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春一番
春一番が吹きました。
その風に舞って、ひとつの葉っぱが落ちました。
落ちた葉っぱは、お腹を空かせた芋虫の貴重なごはんとなりました。
芋虫は、土壌を豊かにしました。
豊かになった土壌からはたくさんの芋がとれました。
とれた芋は、飢饉で米が全滅した農家のひとに食べられました。
芋を食べた農家の息子は、なんとか冬を越すことができたのです。
彼は大人になって、医者になりました。
医者になった彼は、伝染病のワクチンを作り出した。
春一番は世界を救ったのです。
でも、そのことを誰も知りえません。




