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読書
「読書は百代の過客にして、書もまた旅人なり。本の上に生涯を浮かべ、日々読書にして書を栖とす」
「何を言ってるの?」
「奥の細道のパロディ」
「ふーん。でも、たしかに、読書ってタイムトラベルみたいだよね」
「うん」
「死者に会うことができる唯一の場所だし」
「そうだよね」
「もしかしたら、未来にだっていくことができるし」
「詩人だね」
「キミのほうが、詩人だと思うけどね」
「そう?」
「そうだよ」
「じゃあ、そろそろ行くね」
「うん、また会える?」
「会う方法はキミが一番知ってるでしょ」
「そう、だよね」
私が本を閉じると、彼は消えてしまった。




