒家で生活していると思うのだが歩き方がすごく静かだ。

一軒家で育った人とマンションやアパートで育った人だと、一軒家は他人に気を使わなくて済む分足音に注意を払わない人が多い気がする。

まぁ、もちろん人それぞれだから一概には言えないんだけど・・・。

トオルってこんなに静かに歩く人だったんだ?

気がついていなかったからかなり驚いた。

時計を見ると、23時を過ぎていた。

0時過ぎにお風呂に入る事にはなりたくない。

0時過ぎそうだったら、お風呂は明日の朝にしてもらおう。

そう思いながら部屋のドアを開ける。

「どうぞ。」

二人に声をかける。

「おじゃまします。」

とトオルが言って先に部屋にあがる。

続けてヨウイチが玄関に入ったので、ドアを閉めて僕も部屋に入る。

手前から、トイレやお風呂、空き部屋で使っていい部屋、それと自分の寝室を説明しながらリビングへ。

台所はカウンターキッチンになっている。

トオルは

「台所いいか?」

と聞きながらキッチンに向かう。

「もちろん。」

と答えた後、

「自由に使ってくれてかまわないから。」

と声をかけると

「わかった。」

と返事が返ってきた。

ヨウイチを見ると、周りをキョロキョロと見回している。

「ヨウイチは適当に座ってて。」

と声をかける。

僕を見てから、頷いてその場に座った。

もう一度時計を見ると、23時10分。

歩き回って汗だくだし、お風呂には入っておきたい。

「トオル。」

声をかけるとイチゴを洗っていたトオルが

「ん?」

と顔を上げる。

「お風呂なんだけど。出来れば0時までに全員終わらせたいんだけど、あと50分弱で全員入れるかな?」

と聞く。

「まぁ、ザッと汗を流せればいいし、イケルんじゃないか?」

と答えが返ってきたので

「わかった。じゃぁ、お湯ためてくる」

と言ってお風呂に向かう。

お湯を張りながらタオルや着替えになりそうな物を揃える。

バスタオルは寝る時のタオルケット代わりにするから、タオルで拭いてもらおう。

着替えが問題だ。

ストックしてある新しいトランクスが有るのは有るんだけど、サイズが合うか・・・。

ヨウイチは大丈夫だと思うんだけどトオルは僕より身長高くてガッシリした体格だから無理かも・・・。

Tシャツも用意する。

これも、ストックしてあったまだ一度も袖を通していない物があるのでそれを用意する。

そうだった。ふと思い出して目当ての物を探す。

あった。

Mサイズと書いてあるTシャツなんだけど、洗った後にどう見てもLLかそれ以上のサイズだと気づいて着ないまま直し込んでいたTシャツだ。

トオル用のTシャツはこれでいいとして、トランクスが問題だなー。

キツイパンツじゃ寝ても疲れとれなさそうだし・・・。

部屋着の短パンだとどうだろう?

新品じゃ無いけど、洗濯は済んでるし。

一応どちらも用意して脱衣所に準備した。

時計を見ると15分になっていた。

リビングに戻るとヨウイチがイチゴを食べていた。

トオルはキッチンで他の準備をしているようだ。

本来であればお客のトオルやヨウイチに先に入ってもらうのがいいんだろうけど、お腹すいてるだろうし先に食事をした方がいいよね。きっと。

となると、今動けるのは何も食べる予定がない僕だけだと判断して、

「トオル。お風呂動ける順で僕から入ってもいいかな。」

と声をかける。

「ああ。その方が助かる。

でも、風呂に入る前に水分補給をしておけよ。」

と言われた。

そう言われれば何も飲んでなかった。

見ると、ヨウイチにもイチゴの横に水が用意されていた。

トオルの細やかな所ってスゴイな。と思いながら、冷蔵庫の残っていたお茶を注いで飲む。

飲み始めたらすごくノドが渇いていたみたいで、立て続けに3杯飲んでしまった。

タプタプになったお腹をさすりながらお風呂に向かった。

いつもより早めにザッとお風呂を済ませてリビングに戻ると、トオルとヨウイチが並んで食事をしていた。

「お風呂、あがったよ。」

と声をかけたら

「わかった。」

とトオルが答えて、持っていたお茶碗の中身をかき込んだ。

「ヨウイチ。風呂を済ませよう。」

そう言って立ち上がったトオルに続いてヨウイチも立ち上がる。

そう言えば・・・。

と考える。

ファミレスで、わからない言葉を聞き返していたヨウイチが聞き返してこない事に気づいた。

着替え等の事を伝えるために3人で脱衣所に行く。

「着替えここに用意してるから。

こっちがヨウイチで、こっちがトオル。

トオルはトランクスがもしかしたら小さいかもしれないから、短パンも用意してる。小さかったらこっちだけで代用してもらっていいかな。」

「了解。ありがとう。」

と答えたトオルがヨウイチに

「ヨウイチは風呂の使い方わかるか?」

と聞いていた。

ヨウイチは首をふりながら

「いや、わからない。」

と答える。

そっか・・・。じゃぁどうしよう?

と考えていると、

「ヨウイチが抵抗がないなら、一緒に入らないか?

時間も時間だし、そっちの方が早い。

ただ、一緒に入るのがイヤなら正直に言ってくれ。」

とヨウイチに言っている。

「イヤと言う事はない。トオルがいいなら一緒の方が失敗しなくて済むから助かる。」

「わかった。んじゃ、一緒に入るか。」

と話が決まったようなので、ホッとして

「僕は寝る準備をしておくよ。」

と言ってリビングに戻った。

ザッとフローリングワイパーで掃除して、自分の部屋から布団を持ってくる。

さっき考えていた通りに、敷き布団と掛け布団と毛布を敷き布団として敷いてバスタオルを用意する。

フローリングに直敷きだから、もしかしたら寒いかもしれない。その時はエアコンをつけよう。

後は・・・。

食事の後片付けをしておく。

食べ終わっている食器を洗って、ゴミを袋に入れなるべく空気を抜いてギュッと縛る。

生ゴミも入っているので、冷凍庫に入れた。

シンクの水滴を拭き終わって時計を見たタイミングで二人がリビングに入ってきた。

23時55分。

お風呂さえ済んでしまえば一安心だ。

お風呂掃除は明日の朝にしよう。

「ドライヤー出そうか?」

トオルに声をかける。

「お、頼むわ。」

と言われて自分の部屋に取りに行く。

僕の髪の毛は昔からすごく乾きやすくて、ドライヤーいらずだ。

社会人になってからは、朝は使って髪を整えるけどお風呂上がりにはあまり使わない。

トオルに渡すと、ヨウイチに説明しながらヨウイチの髪から乾かしていた。

トオルってお兄さんって感じだよね。

ふと聞きたくなって

「トオルって兄弟居るの?」

と聞いてしまった。

普段プライベートな事を話さないので、もしかして聞かれるのはイヤかも?

と、聞いたのを少し後悔していると、

ヨウイチの頭をワシャワシャしながらドライヤーをあてていたトオルが

「居るぞ。ウチは4人兄弟だ。姉と妹と弟が居る。」

にこやかに答えてくれた。

へぇー4人兄弟かぁ。

「賑やかそうだね。」

と言うと

「まぁな。賑やかっちゃ賑やかかな。

ヨウイチの世話を焼いてる感じが兄っぽかったか?」

と聞かれたので

「そうそう。何かお兄さんっぽいなーって思って。

トオルってあんまりプライベートな事って話さないから。

・・・もし聞かれるのイヤだったらごめん。」

つい謝ってしまった。

「特に聞かれないから話してないだけで、イヤじゃないから気にしなくていい。」

そう言われてホッとした。

トオルが自分の髪を乾かしだした。

その間に、うっかり忘れていた二人の分の歯ブラシを出してきた。

期限が有るもの以外は大抵ストックを二つ用意している。

気付いたトオルが

「おぉわるいな。片付けもしてもらってありがとな。」

とお礼を言ってきた。

「ううん。お礼を言うのは僕の方だよ。トオルが居なかったらどうすればいいのか途方に暮れていたと思うから。

本当にありがとう。」

と頭をさげる。

「どういたしまして。

明日明後日の週末で探せるといいんだけどな・・・。

今日はもう疲れたし、まずは休息をとろう。

歯磨きをしたら寝るか。」

とドライヤーを切りながら言うトオルに

「そうだね。

とんでもなく歩いたから疲れたよ。話は明日探すときにする事にして早めに寝よう。」

と答えてヨウイチを見る。

ヨウイチは、黙って頷いた。

歯磨きを終わらせて(ヨウイチにはトオルが教えていた。)0時半には電気を消して寝た。



ーーーヨウイチーーー

タクシーが止まってドアが開いた。

ケーボーがお金を払って車を降りる。

少し伸びをした後建物に入っていくケーボーについて行く。

狭い部屋に入ると、上に上がる感覚・・・。

コレが何なのか聞きたい気もするが、きっと理解できないだろう。

二人とも疲れているようだし、話や質問は明日にした方がいいだろうと判断して黙ってついて行く。

「どうぞ。」

とケーボーがトオルと俺に声をかける。

「おじゃまします。」

とトオルが言って先に部屋にあがる。

トオルについて行く。

ケーボーが部屋の説明をしながら奥に入った。

わからない単語がたくさん有ったが、理解出来ないまま質問も保留にした。

一番広い部屋に入るとトオルが

「台所いいか?」

とケーボーに聞きながら奥に歩いていく

「もちろん。自由に使ってくれてかまわないから。」

「わかった。」

と二人が話している間、部屋の中を見ていた。

見た事のない物ばかり。

「ヨウイチは適当に座ってて。」

ケーボーに声をかけられてその場に座る。

奥でトオルとケーボーが話をしていたが、周りの観察をしながら明日の事を考えていた。

コール主を見つけるためには、どうしたらいいのか・・・。

明日、トオルとケーボーと話して良さそうな方法を試すしかないだろうな・・・。

トオルが

「ヨウイチ。イチゴ洗ったぞ。」

と言って台にさっきの店で買った物を置いた。

イチゴと言うらしい。

「どうぞ、召し上がれ。」

とトオルに勧められた。

丸ごと食べるのだろうか?

1個持ち上げてためらっていたら、トオルが1個手にとって

「この緑のヘタは食べずに赤い実だけを食べるんだ。」

と言って、食べて見せた。

「お!甘くて美味いな。」

と言っているのを見て、同じように食べる。

「美味しい。」

とトオルを見ると笑顔で

「全部食べて良いからな。それと、水も置いておくから飲んで。

他に簡単なの作るから、持ってくるな。」

と言って奥に戻って行った。

イチゴを夢中で食べた。

すごく美味しかった。

しばらくしたらトオルが新しい食べ物を運んできた。

「食べられそうな物あるかな?」

と聞きながら並べていく。

イチゴでお腹膨れたし、そんなに食べなくてもいいかな。とも思ったが、興味があったので一番良さそうなのを引き寄せた。

トオルが何かかけてくれた後スプーンを渡してくれた。

「ありがとう」

と言って食べてみた。

食べたこと無い物だけれど美味しかった。

「美味しい」

と言って食べ終わると、トオルが他に食べたい物はないか聞いてきた。

もう充分だったので、いらないと答えた。

トオルが食べているのを眺めていたら

「お風呂、あがったよ。」

とケーボーに声をかけられた。

「わかった。」

とトオルが答えて、残りの食べ物を勢いよく食べて立ち上がった。

「ヨウイチ。風呂を済ませよう。」

そう声をかけられたので立ち上がり、二人について行く。

風呂・・・ケーボーの髪が濡れているし、水浴びのようなものだろう。

「着替えここに用意してるから。

こっちがヨウイチで、こっちがトオル。

トオルはトランクスがもしかしたら小さいかもしれないから、短パンも用意してる。小さかったらこっちだけで代用してもらっていいかな。」

「了解。ありがとう。」

何となく聞いていたら、

「ヨウイチは風呂の使い方わかるか?」

とトオルに聞かれた。

チラリと風呂と示された部屋を見たが、使い方はわからない。

溜めてある水に入るだけじゃないんだろうな、きっと。

「いや、わからない。」

と答える。

「ヨウイチが抵抗がないなら、一緒に入らないか?

時間も時間だし、そっちの方が早い。

ただ、一緒に入るのがイヤなら正直に言ってくれ。」

とトオルに提案された。

時間も時間だし。と言っているので、早めに済ませたいのだろう。

「イヤと言う事はない。トオルがいいなら一緒の方が失敗しなくて済むから助かる。」

と答えると

「わかった。んじゃ、一緒に入るか。」

と話が決まった。

ケーボーがホッとしたような顔をして

「僕は寝る準備をしておくよ。」

と言って出て行った。

「俺がするのを真似して、わからない時は聞いてくれ。」

と言われたので頷いて、トオルがする通りに真似をすることにした。

頭や体を洗って、張ってある水に入ると体温より少し温かくて体が弛む感じが気持ち良かった。

トオルは、体を洗っていた場所を軽く掃除してから入ってきた。

「ふぁ~」

と変な声を出していた。

少ししたら

「ゆっくり入りたい所だけど、今日はこのくらいで上がるか。」

と言われたので、頷いて上がった。

トオルの真似をして髪の毛や体を拭き、ケーボーが用意してくれていた服に着替えて部屋に戻った。

ケーボーがトオルに

「ドライヤー出そうか?」

と言って何かを持ってきた。

トオルに渡すと、トオルが

「髪の毛を乾かす道具だ。これから温かい風を出して乾かす。ヨウイチの髪の毛から乾かそう。いいか?」

と聞かれたので、頷いた。

ケーボーが

「トオルって兄弟居るの?」

と聞いている。

あれ?兄弟が居るかどうかを聞いてるって事は親しい間柄じゃないのかな?

「居るぞ。ウチは4人兄弟だ。姉と妹と弟が居る。」

「賑やかそうだね。」

「まぁな。賑やかっちゃ賑やかかな。

ヨウイチの世話を焼いてる感じが兄っぽかったか?」

「そうそう。何かお兄さんっぽいなーって思って。

トオルってあんまりプライベートな事って話さないから。

・・・もし聞かれるのイヤだったらごめん。」

「特に聞かれないから話してないだけで、イヤじゃないから気にしなくていい。」

二人の会話を黙って聞いていたが、最後にケーボーが謝っていたから、やっぱりあまり親しい間柄じゃないんだろうな・・・。

ケーボーがまた何か持ってきた。

「おぉわるいな。片付けもしてもらってありがとな。」

トオルがお礼を言っている。

「ううん。お礼を言うのは僕の方だよ。トオルが居なかったらどうすればいいのか途方に暮れていたと思うから。

本当にありがとう。」

確かに。

トオルが居なかったら、もっと時間がかかっただろう。

俺も礼を言うべきだろう。と口を開きかけたが

「どういたしまして。

明日明後日の週末で探せるといいんだけどな・・・。

今日はもう疲れたし、まずは休息をとろう。

歯磨きをしたら寝るか。」

「そうだね。

とんでもなく歩いたから疲れたよ。話は明日探すときにする事にして早めに寝よう。」

と言う二人の会話を聞いて明日にしようと決めた。

さっきの着替えをした部屋に戻り、歯磨きをした。

さっきと同じく、説明付きのトオルの真似で終わらせた。

体も口の中もすっきりしてケーボーが用意した寝床に寝転がったらかなり疲れていたのか、すぐに眠りに落ちた。



ーーートオルーーー

タクシーが止まった。

目を覚ましたさとるが慌てて料金を支払っている。

トオルには払わせないぞ!という気迫がみなぎっている。

何も言わず支払いを任せて、タクシーから降りた。

さとるについてマンションに入る。

ドアを開けながら

「どうぞ。」

と言われ

「おじゃまします。」

と言って部屋に入る。

ヨウイチも続いて入って来れるように立ち止まらず、靴を脱いで玄関をあがる。

さとるが最後に入ってきて、トイレや風呂の場所を案内しながらリビングに通された。

奥に台所が有るのが見えたので

「台所いいか?」

と聞きながら奥に行く。

「もちろん。

自由に使ってくれてかまわないから。」

さとるに言われたので

「わかった。」

と答えて、ザッと見回す。

まずはヨウイチのイチゴを洗って・・・

手順を考えながら手を洗う。

「トオル。」

と声をかけられ

「ん?」

と顔を上げる。

「お風呂なんだけど。出来れば0時までに全員終わらせたいんだけど、あと50分弱で全員入れるかな?」

と聞かれた。

時計に目をやると、23時10分を越えている。

「まぁ、ザッと汗を流せればいいし、イケルんじゃないか?」

と答える。

「わかった。じゃぁ、お湯ためてくる」

と言って立ち去るさとるを見やって、

自分のフィールドだと雰囲気違うんだな。

俺が仕切った方が良いかとタクシーで頭を回していたけれど、大丈夫そうだ。と考えながら

皿にイチゴを盛り、コップに水を入れてヨウイチに食べるよう勧めた。

「ヨウイチ。イチゴ洗ったぞ。

どうぞ、召し上がれ。」

ヨウイチが1個手に持ってためらっている。

もしかして、食べ方わからないか?

1個手にとって

「この緑のヘタは食べずに赤い実だけを食べるんだ。」

と言って、食べて見せた。

「お!甘くて美味いな。」

と言うと、ヨウイチが同じように食べる。

「美味しい。」

と見上げてきたので、良かったと思い笑顔になる。

「全部食べて良いからな。それと、水も置いておくから飲んで。

他に簡単なの作るから、持ってくるな。」

と声をかけて台所に戻る。

夜も遅いし、がっつり食べたい訳じゃないから本当にあっさりさっぱりした物を買ってきた。

冷や奴と野菜の浅漬け、ほうれん草のお浸し。

俺は食べても食べなくてもいいから、おおよそ一人分をヨウイチの前に並べた。

「食べられそうな物あるかな?」

とヨウイチに聞いたら、ちょっとためらった後に冷や奴を引き寄せたので、少し醤油をかけてあげてスプーンを渡した。

珍しそうに見ながら食べ始める。

ヨウイチの様子を見ながら、俺は浅漬けをつまんでいる。

「美味しい」

とヨウイチが言って食べ進める。

口に合ったようで良かった。

ヨウイチが食べ終わったのでほうれん草や浅漬けを食べるか聞いたが、もういらないと答えたので後は俺が食べることにした。

「お風呂、あがったよ。」

と声をかけられたので

「わかった。」

と答えて、残っていたほうれん草を口に放り込む。

「ヨウイチ。風呂を済ませよう。」

と言って立ち上がる。

ヨウイチも立ち上がってついてきた。

脱衣所で

「着替えここに用意してるから。

こっちがヨウイチで、こっちがトオル。

トオルはトランクスがもしかしたら小さいかもしれないから、短パンも用意してる。小さかったらこっちだけで代用してもらっていいかな。」

さとるの説明に

「了解。ありがとう。」

と答えてヨウイチに

「ヨウイチは風呂の使い方わかるか?」

と聞いてみた。

ヨウイチは首をふりながら

「いや、わからない。」

と答える。

だよな・・・。

「ヨウイチが抵抗がないなら、一緒に入らないか?

時間も時間だし、そっちの方が早い。

ただ、一緒に入るのがイヤなら正直に言ってくれ。」

とヨウイチに提案してみた。

どうやらさとるが0時までには確実に風呂を終わらせたいと思っているようなので、一番早く済みそうな提案をした。

「イヤと言う事はない。トオルがいいなら一緒の方が失敗しなくて済むから助かる。」

と答える。無理もしてない様子なので

「わかった。んじゃ、一緒に入るか。」

と声をかける。

ホッとした様子のさとる

「僕は寝る準備をしておくよ。」

と言って出て行った。

口で説明しても時間がかかりそうだし、何がわかって何がわからないかもわからない状態だから

「俺がするのを真似して、わからない時は聞いてくれ。」

とヨウイチに言って服を脱ぎ始める。

ヨウイチは特に何も言わず俺の真似をして服を脱ぎ始めたので、そのまま自分がお風呂に入る時の手順で風呂に入った。

頭や体を洗って、ヨウイチに湯船につかるように言ってヨウイチが入ると、洗い場をザッと掃除した。

ちょっと二人で入るには狭いが、ヨウイチと一緒に湯船につかる。

思わず

「ふぁ~」

と声と一緒に息を吐き出す。

かなり歩いたし、訳の分からないことで頭も混乱状態だったからなー。

お湯につかるのはやっぱり気持ちいい。

もうちょっとゆっくりしたいけど、そろそろ上がらないと0時を過ぎてしまいそうだ。

「ゆっくり入りたい所だけど、今日はこのくらいで上がるか。」

とヨウイチに言って風呂から上がる。

タオルで髪の毛や体を拭いて、ヨウイチがそのまま真似をしているのを確認して、用意してくれていた服に着替えた。

トランクスは少し小さめではあったが、骨盤の位置にゴムの部分を持ってくれば大丈夫だからトランクスをはいた。

部屋着の短パンの方がラクだろうけど、なんとなくパンツをはかずに短パンをはくのをためらってしまった。

まぁ、キツくはないからトランクスでいいかな。

リビングに戻ると

「ドライヤー出そうか?」

と声をかけられたので、

「お、頼むわ。」

と言って、その間に皿を片付けようかと思ったらキレイに片付いていた。

やっぱりさとるは家でもキチンとしてるなぁ。

ドライヤーを受け取って、まずはヨウイチから。

とドライヤーを渡そうと思ったが、使い方がわからないだろうから乾かしてやる事にした。

「髪の毛を乾かす道具だ。これから温かい風を出して乾かす。ヨウイチの髪の毛から乾かそう。いいか?」

と聞くと頷いた。

ドライヤーを当てながら、髪の毛をワシャワシャと散らして乾きやすくする。

ふと思いついたように

「トオルって兄弟居るの?」

さとるが聞いてきた。

プライベートな事を聞いてくるのは珍しいなと思いながら

「居るぞ。ウチは4人兄弟だ。姉と妹と弟が居る。」

「賑やかそうだね。」

と言われたが、賑やかと言うより妹と弟はウルサイって感じだよな。

特に妹。何であんなに生意気かな・・・。

「まぁな。賑やかっちゃ賑やかかな。

ヨウイチの世話を焼いてる感じが兄っぽかったか?」

たぶん、ヨウイチの髪を乾かしているのが世話焼き兄って感じに見えたんだろうなと思って聞いてみる。

「そうそう。何かお兄さんっぽいなーって思って。

トオルってあんまりプライベートな事って話さないから。

・・・もし聞かれるのイヤだったらごめん。」

謝る所か?

と一瞬思ったが、普段の遠慮がちな様子と不器用な感じを思い出し、確かにこういう変な気の使い方をする奴だった。

「特に聞かれないから話してないだけで、イヤじゃないから気にしなくていい。」

と言うと、ホッとした顔をした。

本当に、聞いちゃいけないことを聞いてしまったのかもと思って謝ったんだろうな。

ヨウイチの髪の毛が乾いたので、自分の髪を乾かす。

部屋を出たさとるが歯ブラシを用意して戻ってきた。

「おぉわるいな。片付けもしてもらってありがとな。」

礼を言うと

「ううん。お礼を言うのは僕の方だよ。トオルが居なかったらどうすればいいのか途方に暮れていたと思うから。

本当にありがとう。」

と頭をさげる。

確かに、一人でこの訳の分からない状況をどうにかしようと思ったらなかなかに難しいだろうな。

「どういたしまして。

明日明後日の週末で探せるといいんだけどな・・・。

今日はもう疲れたし、まずは休息をとろう。

歯磨きをしたら寝るか。」

と言うと

「そうだね。

とんでもなく歩いたから疲れたよ。話は明日探すときにする事にして早めに寝よう。」

さとるが答えてヨウイチを見る。

ヨウイチは、黙って頷いた。

歯磨きは、ヨウイチに説明しながら風呂の時と同じく真似をしてもらった。

ま、少々磨き残しがあっても大丈夫だろう。

布団に転がったら、あっという間に眠りに落ちた。

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