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雪
ここは、赤道直下のマリンダ共和国。ここに、ひとり雪をみたい女の子がいました。
「ママ、わたし雪が見たい」
「わたしも見たいわね」
でも、ここは熱帯。雪なんて降ることはありません。一家は大家族で、貧乏ではありませんが、裕福でもありません。だから、海外旅行に行く余裕はありませんでした。
「なら、パパが、家の中に雪を降らせてあげよう。みんな、手伝ってくれるかい?」
「うん」
パパが用意したのは、いつも食べているトウモロコシでした。いつものように実をつぶして粉にします。
白い粉は部屋の中に舞っていきます。それは、まるで雪のように……
「ね、雪は降っただろう?」
そう言って、みんなで雪のトルティーヤを食べたのでした……




