探し物(恋愛)
twitterの診断メーカーから出たお題をもとにしたつぶやき小説です。
「探し物はここにあるのに……」
幼馴染みの彼と別れて、わたしはそんなふうに呟いた。
彼とは幼稚園からの友達だ。
それからもう十数年。
わたしと彼の仲は、友達から変わっていない。
わたしと彼は、普通の思い出を過ごしてきた。
公園で遊び、マンガを貸し借りして、たまに喧嘩をする……。
友達からは、たまに冷やかされて、ふたりで赤くなる。
そんな、当たり前の日常がずっと続いていた。
最近、彼はよくぼやくようになった。
「彼女が欲しい」と。
その言葉を聞いて、複雑な気持ちになる。
自分が異性として意識されていない絶望と、
彼に恋人がいないという安心感。
わたしはどこまでも臆病なのだ。
いつものように彼とラインをする。ふたりで他愛もない会話をする。代わりばえしないいつもの日常。
それがわたしの一番幸せな時間になっている。
「明日、映画でもいかない??」
彼のメッセージがわたしの日常を別のものに変えた。
わたしは彼を待っている。いつもの駅で、いつもとは違う気持ちで……
彼がわたしを適当な気持ちで誘ったというのわかっている。でも、わたしにとっては特別な1日だ。
真新しい服の匂いと、秋の風がわたしを優しく包んでくれた。
「よっ」
彼はいつも通りの格好で、待ち合わせ場所に来てくれた。
「じゃあ、いこうか」
「うん」
わたしたちは、同じ1日を過ごしはじめる。
どうか、この1日が永遠に続けばいいのに。
わたしは心のなかでそう願った。
映画を観ながら、わたしは彼を見つめる。
暗くて彼は気がついていない。
わたしは、彼のどこを好きになったのだろうか?
よくわからなかった。
でも、彼の手を繋ぎたくなる。
彼と一緒に過ごしたくなる。
彼との日常を永遠のものにしたくなる。
わからないことだらけだけれども、ひとつだけ、確かなことがある。
つまり、
私は恋をしているということを……。




