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サンタクロース
ぼくは、この世界の闇の存在を知っている。
その闇とは「サンタクロース」。
世界を股にかける天才諜報員だ。
あいつは、ひとりで全世界の子供のために飛び回り、まるで忍者のようにあらゆる建物に侵入する。きっと、映画の中で見たスパイに違いない。
だから、ぼくはあいつを捕まえることにした。
父さんや母さんに、手伝ってもらって部屋の前にロープを張ったり、ドアに鈴をつけたり……。こうして、ぼくの部屋に要塞が完成した。
そして、クリスマス当日。
ぼくは、うっかり寝てしまった。そして、鈴が鳴った。
あわてて、部屋の外に飛び出した僕が見たのは、父さんの姿だった。
「なに、やってるの?」
「サンタを追いかけていたんだよ」




