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羽根(300文字小説)
わたしには、「羽根」がある。
わたしは自由だ。
どこにでも、飛んでいける。
わたしは、自由だ。
自由すぎて、誰にも見えない。
それでも、わたしは満たされている。
「これから、どこに行くの?」
風がそう聞いてきた。
「どこにでも、行けるの」
わたしは元気良くそう言った。
「ひとりで、寂しくないの?」
彼はそう言った。
「少しだけね、寂しいよ。でも、これがわたしの昔からの夢だったから……」
わたしは、そう答えた。
「じゃあ、元気でね」
「ええ、あなたも」
わたしたちは、こうして別れた。
これが夢だと私は知っている。
だから、この夢がずっと続いて欲しいのだ。
目がさめた時、わたしは……。




