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除夜の鐘
外では除夜の鐘が鳴っている。煩悩を退治するために……。
「ねえ、どうして除夜の鐘を鳴らすか知ってる?」
私は彼に聞いた。
「えっ、煩悩をなくすためだろう」
「そうそう、ちなみに煩悩のなかにある、三毒ってなんだか知ってる?」
「知らないな」
「だよねー。だから、あなたはあなたなんだもんね」
「どういう意味? なんでそんなことを聞くの?」
「私とあなたの煩悩が退治される前にやらなくちゃいけないことがあるから、だよ」
彼の胸には鋭利で冷たいものが突き刺さる。
※
「三毒ってね、貪欲・憎しみ・無知のことなんだよ」
彼の浮気写真を見ながら、私はそうつぶやいた。




