イルミネーション(完全版)
「司令、目的地へと先行している偵察機より伝令です」
「うむ」
我らガヘミア第七艦隊は、惑星アースに向けて進軍中だ。
ガへミア第七艦隊といえば、宇宙最高の無敵艦隊として恐れられている。アースには、奇襲攻撃をかけてすべてを灰燼に帰すことが目的だった。
「なんだとっ」
我らの前には、光輝いた街並みが映し出された。その映像には、おそるべき光景が映しだされていたのだった。
まさか……いや……。アースのような蛮族が、どうしてあれを……。
木に光の装飾をまとわせ、赤い服を着た男が周囲に愛想をふりまく。そしてキスや手を繋ぐ男女のカップル。描写するだけでも、おぞましい。これは、間違いない。あれだ。
「司令、暗号を解読しました」
「話せ」
「ジングルベル、ジングルベル。真っ赤な鼻のトナカイ。聖なる夜」
地球の電波傍受を解読して、すべては核心に変わった。
「宇宙人に告ぐ。おまえらの狙いはわかっている。我が軍の弾道は通常にあらず。イルミネーションの嵐が降り注ぐことになるぞ」
アース人は、こう言っていたのだ。
イルミネーション。かつて、カミラ戦争の末期に使われた大量破壊兵器の俗称だ。
それは、われらガへミア人の精神を著しく汚染させる。われらガへミア人は、性別などなく、クローン技術で人口を増やす。「イルミネーション」とはその弱点をついた、巧妙な兵器なのだ。
「撤退だ」
無敵艦隊はこうして敗れ去り、地球は再び救われた。




