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肝試し
「怖いなら、手でも握らない?」
「あ、ありがとうございます……」
部活の合宿の夜。
私は、憧れの先輩と肝試しをしている。
みんなが私に気を回して、先輩とペアを組めるように暗躍してくれたみたい。
でも、みんなの誤算がひとつあった。
私は、怖いのが苦手なんだ。
手から先輩の熱が伝わってくる。
心臓がバクバクして何も考えられない。頭が真っ白だ。
もしこのまま、私の気持ちが言葉ではなくて、手からそのまま伝わってくれたらどんなに幸せなんだろう。そんな馬鹿なことを考える。
あなたが大好きです。
気持ちをこめて、私は彼の手を強く握った。
そして、ふたりは前に進んだ。




